2016年9月12日(月)~10月16日(日)八重洲ブックセンター本店1階で開催中!
2016年9月19日(月)~10月9日(日)紀伊國屋書店梅田本店で開催中!
2016年10月1日(土)~10月31日(月)ジュンク堂書店福岡店で開催予定!
法令、判例、文献等の法情報を調査・分析することをリーガル・リサーチという。案件を解決するために必要な法情報を調査・分析できることは、法律家の必須の能力の一つである。しかし、リーガル・ライティングと同様に、リーガル・リサーチの方法論についても、日本の法学部やロースクールで体系的に教えられることは意外と少ない。そうした状況の中で、指宿信=齋藤正彰監『リーガル・リサーチ〔第5版〕』【7】は、法令、判例、文献等の収集方法について網羅的に言及されており、参考になる。
法律家の基本的な思考様式として、要件=効果図式というものがある。法律家は、条文等に書かれている特定の法律要件に該当した場合に、特定の法律効果を発生させる、という思考方法をとるのである。たとえば、「犯罪」と「刑罰」は刑法における「要件」と「効果」であり、ある行為が刑法等で定められる犯罪成立要件に該当した場合には刑罰という効果が発生する。法律要件に該当する具体的事実は、近代的な訴訟制度の下では証拠により確定されることとなっている。案件を処理するためには、法情報の収集だけでは足りず、証拠の収集が必須となる。そのため「果たしてこの種の事件では、どういった証拠が存在しうるのであろうか?」という「想像力」を働かせて、証拠を効果的に収集していく証拠収集能力は、法律家の基本的な素養の一つである。群馬弁護士会編『立証の実務―証拠収集とその活用の手引』【8】には紛争類型別・証拠類型別に証拠の入手方法などのノウハウが書いてあり、証拠収集のための「想像力」を広げる翼を提供してくれる。また、現代社会では、デジタルデータによって組成された証拠、すなわちデジタル証拠の収集・活用ができなければ、法律専門家としては話にならない。高橋郁夫ほか編『デジタル証拠の法律実務Q&A』【9】は、数少ないデジタル証拠の解説書である。そのほか弁護士のみが用いることができる強力な証拠収集ツールとして、弁護士法23条に基づく弁護士照会がある。弁護士照会に関する書籍はたくさん出ているが、たとえば第一東京弁護士会業務改革委員会第8部会編『弁護士法第23条の2照会の手引 六訂版』【10】などを持っておくと良い。医療過誤裁判における病院のカルテ等を患者側が強制的に証拠として使用したいと考えた場合には、裁判所に対し証拠保全を申し立てることができる。東京地方裁判所の裁判官が執筆した森冨義明=東海林保編著『新版 証拠保全の実務』【11】は、どの法律事務所にも備えられているバイブルであり、法律実務家であれば保有しておく必要がある。
紹介書籍一覧
【7】指宿信=齋藤正彰監修・いしかわまりこ=藤井康子=村井のり子著『リーガル・リサーチ(第5版)』(日本評論社、2016)
【8】群馬弁護士会編『立証の実務(改訂版)』(ぎょうせい、2006)
【9】高橋郁夫=梶谷篤=吉峯耕平=荒木哲郎=岡徹哉=永井徳人編集『デジタル証拠の法律実務Q&A』(日本加除出版、2015)
【10】第一東京弁護士会業務改革委員会第8部会編『弁護士法第23条の2照会の手引(六訂版)』(第一東京弁護士会、2016)
【11】森冨義明=東海林保編著『新版 証拠保全の実務』(きんざい、2015)
■紹介書籍について
*大島義則プロデュース・ブックフェア《法律実務書MAP》で無料配布したブックガイドに掲載の書籍を各パートごとにご紹介しております。
*紹介書籍には品切の書籍が含まれている場合があります。ご了承ください。
*「法律実務書」を紹介するフェアですので、基本書や学術論文集は原則として取り上げておりません。またデスクに置いておく法律実務書を想定しており、逐条解説書やコンメンタールの類も必要に応じて取り上げるにとどめております。
大島義則ほか編著『消費者行政法』
安全法、取引法、表示法、個人情報保護法の分野において、行政庁はどのような法執行を行っているのか。また、その法執行を受ける企業はどのような対応をすべきであるのか。現役消費者庁職員および元職員の弁護士が解説する画期的法律実務書。企業法務担当者、法律実務家、行政職員等必携。2016年8月刊。
松尾剛行著『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』
時に激しく対立する「名誉毀損」と「表現の自由」。どこまでがセーフでどこからがアウトなのか、2008年以降の膨大な裁判例を収集・分類・分析したうえで、実務での判断基準、メディア媒体毎の特徴、法律上の要件、紛争類型毎の相違等を、想定事例に落とし込んで、わかりやすく解説する。2016年2月刊。
喜多村勝德著『契約の法務』
契約法の基礎、契約書文例の詳細な検討はもちろん、裁判例の考え方を丁寧に紹介しつつ、契約法における民事訴訟法上の論点を解説する。さらには、ユニドロワ原則、債権法改正、契約交渉のポイントも加え、契約法務の全体像を立体的に示す。法曹以外の読者も想定し、法的概念の基本から丁寧に説き起こし、あらゆる場面に応用可能な「契約力」の土台をつくる。2015年8月刊。
大塚正之著『臨床実務家のための家族法コンメンタール(民法親族編)』
条文を本当に理解するとは、どのようなことをいうのか。実務の現場で条文を使いこなせるようになることを目的として、実際にどのように条文が活用されているのかを明らかにしつつ、丁寧に逐条解説を施す。弁護士、司法書士等の法律実務家、調停委員、ADRにかかわる方必携。2016年1月刊。
第一東京弁護士会環境保全対策委員会編『再生可能エネルギー法務』
太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマス等、多様な再生可能エネルギーについて、関連法令等の制度面を中心に、導入・運用(住民に対する説明からファイナンスまで)のポイントまでを解説。企業、地方自治体、市民、金融機関、事業者を法的にサポートする法律家等関係者必読の実務書。2016年改正再生可能エネルギー特別措置法対応。2016年9月刊。
第一東京弁護士会災害対策本部編『実務 原子力損害賠償』
東日本大震災、それにともなう福島第一原子力発電所事故から約5年、この間が積み上げた「原子力損害賠償紛争解決センター」への申立てによる賠償問題解決のノウハウを示す。避難指示による避難・自主避難による損害、営業損害、風評被害、避難関連死等、気になるポイントをわかりやすいQ&A形式で解説。2016年2月刊。