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『スタートアップの知財戦略』

 
あとがき、はしがき、はじめに、おわりに、解説などのページをご紹介します。気軽にページをめくる感覚で、ぜひ本の雰囲気を感じてください。目次などの概要は「書誌情報」からもご覧いただけます。
 
 
山本飛翔 著
『スタートアップの知財戦略 事業成長のための知財の活用と戦略法務』

「はしがき」「目次」「本書の特徴」「第1章 スタートアップと知財より「3 スタートアップにとっての知財活用場面」」(pdfファイルへのリンク)〉
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はしがき
 
 私がスタートアップの業界に足を踏み入れたきっかけは、「知財戦略」であった。私が初めて「知財戦略」を知ったのは、丸島儀一氏の『知的財産戦略』であり、当時法科大学院生だった私は、法律の1分野である知的財産法で守られる知的財産権が事業の成長に活用できる、ということに衝撃を受けた。それまでの私は、法律は「守り」のイメージが極めて強いものだと考えていたため、「攻め」の側面をも有する知財に惹きつけられていった。そして、適切な知財戦略の構築には経営と法律の双方が必要であることを丸島氏の『知的財産戦略』から学んだ私は、本やネットで学ぶことはもちろん、実際の現場の方々の声を伺わなければいけないと考え、一心不乱に会社の法務部や知財部の方に会い続け、知財戦略についての話を伺った。しかし、もちろん既に優れた知財戦略で活躍している大企業は存在するものの、丸島氏の『知的財産戦略』でも指摘されるように、経営陣と知財部の距離が遠いことが多い大企業においては、適切な知財戦略が構築することが難しいケースが少なくないということを知るに至った。
 そのような中、出会ったのがスタートアップの世界であった。すなわち、スタートアップにおいては、法務部・知財部は当然存在せず、経営者(又はそれに限りなく近いメンバー)が知財を取り扱うのである。この点で、経営陣と知財部の距離の遠さの問題は、知財の専門家がスタートアップの知財部の代わりを担えば、解決できる。また、スタートアップは新しい市場、新しいスタンダードを新しい解決手段で創りに行くことが多く、他方、人・金・物が大企業に比して足りず、リスクテイクして切り開いた新しい市場での優位性を守る術が少ない。この点においても、スタートアップにとって、新しい発明等を保護する知財を活用する必要性は高いといえよう。
 そこで、私は、スタートアップに知財戦略を浸透させ、効果的な知財戦略でスタートアップの成長をサポートし、数多くの成功例の誕生に寄与したいと考えるに至った。
 そこからは、試行錯誤の連続であった。知財戦略を語る弁護士である以上、知財の権利形成から知財の活用の場面の1つである知財訴訟を含め、一連の知財実務に従事したいと考え、幸いにも希望どおり中村合同特許法律事務所へ入所することができた。他方、知財戦略は経営と知財の掛け合わせである以上、経営、しかもスタートアップにとっての経営を学ばなければいけないと考えた私は、できる限りスタートアップの経営者やビジネス側のメンバーの方とランチミーティング等を重ね、たくさんのスタートアップの方からお話を伺わせていただき、多くのことを学ばせていただいてきた。こういった学びを自分なりに知財の世界に応用するよう、頭を悩ませ、アイディアが思いつくたびにスタートアップの方に提案をして、try & error を繰り返している。その意味では、昨今注目を浴びているデザイン経営のように、徹底的にユーザー(スタートアップ)目線で、スタートアップにとって有益なものとしての「知財戦略」を探求し続け、リーンスタートアップのように、考えた結果を速やかにユーザーたるスタートアップに向けて発信し、フィードバックを受けて改善して、を繰り返してきた。
 本書は、そんな私のtry & error の一環として、そして何より、私に色々な学びを与えてくれたスタートアップ業界に関わる皆様への恩返しの一環として、書き上げたものである。今の私がこの業界のために持てるものを出し尽くし、スタートアップ業界に少しでも寄与できればと思っている。
 最後に、上記のようにtry & error を繰り返していた若輩者である私を見つけ出し、本書執筆の機会を与えてくださり、スタートアップ業界のために共に伴走してくださった勁草書房の中東小百合氏に、心からの御礼を申し上げる。
 
