本たちの周辺

『生物学の哲学入門』刊行記念ブックフェア
「哲学で探る生物学の世界」

 
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森元良太・田中泉吏著『生物学の哲学入門』刊行を記念して、書店フェア「哲学で探る生物学の世界」を2016年8月下旬から開催しています。フェア会場で配布したブックガイドを「けいそうビブリオフィル」で公開します。森元さんと田中さんによる選書コメントとあわせて、「生物学の哲学」から広がる世界をぜひご覧ください。[編集部]

 
seibutugakunotetugakunyumon_shoei2016年8月刊行!
森元良太・田中泉吏『生物学の哲学入門』

日本人筆者による初の「生物学の哲学」入門書。生物学を哲学的に学び、生物学を通じて哲学を学べる一石二鳥の最新版教科書。〈書誌情報〉
定価:本体2,400円+税 2016年8月刊行
A5判上製228頁 ISBN978-4-326-10254-9

「生物学の哲学」は多くの人にとって聞きなれない分野だろう。しかし、その名前から明らかなのは、これが哲学の一分野だということである。哲学はおよそあらゆるものを考察の対象にし、対象ごとに異なる哲学分野が存在する。知識の哲学や心の哲学などがそうである。知識の哲学は知識を、心の哲学は心をそれぞれ対象としている。そして、生物学の哲学は生物学を考察の対象とする哲学分野である。ただし、生物学の哲学は「生物についての哲学」ではない。生物そのものを考察の対象とした哲学は古くからあるが、生物学の哲学ではあくまでも生物学という学問分野に主眼がおかれる。たとえば、遺伝子や種などの生物学で用いられる概念や、進化論や自然選択説(自然淘汰説)といった生物学の理論や仮説を考察の対象とする。そしてこれらの概念や理論の分析を通じて生物学がこの世界について何を語っているのかを明らかにすることや、異なる生物学分野のあいだの関係性について考察することなどが、生物学の哲学の課題に位置づけられる。興味関心が「生命とは何か」のような問題にある場合も、生物学の哲学者は生物学というレンズを通して生命を眺め、そうした問題に答えようとする。――『生物学の哲学入門』「序章」より

 
 
■■■「哲学で探る生物学の世界」ブックガイド■■■

[選書&紹介文]森元良太・田中泉吏

  

shinkaronhanazetetugaku進化論に関連する哲学的問題に挑んだ、哲学者と生物学者による書きおろし論文集。(森元)
『進化論はなぜ哲学の問題になるのか 生物学の哲学の現在』
松本俊吉[編著](勁草書房)

shinkarontodarwinダーウィン進化論と現代生物学をめぐる日本人著者による哲学的論考を収めた本格的論文集。(田中)
『ダーウィンと進化論の哲学』
日本科学哲学会[編]横山輝雄[責任編集](勁草書房)


shinkaronnoshatei生物学の哲学の代表的な教科書。進化論と創造論の対立や適応主義の問題など、生物学の哲学の問題に緻密な議論で立ち向かう。(森元)
『進化論の射程 生物学の哲学入門』
エリオット・ソーバー/松本俊吉・網谷祐一・森元良太[訳](春秋社)

 

sexanddeathダーウィン進化論と現代生物学をめぐる日本人著者による哲学的論考を収めた本格的論文集。(田中)
『セックス・アンド・デス 生物学の哲学への招待』キム・ステレルニー、ポール・E・グリフィス/太田紘史・大塚淳・田中泉吏ほか[訳](春秋社)


nyumonkagakutetsugaku個性的な論文の数々とディスカッションを通して科学哲学の現場を知ることのできる画期的な入門書。(田中)
『入門 科学哲学 論文とディスカッション』
西脇与作[編著]源河亨・古賀聖人・田中泉吏ほか[著](慶應義塾大学出版会)

kagakutetsugaku生物学の哲学は科学哲学の一分野。科学哲学をはじめるにはこの本がおススメ。素朴な問いから科学の奥深くを掘り下げる。(森元)
『科学哲学 なぜ科学が哲学の問題になるのか』(春秋社)
アレックス・ローゼンバーグ/東克明・森元良太・渡部鉄兵[訳]


seimeikigenron還元と創発をめぐる長年の論争に生命起源論の文脈から新鮮な切り口で挑む若きフランス人科学哲学者マラテール渾身の著作。(田中)
『生命起源論の科学哲学 創発か、還元的説明か』クリストフ・マラテール/佐藤直樹[訳](みすず書房)

seibutsugakunorekishi科学史・科学哲学者による生物学の歴史本。ダーウィンはもちろん、ラマルクや社会生物学論争、日本における進化論まで切りこむ。(森元)
『生物学の歴史 進化論の形成と展開』
横山輝雄(放送大学教育振興会)

 


shunokigen生物学に科学革命を起こした不朽の古典的著作。(田中)
『種の起原 上・下』
チャールズ・ダーウィン/八杉龍一[訳](岩波文庫)

dawintodesign進化論を古代ギリシャ以来の西洋思想史のなかに位置づけ、その特徴を浮き彫りにする。(田中)
『ダーウィンとデザイン 進化に目的はあるのか?』マイケル・ルース/佐倉統・土明文・矢島壮平[訳](共立出版)


ddi還元主義で何が悪い? 心の哲学で名を馳せたデネットがダーウィン進化論の神髄に肉薄する。(田中)
『ダーウィンの危険な思想 生命の意味と進化』ダニエル・C・デネット/山口泰司・大崎博・斎藤孝ほか[訳](青土社)

keitojushikou生物だけでなく無生物の歴史を描くときにも用いられる系統樹。その作成法、思考の歴史、そして哲学まで考察する。(森元)
『系統樹思考の世界』
三中信宏(講談社現代新書)

