《法律実務書MAP》ブックガイドPartⅦ刑事

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Published On: 2016/10/31

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大島義則プロデュース《法律実務書MAP》のブックガイドを8回に分けて公開していきます。今回は7回目、刑事です。ブックガイドはフェア開催店の店頭で無料配布しています。ぜひこの機会にご来店ください。[編集部]
2016年10月1日(土)~11月18日(金) ジュンク堂書店福岡店で開催中! ※好評につき延長となりました!
八重洲ブックセンター本店、紀伊國屋書店梅田本店でのフェアは終了しました。

 

PartⅦ 刑事
written by 大島義則

 
1 成人事件

成人の刑事弁護の手引書としては『刑事弁護ビギナーズver.2』【83】に定評がある。「ビギナーズ」と銘打たれているが、ここに書かれている基本の刑事弁護を徹底的にやることはそれなりに大変であり、これだけで十分な刑事弁護になりうる。

156227583-7難しい論点にぶつかったときには『大コンメンタール刑法【第三版】〔全13巻〕』、『注釈刑法(第1巻)』(有斐閣)、大コンメンタール刑事訴訟法【第二版】〔全11巻〕(ともに青林書院)などの逐条解説書をリサーチすることになるが、デスクに置いておくには場所をとる。手元用にコンパクトな逐条解説書を置いておくと良いであろう。刑法は前田雅英編集代表『条解刑法 第3版』【84】、刑事訴訟法は松尾浩也監修『条解刑事訴訟法 第4版』(弘文堂、2009年)ということになる。勾留を争ったり、保釈を検討したりするなど身体拘束関係について少し突っ込んだ検討をする必要があるときには高麗邦彦=芦澤政治編『令状に関する理論と実務Ⅰ・Ⅱ 別冊判例タイムズ』【85】の出番も多いだろう。

刑事弁護では、理論だけでなく、法廷における立ち振る舞いや所作も重要である。法廷での尋問の巧拙が成否を分けることもある。既出のゴールデンルール【6】と共にダイヤモンドルール研究会ワーキンググループ編『実践! 刑事証人尋問技術 — 事例から学ぶ尋問のダイヤモンドルール』【86】から学んでおくと良い。また、具体的・実践的な異議申立ての方法については大阪弁護士会刑事弁護委員会公判弁護実務部会『実践!刑事弁護異議マニュアル』【87】でノウハウを補充するとより良い刑事弁護が可能になる。

415-1497-7刑事弁護では、これらに加えて被疑者・被告人とのコミュニケーションを円滑にすることが大切である。被疑者・被告人の関心は「自分はどの程度の刑罰が下るであろうか」という点にあることが多く、またいわゆる自白事件においてはどの程度の刑罰が下るかという量刑が主たる争点であることが多い。第一東京弁護士会刑事弁護委員会編『量刑調査報告書』(Ⅳ、不当破棄編)【88】を手元に置いておくと、おおよその量刑相場を説明できて良いだろう。

また、被疑者・被告人の中には特定の業界の隠語・俗語を使用する者もいる。下村忠利『刑事弁護人のための隠語・俗語・実務用語辞典』【89】は、「業界」用語を1300個以上集めた辞典であり、こういった俗語を知る手がかりになるだろう。やや、関西の用語に偏っているきらいはあるが、読み物としても面白い。
 
2 少年事件

20歳未満の少年が起こした少年事件については、成人の事件と異なるノウハウが必要である。z51b0ewp4lxl-_sx347_bo1204203200_少年事件の弁護活動をする前に『少年事件ビギナーズ』【90】は読んでおきたい。『少年事件ビギナーズ』は『刑事弁護ビギナーズ』と異なり、やや記載が手薄な部分もあるので、そうした部分は福岡県弁護士会子どもの権利委員会編『少年事件付添人マニュアル[第3版]』【91】で補充すると良い。
 
3 被害者(告訴・告発等)