2020 年1 月
山本 飛翔
 
 
本書の特徴
 
1 スタートアップ関係者が知りたい知財を1 冊に
 これまで、スタートアップのCEO や知財法務の担当者の方が「知財」について知りたいというときに、スタートアップの特性を踏まえて解説がなされた実務書はありませんでした。そこで、本書においては、スタートアップのフェーズや業種に応じて、それぞれに求められる知財戦略を、基本的な法的知識等も交えながら、丁寧に解説することを心掛けました。そのなかでは、法分野ごとに縦割りで解説するのではなく、必要に応じて分野横断的に検討を試みていますので、より実践的にお役立ていただけるものと自負しています。
 
2 大企業とのより良い関係性の構築に
 昨今スタートアップと大企業とのオープンイノベーションの重要性が高まっている状況を踏まえ、本書においても、スタートアップにとって重要な大企業とのアライアンスにも注目し、1 章分を割いて解説しています。同章においては、スタートアップの視点のみならず、大企業の視点からも、スタートアップとのアライアンスについていかに取り組むべきか、という点も検討しています。そのため、スタートアップのみならず、大企業の法務・知財担当者の皆様にもアライアンスの成功のためにお役立ていただければ幸いです。
 
3 特許権のみならず、その他の知的財産権までカバー
 多くの知財戦略の書籍では、主として特許権が取り上げられることが多いですが、知財戦略においては特許権以外の各種知的財産権の活用も極めて重要となり、このことはスタートアップにも同様にあてはまります。例えば、模倣品対策において特許権のみならず商標権や意匠権も組み合わせることや、ブランド戦略において商標権のみならず特許権をも組み合わせる等、知財戦略においては各種知財を組み合わせることも重要です。そのため、本書においては、特許法のみならず、商標法や意匠法、著作権法、不正競争防止法などについても必要に応じて検討しています。
 
4 さらなるリサーチのための参考文献も
 本書は、法律そのものに深いなじみのない方にも読み進めていただけるよう、基本的な視点に立った解説を基礎としていますが、さらなる情報へアクセスしたい方やスタートアップに関心の高い知財実務家の皆様の参考にもなるよう、より詳しい内容の書籍や論文等の参考文献を脚注で補っていますので、ご活用いただければ幸いです。また、本書末尾にも分野別の参考文献リストを用意し、法律書については、基本書・コンメンタール・実務書をなるべくバランス良く紹介できるよう心掛けましたので、ぜひご参照ください。
 
* * * * *
 
 本書をお読みいただき、(本書の内容に限らず)ご質問やご意見等ございましたら、以下のご連絡先よりお気軽にご連絡をいただければ幸いです。スタートアップの世界に携わる皆様と共有すべき問題であれば、note、Twitter や(機会をいただければ)次回以降の書籍等において(守秘すべき情報等は公開を控えつつ)皆様と共有させていただき、スタートアップ業界の発展に少しでも寄与できればと考えています。
○Twitter @TsubasaYamamot3
○note https://note.mu/ip_startup
○Mail(書籍お問い合わせ用) t_yamamoto@lawyamamoto.com
 
 
「第1章 スタートアップと知財」より
3  スタートアップにとっての知財活用場面
 
⑴ はじめに
 既に述べたとおり、リソースが十分にはないスタートアップが、大企業を始めとした他企業との競争に負けず、短期間で大きく成長していくにあたっては、知財を活用することが有効である。スタートアップがEXIT を目指して進んでいくにあたり、各フェーズにおいていかなる取り組みをすべきか、という点は、第2 章以降において述べることとし、本項においては、スタートアップが知財を活用できる具体的な場面についてみておきたい。
 