 


kakofukugen手持ちのデータからいかに過去を復元するのか。系統樹作成法の背後に潜む哲学を明らかにする。(森元)
『過去を復元する 最節約原理、進化論、推論』エリオット・ソーバー/三中信宏[訳](勁草書房)

idengakugaisetu遺伝学の権威ジェイムス・クローの本。訳者は中立説の木村資生に太田朋子。なんと贅沢な本。(森元)
『遺伝学概説』
J・F・クロー/木村資生・太田朋子[訳](培風館)


seibutushinkawokangaeru分子進化の中立説の提唱者木村資生が一般向けに書いた進化論の本。この本を読まずして進化を語るべからず。(森元)
『生物進化を考える』
木村資生(岩波新書)

 

kakuritunoshutugen進化論には確率が不可欠。確率概念はどのように出現し、なぜ主観と客観の二分化が続くのかを詳細に分析する。(森元)
『確率の出現』
イアン・ハッキング/広田すみれ・森元良太[訳](慶應義塾大学出版会)


guzenwokainarasu近代統計学はダーウィン進化論の数学化のなかで誕生した。ダーウィンの従弟フランシス・ゴールトンの偉業を科学史・科学哲学の観点での分析が読みどころ。(森元)
『偶然を飼いならす 統計学と第二次科学革命』イアン・ハッキング/石原英樹・重田園江[訳](木鐸社)

rikotekinaidenshi今年は出版から40周年。もはや説明は不要だが、生物学の哲学を長年刺激し続けてきた世界観は今でも新鮮。(田中)
『利己的な遺伝子 増補新装版』
リチャード・ドーキンス/日高敏隆・岸由二ほか[訳](紀伊國屋書店)

 



koseibutugaku日本の古生物学界を牽引してきた著者がやさしい語り口で体系的に解説する。著者の研究者・教育者としての経験も披瀝され、古生物学の実践を肌で感じられる。(田中)
『古生物学』
速水格(東京大学出版会)

 
 

hitononakanosakana海から陸への生物進化のミッシングリンクを発見したシュービンの本。進化発生学や古生物学など多岐にわたる成果を踏まえて生命進化を解き明かす。(森元)
『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト 最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅』
ニール・シュービン/垂水雄二[訳](ハヤカワ文庫)


katachidukuritoshinka分子遺伝学と発生学の成果をもとに、生物の形づくりの進化を解説。この本でツールキット遺伝子、ボディプラン、新奇性など生物学の主要概念を理解しよう。(森元)
『DNAから解き明かされる形づくりと進化の不思議』
Sean B. Carrollほか/上野直人・野地澄晴[監訳](羊土社)

seitaishinkahasseigaku進化生物学、生態学、発生学を統合した分野の教科書。生物学の新たな流れが多様な事例を包み込む。(森元)
『生態進化発生学 エコ‐エボ‐デボの夜明け』
スコット・F・ギルバート、デイビッド・イーペル/正木進三・竹田真木生・田中誠[訳](東海大学出版部)


epigenetics遺伝するのはDNAだけではない。エピジェネティクスの概要を学びながら遺伝の謎に迫ろう。(森元)
『エピジェネティクス 操られる遺伝子』
リチャード・C・フランシス/野中香方子[訳](ダイヤモンド社)

hamontorasentoシマウマの縞は「波紋」である。生き物の模様や形を決める原理をユーモアに富んだ語り口で解説する科学者の奇妙な冒険。(田中)
『波紋と螺旋とフィボナッチ 数理の眼鏡でみえてくる生命の形の神秘』
近藤滋(学研メディカル秀潤社)


uchinarusaikin巨生物たる我々人類は微生物との共生なくしては生きられない。微生物との共進化の歴史と現状を踏まえ、未来への警鐘を鳴らす。(田中)
『失われてゆく、我々の内なる細菌』
マーティン・J・ブレイザー/山本太郎[訳](みすず書房)

virus-planet細菌も重要だけどウイルスもね。ということで、生命の理解に不可欠なウイルスについて驚きの事実の数々を一般向けにわかりやすく解説してくれる1冊はこれ。(田中)
『ウイルス・プラネット』カール・ジンマー/今西康子[訳](飛鳥新社)


jituzairontochishiki新しい本質主義と実在論の立場から、生物だけでなく人工物や知識まで自然種であると論じる野心的な著作。(田中)
『実在論と知識の自然化 自然種の一般理論とその応用』
植原亮(勁草書房)

shinkanodeshi生物学の知見を心理学や人類学と総合して人類進化の謎に挑む、興奮と魅力に満ちた一冊。(田中)
『進化の弟子 ヒトは学んで人になった』
キム・ステレルニー/田中泉吏・中尾央・源河亨・菅原裕輝[訳](勁草書房)


 
 
■ブックガイドのpdfファイルはこちら→〈「哲学で探る生物学の世界」ブックガイドpdf〉