《法律実務書MAP》
ブックガイドPartⅥ家事

About the Author: 法律実務書サポート

Published On: 2016/10/24

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大島義則プロデュース《法律実務書MAP》のブックガイドを8回に分けて公開していきます。今回は6回目、家事です。ブックガイドはフェア開催店の店頭で無料配布しています。ぜひこの機会にご来店ください。[編集部]
2016年10月1日(土)~10月31日(月) ジュンク堂書店福岡店で開催中!
八重洲ブックセンター本店、紀伊國屋書店梅田本店でのフェアは終了しました。

 

Part Ⅵ 家事
written by 大島義則

 
1 家事事件一般

夫婦、親子、親族、相続等の家庭に関する事件を家事事件という。家事事件関係については、2141289k多様な申立手続があるため、長山義彦ほか『〔新版〕家事事件の申立書式と手続』【70】などの書式集を1冊持っておくと便利である。

家事事件に関する込み入った最先端の論点については、松原正明=道垣内弘人編『家事事件の理論と実務 第1〜3巻』【71】でリサーチすると良い。
 
2 夫婦関係(離婚等)

離婚等の夫婦関係をめぐる法律相談においては、その場での即答が求められることが多い。山之内三紀子編『離婚・内縁解消の法律相談〔第3版〕』【72】などのQ&A本を持っておいても良いであろう。夫婦関係調停に関しては、法律の専門家ではない調停委員などにも読みやすく書かれた秋武憲一『新版 離婚調停』【73】は便利である。016142q

夫婦関係の訴訟では、やはり浮気(不貞)を原因とする法律相談は多い。不貞をめぐる慰謝料がいくらぐらいもらえるのか、というのは気になる一般の方も多いであろう。不貞慰謝料の相場観を答えられるようにするために、中里和伸『判例による不貞慰謝料請求の実務』【74】が手元にあると良い。

一方の親が他方の親に無断で子どもを連れて出て行くパターンも多い。相手方から子どもを取り戻して欲しい、という依頼が来たときには、石田文三監『三訂版 「子どもの引渡し」の法律と実務』【75】を見ると良い。
 
3 遺言書作成・相続

遺言書の作成や相続問題は、弁護士の仕事でも多い事件類型である。日本は今後、超高齢化社会になっていくので、これらの法律業務はますます増えて行くことと思われる。相続・遺言問題の簡単な質問に答えられるように、髙岡信男編著『相続・遺言の法律相談』【76】のようなQ&A本を持っておくのも便利である。

遺言に関しては、自分で書く自筆証書遺言でも所定の要件を満たせば遺言として有効となるが、後々の紛争を未然に防止するためには公正証書役場で公正証書遺言を作成しておくのが良い。公正証書遺言の文案は公証役場の交渉人と調整しながら仕上げていくものであるため、10101032_525603c07ee9e181094日本公証人連合会の編著である『新版 証書の作成と文例 遺言編〔改訂版〕』【77】は必携である。

遺産分割については、家庭裁判所の裁判官・書記官が執筆し、裁判所からも信頼を得ていると思われる片岡武=管野眞一編著『新版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』【78】を持っておくと良い。

なお、相続事件を処理するためには、戸籍により相続人の範囲を確定する作業が必要となる。戸籍の見方を解説したものとして、高妻新=荒木文明『全訂第二版相続における戸籍の見方と登記手続』【79】がある。
 
4 高齢者の財産管理

超高齢化社会に突入することにより、今後急増していくと思われるのが高齢者の財産管理の法務である。

成年後見人・不在者財産管理人・遺産管理人・相続財産管理人・遺言執行者の各管理人の地位・権限、財産管理人に就任した際の留意点等を
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検討した片岡武=金井繁昌=草部康司=川畑晃一『第2版 家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務』【80】は必携であろう。