⑵ 特許権
 本章の2 ⑵⒝で述べたように、特許権を取得するにあたっては、特許出願を行い、その後審査請求を行い、特許庁とのやりとりを経て、特許査定を獲得する必要がある。そのため、以下、特許出願段階におけるスタートアップのメリットと、特許査定を得て特許権を獲得した後のスタートアップのメリットを紹介する。
 
⒜ 特許出願のメリット
 スタートアップは、特許出願をすることにより、出願対象になった発明について、以下のメリットを享受できる。
① 投資家・取引先・アライアンス相手への説明のしやすさ(過度な秘匿化の必要性減)
 特許権を取得するための主要な要件である新規性と進歩性[47]の判断基準時は、出願時点で判断される。そのため、特許出願前に、特許出願の対象となる発明の情報を一部でも公開してしまうと、公開部分は、原則として新規性を失うこととなり[48]、特許の権利化の可能性は低下し、権利化された場合の権利範囲を狭めてしまうリスクがある。そのため、特許出願前に、投資家や潜在的顧客等に対してプレゼン等を行う必要があるときも、以下のような配慮が必要になる。

A.できる限り技術のコアの部分は開示しない
B.必ず秘密保持契約(以下「NDA」という)を締結する
C.NDA を締結しても、多数の方には開示しないようにする

 これに対して、早期に特許出願さえ完了しておけば、特許取得との関係では、投資家・取引先・アライアンス先・ユーザーに対し、プロダクト/サービスについての説明する際に、過度に情報を秘匿する必要がなくなり、積極的なプレゼンやプロモーションを実行しやすくなる。なお、早期の出願により、プロダクト/サービスの未完成部分を特許に反映できなくなるのではないか、という懸念については、国内優先権(特許法41 条)や分割出願(特許法44 条)を活用することで相当程度はケアすることができよう(この点については、第2 章の3「シード期(その2)各種戦略の方針決定後」において詳述する)。
② 他社による後願排除
 自社で特許出願を完了しておけば、それより後の他社による同一又は類似する発明についての特許出願に対して、自社の出願により新規性や進歩性がないと判断される可能性が出てくる(後願排除効)。
 すなわち、自社による特許出願は、自社による特許権の取得のためという側面のみならず、競合他社による特許権取得の阻止のためという側面をも有する。
③ 価値の可視化
 特許出願を行うことで、自社の技術やアイディアが、特許の出願書類の中で言語化されることになるが、これは当該スタートアップの価値を図る上で有益なものになりうる。すなわち、例えば、M&A を検討するにあたり、当該スタートアップの価値を図るため、デューデリジェンス(以下「DD」という)が実行され、その際、知財DDも行われる場合がある。知財DD では、当該スタートアップの保有する知的財産の価値及び当該スタートアップが抱える知的財産に関するリスクの調査及びリスクへの対応策の検討を行うこととなる。
 実際に知財DD を経験するとイメージしやすいところだが、スタートアップにおいて、特許出願をしない限り、技術やアイディアは、担当技術者の「頭の中」にしかなく、第三者に伝達可能な文書等の形で残されていない場合が決して少なくない。この場合、知財DD の担当者としては、検討対象たる「知的財産」が何なのか、という点が曖昧になってしまうため、具体的かつ正確な調査を検討することが難しくなり、すなわち、知的財産の価値を積極的に評価することが難しくなり[49]、(自社で実施している技術の内容が不明確になるため)広めにリスクを拾わざるを得ない。これがスタートアップにとって不幸な結論を招きがちであることは容易に想像できよう。
 したがって、特許出願を行うことにより、自社の技術やアイディアを言語化し、価値として可視化しておくことは、資金調達やM&A において重要なものとなろう。なお、特許出願後においては、「特許出願中」(権利取得後は特許取得済)と表示し、自社のプロダクト/サービスの技術力や独自性のアピール材料とすることも考えられよう。
④(公開後)M&A/アライアンスの対象企業としてウォッチング対象になりうること
 特許出願後、出願内容が公開された場合、自社が欲しい技術をM&A/アライアンスで補おうとしている大企業のウォッチングの対象となりうることもメリットとして挙げられよう。すなわち、大企業は、自社の事業領域(今後進出予定の領域も含む)について、特許の出願動向をウォッチングしている場合が多いため、当該領域でスタートアップによる新たな出願がなされれば、当然、ウォッチングの対象になり、その出願内容によっては[50]、当該スタートアップのM&A/アライアンスを検討する契機になりうる。
⑤ 市場調査
 まず、特許出願後、審査請求を行った場合、特許庁の審査官が、過去に同一又は類似した技術が公開されていないか調査し、出願した発明の新規性・進歩性の阻害になるものを発見した場合は、出願者に対し、その結果を通知する(拒絶理由通知)。そのため、審査官に、一定の範囲で、自社と競合する事業を行っている事業者を発見してもらえるというメリットがある。
 また、②と重複する点もあるが、競合他社が、自社の特許出願に係る発明と同一又は類似した発明について特許出願を行った場合、自社の特許出願が引用され、特許庁より拒絶理由通知が発せられる場合がある。この引用された事実は、調査して確認することが可能であるため、自社に競合する事業を行い/行おうとしている会社を、その出願内容と共に確認することができる。すなわち、自社で特許出願を行っておけば、一定の範囲で自動的に競合企業を検知することが可能になるといえる。
 
