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あとがきたちよみ
『交通事故医療法入門』

 
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小賀野晶一・古笛恵子 編
『交通事故医療法入門』

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はしがき
 
 交通事故紛争処理実務では,被害者に出現したとされる傷害や後遺症がはたして事故によって発生したか,あるいはそもそもその傷害・後遺症はどのようなものか,紛争処理において被害者の症状をどのように捉えたらいいか,などが主な争点となっており,訴訟の実態は医療訴訟といえるものになっている。本書では交通事故において問題となる医療を「交通事故医療」と捉え,考察の主たる対象とする。
 本書は,弁護士,司法書士,損保関係者,裁判官など,交通事故紛争処理を担う実務家のうち,比較的経験の浅い専門家(以下「初心者」という)を対象に,紛争処理の知識・技術と交通事故医療に関する知識・情報を提供する入門書をめざしている。
 昨今の交通事故事件は,医学的知見を前提とした法的判断が求められることが多々ある。医学と法学は分野としては異なるが,前提となる医学的知見を正しく理解したうえで法的判断を行わないと,およそ公平な損害の分担を実現することはできない。この意味において両者は密接に関連している。私どもは被害者救済のために何ができるのかを問い,交通事故事件における公平な損害の分担を実現することを願っている。本書は交通事故紛争処理実務の初心者を主たる対象にしているが,ここで整理される基本知識・技術は,中堅として活躍している専門家や交通事故損害賠償法の研究者にも有用であろうと確信する。
 本書の構成は,理論編,実務編,手続編に分かれる。第1 に,理論編では,交通事故訴訟の実態を踏まえ,交通事故医療実務において解決を迫られている法と医との関係について検討し交通事故医療法を提唱した。第2 に,実務編(総論)では,交通事故紛争処理実務の初心者に必要な法と医療の基本的な知識及び技術について,総論的に解説した。そして,これを受け,実務編(各論)では,傷害・後遺症のうち,裁判において現在最も問題となっている傷病を選び,それぞれにおいて何が問題なのか,紛争処理にあたって何をすればよいかについて解説した。第3 に,手続編では,実務編と連携し,訴訟の流れを考慮し,どのような準備をし,対応すればよいか,紛争処理の心得,手順などについて具体的に解説した。
 本書の内容である法学,医学の基礎知識については,先学および関係学界の教示を得ている。感謝とともに特記しておきたい。
 本書は企画から現在までに相当の年月を要した。交通事故医療の実態と紛争処理の要点をどのように整理,記載するか,医学書にある人体図等の引用に著作権法の問題はないかなどがその主たる要因である。このなかで,本書を出版することができたのは,勁草書房編集部の竹田康夫氏に企画の初めから原稿のとりまとめまですべてにわたりご尽力を賜ったことによる。本書出版の意義をお汲み取りいただき編集上の工夫をしていただいた竹田氏に対し,執筆者を代表して心より御礼を申し上げます。
 
2021 年5 月5 日
編者
小賀野晶一
古笛恵子
 
 
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