(注2)内藤順也・松尾剛行「国際訴訟競合」ジュリスト増刊7号・146頁
(注3)実際には例えばNY州法等の各州の法律ですが、ここでは説明を簡便にするために、アメリカ法といって説明します。
(注4)なお、契約の履行過程における名誉毀損については、当該契約の履行の一環等として、当該契約の管轄合意が適用される可能性もあります。これは、管轄合意のドラフトの仕方にもよるでしょう。
(注5)「裁判所は、人に対する訴えについて、その住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合にはその居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。」
(注6)「不法行為 不法行為があった地が日本国内にあるとき(外国で行われた加害行為の結果が日本国内で発生した場合において、日本国内におけるその結果の発生が通常予見することのできないものであったときを除く。)。」
(注7)秋山幹男ほか「コンメンタール民事訴訟法I」第2版追補版609頁
(注8)相談事例1については、民事訴訟法3条の3第8号括弧書きの「外国で行われた加害行為の結果が日本国内で発生した場合において、日本国内におけるその結果の発生が通常予見することのできないものであったときを除く。」の適用は一応問題となりますが、日本人であるBについて、日本を含む全世界へ公開される形で「Bはインターネットで投資名目でお金を集めているが、これは詐欺であって、集めたお金は投資されず、Bの家や車のために使われている。」と投稿すれば、通常日本における結果発生は予見できると思われます。
(注9)「裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く。)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部又は一部を却下することができる。」
(注10)ただし、海外の送達の手続きが面倒であることや懲罰的賠償等が得られないことから、戦略的にアメリカでの裁判を選択することもあり得ます。
(注11)契約の履行過程における名誉毀損については、当該契約の履行の一環である等として、当該契約の履行地が明らかにより密接な関係がある地であるという議論がされることもあります。法の適用に関する通則法20条「前三条の規定にかかわらず、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、不法行為の当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと、当事者間の契約に基づく義務に違反して不法行為が行われたことその他の事情に照らして、明らかに前三条の規定により適用すべき法の属する地よりも密接な関係がある他の地があるときは、当該他の地の法による。」参照。
(注12)古田啓昌『国際訴訟競合』(信山社、1997年)1頁以下参照。
(注13)最判平成28年3月10日民集70巻3号846頁
(注14)コンプライアンス違反をする株主を謝絶し、ゲーミング法上の資格を維持するため、同社の定款には取締役会が不適格であると判断した株主の株式を強制償還できる旨の定めがありました。
(注15)細かい論点としては、米国の会社である甲以外に、取締役も提訴されており、これらの取締役の行為について不法行為地が日本にあるのか等も争われていましたが、このような細かい問題は、判決原文をご参照ください。
(注16)東京高判平成26年6月12日最高裁判所民事判例集70巻3号913頁
(注17)「本件訴訟の本案の審理において想定される主な争点は、本件記事の摘示する事実が真実であるか否か及び被上告人がその摘示事実を真実と信ずるについて相当の理由があるか否かである。本件訴訟と別件米国訴訟とは、事実関係や法律上の争点について、共通し又は関連する点が多いものとみられる。
三 そこで、本件について、民訴法三条の九にいう「事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情」があるか否かを検討する。上記事実関係等によれば、本件訴訟の提起当時に既に係属していた別件米国訴訟は、米国法人である被上告人が、上告人X2及びその関係者が海外腐敗行為防止法に違反する行為を繰り返すなどしていたとして、上告人X2が取締役会長を務める上告人会社の子会社であるAが保有する被上告人の株式を強制的に償還したこと等に関して、被上告人とA及び上告人らとの間で争われている訴訟であるところ、本件訴訟は、上告人らが、上記の強制的な償還の経緯等について記載する本件記事によって名誉及び信用を毀損されたなどと主張して、被上告人に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めるものであるから、別件米国訴訟に係る紛争から派生した紛争に係るものといえる。そして、事実関係や法律上の争点について、本件訴訟と共通し又は関連する点が多い別件米国訴訟の状況に照らし、本件訴訟の本案の審理において想定される主な争点についての証拠方法は、主に米国に所在するものといえる。さらに、上告人らも被上告人も、被上告人の経営に関して生ずる紛争については米国で交渉、提訴等がされることを想定していたといえる。実際に、上告人らは、別件米国訴訟において応訴するのみならず反訴も提起しているのであって、本件訴えに係る請求のために改めて米国において訴訟を提起するとしても、上告人らにとって過大な負担を課することになるとはいえない。加えて、上記の証拠の所在等に照らせば、これを日本の裁判所において取り調べることは被上告人に過大な負担を課することになるといえる。これらの事情を考慮すると、本件については、民訴法三条の九にいう「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情」があるというべきである。
以上と同旨の見解に立って、本件訴えを却下すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。」
(注18)他には東京地判平成26年9月5日判時2259号75頁、東京高判平成26年11月17日判時2243号28頁、京都地中間判平成27年1月29日等参照。
(注19)内藤順也・松尾剛行「国際訴訟競合」ジュリスト増刊7号・151頁
次回更新、11月10日(木)予定。
松尾剛行著『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』
時に激しく対立する「名誉毀損」と「表現の自由」。どこまでがセーフでどこからがアウトなのか、2008年以降の膨大な裁判例を収集・分類・分析したうえで、実務での判断基準、メディア媒体毎の特徴、法律上の要件、紛争類型毎の相違等を、想定事例に落とし込んで、わかりやすく解説する。
書誌情報 → http://www.keisoshobo.co.jp/book/b214996.html