最近まで刑事弁護というと被疑者・被告人の刑事弁護が中心であったが、司法制度改革によって犯罪被害者支援の方策も充実してきている。犯罪被害者に代理人弁護士が就くことも現在では珍しくない。

捜査段階における犯罪被害者の捜査対応や加害者との示談交渉の方法、被疑者が不起訴になった場合の検察審査会制度の活用方法、公判における被害者参加制度、損害賠償命令制度や被害者等通知制度を通じた犯罪者支援など、被疑者弁護のステージも多様化している。

00000000080120021630000ym9image0兵庫県弁護士会「実践 犯罪被害者支援と刑事弁護」出版委員会編著『実践 犯罪被害者支援と刑事弁護―弁護士による被害者支援と刑事弁護人の対応―』【92】は、犯罪被害者支援のための基礎知識が詰め込まれているほか、1つの事象を弁護人・被害者代理人の双方から見ることを意識することができる点で参考になる。

また犯罪の被害者による「刑事告訴」や犯人以外の第三者による「刑事告発」を依頼されることもある。告訴状・告発状を作成し、捜査機関に受理してもらうためのハードルは、一般の方が思っているよりも高い。司法研修所検察教官室において勤務経験等を有する検察官の手による末永秀夫ほか『犯罪事実記載の実務 刑法犯 六訂版』【93】(通称ピンク本)には犯罪事実の具体的な記載例が多数収録されているので、告訴状・告発状の起案に役立つであろう。
 
 

コラム⑤ 法律実務に効くこの1冊!(刑事編)

 
ダイヤモンドルール研究会ワーキンググループ編『実践! 刑事証人尋問技術 — 事例から学ぶ尋問のダイヤモンドルール』【86】
 
415-1 弁護士の実務において、後から本当に取り返しのつかない事をやらかす場面というのはそれほど多くはない。やらかさないに越したことはないが、それでも大抵のことは後から追完なり、補正なり、訂正なり、変更なりが可能である。しかしながら刑事事件における尋問はそうではない。弁護人が主尋問で何か聞き漏らしたとか反対尋問に失敗したとかといっても、後日再度の尋問を認める裁判所はまずない。そうであるから、弁護人は失敗のないように十分な準備をして尋問に臨まなければならない。その準備のために好適なのが本書である。では、どうやれば本書を用いて失敗しないような準備ができるか。

まず、基礎編と主尋問編を読んで基本的な型を学ぶ。たとえば、反対尋問においては、3CやCICCと呼ばれる基本的な型がある。そのままで現場に適用できるかはともかくとして、反対尋問の準備をするのに3Cが何かCICCが何か知らないというのは準備以前の段階である。本書は基礎編と主尋問編で基本的な型と考え方について解説している。

型を覚えたら次に実戦をイメージした型の適用について学ぶ。本書は実践編で実務上よくある場面を想定して事例を紹介している。これらをよく読みイメージすることで、型が具体的にどのように適用されるかを知ることができる。

最後に、テクニック編その他の部分で実戦における注意点を確認することで、最低限必要な尋問準備ができるようになる。

さて、ここまで「型」「型の適用」を「学ぶ」と書いてきたが、学び方にも注意しなければならない。本書を読んで知識として覚えただけで学んだことにしてはならない。型のとおりに声を出し動いてみることが絶対に必要である。法律実務書には珍しく本書に動画DVDがついているのは真似てみて理解を深めるためである。

最初はただ真似てみる。失敗例もあるがそれも真似てどう違うか体験してみる。

法科大学院生や修習生、ときに弁護士に刑事弁護を教えている者として断言するが、ほとんどの人は本を読んでDVDを見て記憶しても、型のとおりに動くことができない。それぞれの型を自分が法廷に立っているつもりになって実演してみる必要がある。指導できる人に見ていてもらうのが理想的だが、そうでなければビデオカメラを回しておくと良いだろう。型どおりの所作すらできない自分に気付かされる。しかし、続けて数度やってみれば動ける、話せるようになる。自分がどれだけ話せるか、動けるか確かめてから尋問を組み立てる。尋問を組み立てたなら、法廷に立っているつもりで練習してみる。そんな当たり前の尋問準備ができるようになる前提として本書は必読である。 
 