⒝ 特許権取得後のメリット
 また、特許権取得後については、上記の出願時のメリットに加え、以下のメリットが挙げられる。
① 他社プロダクト/サービスが特許権を侵害している場合の差止請求・損害賠償請求
 既に述べたところではあるが、特に差止めについては、自社の独占性/競争優位性を保つ上で非常に有用な手段となる。なお、被疑侵害者が、仮に特許権に抵触しないようにプロダクト/サービスの設計を変更した場合には、特許権の侵害を主張することは難しくなるものの、容易に回避しづらい特許権を創り込めば、設計変更にも一定の時間を要することとなる。そして、スタートアップは新しい市場を創り進出していくことが多いことを踏まえれば、当該新規市場で仮に半年でもリードタイムを確保できれば、スタートアップが競合に対して得られるリードタイムの価値は極めて高いことは容易に想像できるだろう。
② ディフェンス材料(クロスライセンスの弾や侵害訴訟等を起こされた場合のカウンター材料)
 特許権者が侵害者に何らかの警告や訴訟等を起こす際、通常、相手方が特許権を保有しているか否かを確認する(カウンターで訴えられるリスクを測るため)。そこで相手方が特許権を保有していない場合、少なくともカウンターで訴えられるリスクは「0」ということになってしまう。そのため、相手方に対する抑止力という意味でも、特許権の保有は極めて重要なものとなる。また、交渉時において、相手方の特許権の侵害を回避できない場合においても、自社の特許権を相手方が侵害している(今後侵害する可能性がある)といえるような場合においては、共に自社の特許を相手方にライセンスする(クロスライセンス)ことで交渉をまとめるということも考えられる。この意味で、ディフェンスのためにも特許権を保有していることは重要となる(前述のFacebook とYahoo のケースからもこのことは裏付けられよう)。
③ 他社との協業での活用
 スタートアップが成長していく過程では、どこかの時点で、何らかの形で他社(特に大企業)とアライアンスを行う必要に迫られる場合がほとんどであるが、アライアンスにふみきるにあたって、ノウハウや技術だけとられてしまうのではないかと懸念するスタートアップも少なくないだろう[51]。
 この点、特許権は、スタートアップが、リソースの充実している大企業との交渉において、フェアな内容の契約を締結するための有用な材料の1 つであるといえよう。すなわち、大企業であっても、特許権者の許諾を得ない限り、当該特許発明は実施できないため、大企業から見て、当該特許権の実施に価値があると考えれば、他社ではない当該スタートアップとアライアンスを進めたい、というインセンティブが働くことになる(大企業とのアライアンスについては第3 章「大企業とスタートアップ」において詳述する)。
 
