『君の名は。』は、世界そのものが忘れてしまったものを決して忘れないという物語でした。そして『輪るピングドラム』は、純粋な贈与の力となって世界から積極的に消えることで、「存在するより前に消えてしまう(非)存在」を肯定する物語だと言えます(これは、主人公が、世界の潜在性そのもの=唯一神のようなものになるという、『serial experiments lain』や『魔法少女まどか☆マギカ』とは、微妙ですが決定的に違っています)。それはどちらも、「このわたし」とは別様であり得るわたしを、「この世界」とは別様であり得る世界を、存在し得るものとして、潜在的に存在しているものとして、想像し、思考するフィクション(虚構世界)の意味を肯定的に物語っているように思われます。
現実には起こらなかったことにまつわる、誰も思い出すことのできない記憶を、正確に掘り起こそうとすること。奇妙な言い方かもしれませんが、フィクションをそのようなものだと考えることができると思います。