野田隼人(のだ・はやと)
弁護士(高島法律事務所)、京都大学法科大学院講師(非常勤、刑事弁護実務演習担当)、京都産業大学法科大学院講師(非常勤、「精神医療と法」担当)。東北大学法科大学院修了。Webシステム開発会社経営者。刑事事件、債務超過中小企業の再生・承継、フィリピン法務に注力しているほか、法律事務所に対するIT化のコンサルティングを行っている。共著として『弁護士 独立のすすめ』(第一法規、2013年)、『Q&A心神喪失者等医療観察法解説 第2版』(三省堂、2014年)。

 
 
紹介書籍一覧
【83】『刑事弁護ビギナーズver.2』(現代人文社、2014)
【84】前田雅英編集代表/松本時夫=池田修=渡邉一弘=大谷直人=河村博編『条解刑法(第3版)』(弘文堂、2013)
【85】高麗邦彦=芦澤政治編『令状に関する理論と実務 Ⅰ・Ⅱ』(判例タイムズ、2012)
【86】ダイヤモンドルール研究会ワーキンググループ編『実践!刑事証人尋問技術』(現代人文社、2009)
【87】大阪弁護士会刑事弁護委員会公判弁護実務部会『実践!刑事弁護異議マニュアル』(現代人文社、2011)
【88】第一東京弁護士会刑事弁護委員会編『量刑調査報告集Ⅳ』(第一東京弁護士会、2015)
第一東京弁護士会刑事弁護委員会編『量刑調査報告集 量刑不当破棄編』(第一東京弁護士会、2011)
【89】下村忠利『刑事弁護人のための隠語・俗語・実務用語辞典』(現代人文社、2016)
【90】『少年事件ビギナーズ』(現代人文社、2011)
【91】福岡県弁護士会子どもの権利委員会編『少年事件付添人マニュアル(第3版)』(日本評論社、2013)
【92】兵庫県弁護士会「実践 犯罪被害者支援と刑事弁護」出版委員会編著『実践 犯罪被害者支援と刑事弁護』(民事法研究会、2015)
【93】末永秀夫=絹川信博=坂井靖=大仲土和=長野哲生=室井和弘=中村芳生『犯罪事実記載の実務 刑法犯(6訂版)』(実務法規、2014)
■紹介書籍について
*大島義則プロデュース・ブックフェア《法律実務書MAP》で無料配布したブックガイドに掲載の書籍を各パートごとにご紹介しております。
*紹介書籍には品切の書籍が含まれている場合があります。ご了承ください。
*「法律実務書」を紹介するフェアですので、基本書や学術論文集は原則として取り上げておりません。またデスクに置いておく法律実務書を想定しており、逐条解説書やコンメンタールの類も必要に応じて取り上げるにとどめております。

【勁草法律実務シリーズ】
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安全法、取引法、表示法、個人情報保護法の分野において、行政庁はどのような法執行を行っているのか。また、その法執行を受ける企業はどのような対応をすべきであるのか。現役消費者庁職員および元職員の弁護士が解説する画期的法律実務書。企業法務担当者、法律実務家、行政職員等必携。2016年8月刊。
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契約法の基礎、契約書文例の詳細な検討はもちろん、裁判例の考え方を丁寧に紹介しつつ、契約法における民事訴訟法上の論点を解説する。さらには、ユニドロワ原則、債権法改正、契約交渉のポイントも加え、契約法務の全体像を立体的に示す。法曹以外の読者も想定し、法的概念の基本から丁寧に説き起こし、あらゆる場面に応用可能な「契約力」の土台をつくる。2015年8月刊。
kazokuhokommentar大塚正之著『臨床実務家のための家族法コンメンタール(民法親族編)』
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