⑶ 商標権
 上で述べた特許については、ディフェンスの側もありつつも、オフェンスの側面が強かったが、相対的に見れば商標はディフェンスの側面の重要性も高い(なお、業種や事業内容によっては、商標権の方が特許権よりも強力なオフェンスの武器になる場合があることや、商標権を特許権やその他の知財と組み合わせてオフェンスに活用すべきことには留意されたい)。
 すなわち、上場審査やDD においては、通常、会社名、主要なプロダクト/サービス名で商標権が適切な権利範囲で取得されているか否かがチェックされ、ここで適切な権利が取得されないと、マイナス評価の原因となりうる。この点を懸念し、先願の商標権者との交渉で商標権を買い取る場合もあるが、高額の費用を要する場合も少なくない。また、交渉も失敗し、会社名やサービス名を変更するスタートアップも少なくないが、信用や認知度が蓄積した社名やプロダクト名/サービス名を変更しなければならない場合のダメージの大きさは計り知れない。
 したがって、不必要にコストをかけたり自社の事業価値を下げないためにも、早期に適切な商標権を取得することが肝要である。
 
⑷ 意匠権
 意匠権は、特許権や商標権に比して、これまでスタートアップに積極的に活用されてきた権利ではないものの、昨今のデザインの重要性に鑑みれば、意匠権がEXITの過程で活用される余地は大きくなってきているといえよう。
 例えば、特に令和元年改正法の施行日以降は、画像のデータが拡充されるところ、UI(ユーザーインターフェース)を創り込む過程で、ユーザビリティの優れたデザインを採用し、当該デザインについて意匠権を取得できれば、大きな競争優位を保てる可能性をも秘めている。また、ユーザーや投資家等にデザインのこだわりを説明するにあたっても、意匠権を取得していれば、当該デザインが新規のデザインであることや、他社が同一又は類似のデザインを採用することができない旨説明しやすくなるはずである。
 なお、特に画像に関する意匠については、今後他社の権利侵害の有無の調査(クリアランス)の負担が増えることが懸念されていることも踏まえれば、重要なUI 等のデザインについては、当該デザインの自社の使用を確保すべく、早期に意匠出願を行い、意匠権の取得を目指すべきであろう。
 
⑸ 著作権・不正競争防止法
 著作権については、第7 章の5 で検討するエンタメ系スタートアップ等、コンテンツが肝となる事業を除けば、相対的に見ればディフェンスの側面の重要性が高い。すなわち、上場審査やDD において、他社の著作権侵害のリスクの有無や程度を調査された際に、マイナス評価をされないような体制を構築することが肝要である。
 また、不正競争防止法については、いかなる知財戦略を選択するかにもよるが、秘匿化の重要性が高い戦略を選択した場合(「営業秘密」)や、ものづくり系スタートアップの場合(「形態模倣」)には、オフェンスの側面の重要性が高いといえよう。他方、上場審査やDD との関係で、各種「不正競争行為」に該当するようなプロモーション活動を行わないこと(第2 章の5「アーリー期」で詳述する)や、紛争対応時に「不正競争行為」に該当するような対応をとらないこと(第9 章「各種知財の権利行使」において詳述する)によりマイナス評価を避ける、という意味では、ディフェンスの側面も重要といえよう。
 
脚注
[47]既存の技術から当業者(その分野の技術者)が容易に思いつくことができないこと。
[48]新規性の喪失について一定の救済措置はある(特許法30 条)ものの、猶予期間(グレースピリオド)、例外として認められる理由、猶予期間の優先的取り扱いの有無については国により異なるので、初めから救済措置に頼ることは回避したい。
[49]むしろ、適切なポイントで特許出願をしていない/特許権を取得していないことが、マイナス評価され、事業価値を低く算定する材料に用いられることもありうる。
[50]そのため、目が肥えた大企業の眼鏡に適うような、第三者に有効に権利行使しうる特許権を創り込む必要がある。
[51]例えば、公正取引委員会の作成した「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/jun/190614.html[最終アクセス:2019 年11 月27 日])等参照。

 
(傍点は省略しました。PDFファイルでご覧ください)
 
 
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