こぬま・じゅんいち。 音楽・文芸批評家。早稲田大学文学学術院教授。おもな著書に『オーケストラ再入門』『映画に耳を』『武満徹 音・ことば・イメージ』『ミニマル・ミュージック その展開と思考』『発端は、中森明菜――ひとつを選びつづける生き方』など。『ユリイカ』臨時増刊「エリック・サティの世界」では責任監修を務めている。2010年にスタートした音楽番組『スコラ 坂本龍一音楽の学校』(NHK Eテレ)にゲスト講師として出演中。
暦のうえではすでに夏をすぎていたのに暑い日がいつまでもいつまでもつづいていたから、もう涼しくなることなどないのではないかとおもいかけることさえあった、そんなある朝、目覚めたときの空気がぐっと冷たくなっていた。
ねぇ、口を大きくあけて、はー、ってすると、
どうして、その息はあたたかいの?
それに、あっというまに終わってしまうの?
東日本大震災をきっかけに編まれた詩と短編のアンソロジー『ろうそくの炎がささやく言葉』寄稿者のお一人、小沼純一さんが朗読会で生み出した続編ともいえる小さなお話を、5年後のいま――。