仲野麻紀

仲野麻紀

なかの・まき  サックス奏者。2002年渡仏。自然発生的な即興、エリック・サティの楽曲を取り入れた演奏からなるユニットKy[キィ]での活動の傍ら、2009年から音楽レーベル、コンサートの企画・招聘を行うopenmusicを主宰。フランスにてアソシエーションArt et Cultures Symbiose(芸術・文化の共生)を設立。モロッコ、ブルキナファソなどの伝統音楽家たちとの演奏を綴った「旅する音楽」(せりか書房2016年)にて第4回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞。さまざまな場所で演奏行脚中。ふらんす俳句会友。好きな食べ物は発酵食品。

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ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた――人生の欠片、音と食のレシピ〈18皿め〉

ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた ー人生の欠片、音と食のレシピー 3月 13日. 2021

フランスへ発った年の4月。当時付き合っていたボーイフレンドの誕生日、そして最後のデートとなった場所は神楽坂。今でこそ賑やかな雰囲気だが、当時はまだひっそりとした空気感が漂っていた。
 
東京メトロ南北線が出来たばかりで、自宅から一本で行ける場所。水面を照らす春光まぶしいお堀沿いのカフェ。以前は東京日仏学院という名称だった、現アンスティチュ・フランセには渡仏前に何度も訪ね、併設した本屋Rive Gaucheでは仏和辞典を買った。よく通った思い出の場所だ。神楽坂上には赤城神社がある。ボーイフレンドの故郷の山を祀るこの地域の氏神。その後、赤城神社の境内にある神楽殿、地下ホールで何度か演奏をすることになったのも何かの縁だろうか。

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ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた――人生の欠片、音と食のレシピ〈17皿め〉

ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた ー人生の欠片、音と食のレシピー 9月 25日. 2020

シリア内戦10年目。現在約1100万人以上の人々が国内外で難民になっている。内戦前の人口の半分以上の数だ。途方にくれる数字を前に、何を想像できるだろうか。ニュースで流れる映像に、物語は語られない。
 
連載6皿目に登場したシリア難民のヤシール。アラビア語歌詞の発音を教えてもらった彼との出会いはフランス西部に位置する半島、ブルターニュ。800人が住む村に難民として迎えられた彼とその家族。

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ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた――人生の欠片、音と食のレシピ〈16皿め〉

ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた ー人生の欠片、音と食のレシピー 8月 19日. 2020

カリブ海の歴史の影とは、かつてのヨーロッパ列強による奴隷制植民地社会だ。

友人が住むサン=バルテレミー島、この島で演奏をしないかと誘ってくれた。
小アンチル諸島・リーワード諸島北部に位置する、サン・マルタン島のオランダ領からフランス領へ移動する。
一つの島が二つの国の領土として二分されている摩訶不思議な事実を前に、大西洋を横断するもここがEU圏であることの意味を探す。

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ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた――人生の欠片、音と食のレシピ〈番外編2〉

ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた ー人生の欠片、音と食のレシピー 5月 30日. 2020

人類生まれてこのかた、移動とともに、たべものと音楽も広範に移ろい、現在に至ります。

移動という行為のもとにあるのは生きるということであり、移動の中にも定着の中にも生活があります。その生活において、人々は食べ、働き、語り、眠り、信仰を内に秘め、生きる空間に響く音を毎日の支えとする。こうして音楽が絵が文学が、何かが生まれる。
今日食べる皿の中に、今日聞く音楽の中に、育てる作物の中に、手の仕事の中に……生活の中に文化があるのだと思います。

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