また高齢者が将来の援助者に対して財産管理をお願いする場合には、委任契約、法定後見、信託、任意後見等の多様なスキームが存在し、任意後見契約を締結する場合でもその契約内容は多様なバリエーションが存在する。山本修=冨永忠祐=清水恵介『任意後見契約書の解説と実務』【81】は、スキーム選択の羅針盤を提供してくれると共に、任意後見契約の緻密な契約条項の作り込みを行う際の参考になる。
 
 

コラム④ 法律実務に効くこの1冊!(家事編)

 
本橋美智子『新版 要約離婚判例』【82】
 
214178 離婚はどんな人でもたいへんだ。しかし、肌感覚としてではあるが、最初に相談内容をお聞きして、なかなかすぱっと読み切れない事件が増えたような実感がある。有責配偶者から離婚を申し立てていつ認められるのか、親権者が兄弟で別れるのはどうなのか、セックスレスで離婚できるのか、面前DVがあったために面会交流をさせるのが難しいなど。しかし、ある程度の見通しを告げなければ相談者も決められない。

そのようなときに役に立つのが本書である。判例が171件挙がっており、とりあえず指針を決めるのに頼れる1冊である。また、傾向と実務という解説ページが判例紹介の前にあり、どれを読めばよいのかも探しやすい。

2章「離婚原因」では、精神病、宗教活動などあまり多くない例が挙がっている一方、不貞行為を行った側からの離婚請求について事案を多く集めており、相談を聞いて考えるときに要素を拾い出すのに役立つ。

3章では婚姻費用、7章では養育費について厚く取り上げている。実際に婚姻費用を決める際、自動車や住宅ローンの存在で支払う側と支払われる側でなかなか折り合わず悩まされることが多いが、計算方法など説明も詳しい。また、収入のない当事者についてある程度の収入を換算した事例なども挙げられている。

5章では、財産分与についての例が挙がっている。夫の名義のマンションに妻が住み続ける場合の財産分与など、よくあるが悩ましい事例が挙がっている。また、退職金の財産分与については4件も取り上げられており、即時に支払いが命じられた例、退職時に支払いが命じられた例が両方挙がっており興味深い。

6章では親権者・監護者について、かなり事例が多く集められている。理由をここで語ることはしないが、統計上、離婚事件の多くは母が親権者となっているであろう。ただ、本書では低年齢の子でも親権者を父に指定した事例や、兄弟で親権者を分けた事例など丁寧にケースが紹介されている。

その他、面会交流、子の引き渡し、国際離婚などについても1章ずつを割いて取り上げられている。いずれもそれだけで1冊の本ができあがるくらいの大きいテーマであるが、本書は離婚相談で悩んだときにとりあえず手に取って短時間で見て安心して頼れる1冊である。
 
佐藤正子(さとう・まさこ)
弁護士(高島法律事務所)。大阪市出身、2004年京都大学法学部卒業。2005年より秋田真志法律事務所(現・しんゆう法律事務所)を経て2011年に滋賀に登録替え。現在、日本弁護士連合会取調べの可視化実現本部事務局員、近畿弁護士会連合会刑事弁護委員会副委員長、滋賀弁護士会両性の平等に関する委員会委員長、一般財団法人河合隼雄財団監事。2015年出産を経験し、育児と仕事のバランスに悩む毎日。共著として『刑事弁護士が語る裁判員裁判―ナニワの法廷から』(大阪経済法科大学院出版部、2009年)、『実践!刑事弁護異議マニュアル』(現代人文社、2011年)がある。

 
 
紹介書籍一覧
【70】長山義彦=篠原久夫=浦川登志夫=西野留吉=岡本和雄『新版 家事事件の申立書式と手続』(新日本法規出版、2015)
【71】松原正明=道垣内弘人編『家事事件の理論と実務 第1巻~第3巻』(勁草書房、2016)
【72】山之内三紀子編『離婚・内縁解消の法律相談(第3版)』(青林書院、2014)
【73】秋武憲一『新版 離婚調停』(日本加除出版、2013)
【74】中里和伸『判例による不貞慰謝料請求の実務』(LABO、2015)
【75】石田文三監修/大江千佳=大田口宏=小島幸保=渋谷元宏=檜山洋子著『三訂版 「子どもの引渡し」の法律と実務』(清文社、2014)
【76】髙岡信男編著『相続・遺言の法律相談(第1次改訂版)』(学陽書房、2014)
【77】日本公証人連合会編著『新版 証書の作成と文例 遺言編(改訂版)』(立花書房、2013)
【78】片岡武=管野眞一編著『新版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』(日本加除出版、2013)
【79】高妻新=荒木文明『全訂第二版 相続における戸籍の見方と登記手続』(日本加除出版、2011)
【80】片岡武=金井繁昌=草部康司=川畑晃一『第2版 家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務』(日本加除出版、2014)
【81】山本修=冨永忠祐=清水恵介『任意後見契約書の解説と実務』(三協法規出版、2014)
【82】本橋美智子『新版 要約離婚判例』(学陽書房、2016)
■紹介書籍について
*大島義則プロデュース・ブックフェア《法律実務書MAP》で無料配布したブックガイドに掲載の書籍を各パートごとにご紹介しております。
*紹介書籍には品切の書籍が含まれている場合があります。ご了承ください。
*「法律実務書」を紹介するフェアですので、基本書や学術論文集は原則として取り上げておりません。またデスクに置いておく法律実務書を想定しており、逐条解説書やコンメンタールの類も必要に応じて取り上げるにとどめております。

【勁草法律実務シリーズ】
shohishagyoseiho_shoei大島義則ほか編著『消費者行政法』
安全法、取引法、表示法、個人情報保護法の分野において、行政庁はどのような法執行を行っているのか。また、その法執行を受ける企業はどのような対応をすべきであるのか。現役消費者庁職員および元職員の弁護士が解説する画期的法律実務書。企業法務担当者、法律実務家、行政職員等必携。2016年8月刊。
internetmeiyokison_shoei松尾剛行著『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』
時に激しく対立する「名誉毀損」と「表現の自由」。どこまでがセーフでどこからがアウトなのか、2008年以降の膨大な裁判例を収集・分類・分析したうえで、実務での判断基準、メディア媒体毎の特徴、法律上の要件、紛争類型毎の相違等を、想定事例に落とし込んで、わかりやすく解説する。2016年2月刊。
keiyakunohomu喜多村勝德著『契約の法務』
契約法の基礎、契約書文例の詳細な検討はもちろん、裁判例の考え方を丁寧に紹介しつつ、契約法における民事訴訟法上の論点を解説する。さらには、ユニドロワ原則、債権法改正、契約交渉のポイントも加え、契約法務の全体像を立体的に示す。法曹以外の読者も想定し、法的概念の基本から丁寧に説き起こし、あらゆる場面に応用可能な「契約力」の土台をつくる。2015年8月刊。
kazokuhokommentar大塚正之著『臨床実務家のための家族法コンメンタール(民法親族編)』
条文を本当に理解するとは、どのようなことをいうのか。実務の現場で条文を使いこなせるようになることを目的として、実際にどのように条文が活用されているのかを明らかにしつつ、丁寧に逐条解説を施す。弁護士、司法書士等の法律実務家、調停委員、ADRにかかわる方必携。2016年1月刊。
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太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマス等、多様な再生可能エネルギーについて、関連法令等の制度面を中心に、導入・運用(住民に対する説明からファイナンスまで)のポイントまでを解説。企業、地方自治体、市民、金融機関、事業者を法的にサポートする法律家等関係者必読の実務書。2016年改正再生可能エネルギー特別措置法対応。2016年9月刊。
genshiryokusonbai第一東京弁護士会災害対策本部編『実務 原子力損害賠償』
東日本大震災、それにともなう福島第一原子力発電所事故から約5年、この間が積み上げた「原子力損害賠償紛争解決センター」への申立てによる賠償問題解決のノウハウを示す。避難指示による避難・自主避難による損害、営業損害、風評被害、避難関連死等、気になるポイントをわかりやすいQ&A形式で解説。2016年2月刊。

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