あとがきたちよみ
『アジア開発史』

About the Author: 勁草書房編集部

哲学・思想、社会学、法学、経済学、美学・芸術学、医療・福祉等、人文科学・社会科学分野を中心とした出版活動を行っています。
Published On: 2021/9/27

 
あとがき、はしがき、はじめに、おわりに、解説などのページをご紹介します。気軽にページをめくる感覚で、ぜひ本の雰囲気を感じてください。目次などの概要は「書誌情報」からもご覧いただけます。
 
 
アジア開発銀行 著
澤田康幸 監訳
『アジア開発史 政策・市場・技術発展の50年を振り返る』

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日本語版へのまえがき
 
 本書は,アジア開発銀行(ADB)により2020 年1 月に出版された“Asia’s Journey to Prosperity: Policy, Market, and Technology over 50 Years” の全訳である.原書は,過去50 年にわたるアジアの発展を包括的に振り返り,その成功の要因を論じることによりアジアおよび世界の課題解決にも資するという目的をもって,中尾武彦前総裁のリーダーシップのもと数多くのADB スタッフの英知を結集してまとめられた.
 アジア・太平洋地域における驚異的な経済発展の成功要因が何であったのかについては,すでに数多くの書籍・論文が出版されているが,中央アジアと太平洋島嶼国を含む対象地域の広さと歴史的議論を含む対象期間の長さ,そしてジェンダー,気候変動,海洋汚染,人口高齢化,人工知能などアジアや世界における新しい潮流にも目を向けており,ADB スタッフが執筆に直接関わったことで,類書にはない「包括性」「革新性」「政策的含意の深さ」を持っていると自負している.
 原書が出版された2 カ月後3 月11 日にWHO のパンデミック宣言がなされ,以来,新型コロナウイルス感染症のまん延がアジア開発途上国そして世界経済に大きな打撃を及ぼしてきた.ADB の経済調査・地域協力局においてもOne ADB のスローガンのもと全行的な協力・連携によってコロナ禍の経済的影響の評価や債務持続可能性分析を行い,コロナ対策支援プログラムのために衛星画像を用いた貧困マップを構築・食料配布プログラムに活用するなど,エビデンスに基づいた政策立案(EBPM: Evidence-Based Policy Making)のために必要なさまざまな分析と政策支援を行ってきた.多様な分野でのコロナ対策に対応するため,2020 年に作成・出版したポリシーブリーフやワーキングペーパー・政策レポートなどは100 編を超えた.また,コロナ危機対応としてADB 加盟メンバーが行ってきた巨額の財政・金融政策の全貌を把握するため,昨年4 月にADB COID-19 Policy Database という政策動向捕捉のためのデータベースを構築・公開し,月に2 回の頻度でそれを更新している2).最新のデータによれば,アジア・太平洋地域におけるADB の開発途上加盟国(DMC)の総政策規模は,公表ベースで3.7 兆米ドルにも及ぶ.これは,地域全体のGDP 比で15.4%に相当する大規模なものである.
 2021 年7 月にADB が出版した『アジア経済見通し2021 年版(Asian Development
Outlook 2021)』の7 月改訂では,2020 年のアジア開発途上国の経済成長率はアジアの開発途上国における2020 年の経済活動はマイナス0.2%の成長にとどまることとなり,過去50 年で初めてのマイナス成長を記録することとなった.しかしながら,同地域が新型コロナウイルスパンデミックの影響から回復に向かうことで,2021 年は7.2%まで上向くと予測している.今現在,アジアの開発途上国の見通しには改善がみられ,ワクチン普及に関する最近の進展によってさらなる成長回復がみられている.
 したがって,本書が読み解くアジアの50 年の成功については大きく変わることはないと考えている.しかしながら,コロナ禍を経て読者のよりよい理解に貢献し,アジアのみならず世界におけるコロナ禍からの復興と残された開発上の課題解決への建設的な議論の一助とすべく,「アジアにおける災害レジリエンス」という章を新たに作成した.本補章は,『アジア経済見通し2019 年版』の特集号「災害に強い地域の実現に向けて」と2020 年にADB が出版したコロナ禍関連のさまざまな政策分析を土台としながら新たに書き下ろしたものである.本補章の英語版はADB ウェブサイト〈https://www.adb.org/publications/disaster-resilience-asia〉,日本語版は,勁草書房のウェブサイト〈https://www.keisoshobo.co.jp/files/504848/disasters.pdf〉から無料で閲覧することができる.
 本邦訳の作成においては,ADB が契約した株式会社コングレ・グローバルコミュニケーションズが当初の翻訳を行い,ADB の現役日本人職員(当時)がそれぞれの専門分野の知見に基づきながら分担して邦訳を精査し,澤田が邦訳チーム全体を統括した.翻訳に参加した職員は以下のとおりである(50 音順).池田優希,出井里佳,大井央久,吉川愛子,久保徹,久保田真,齋藤法雄,坂本耕,篠崎薫廣,高久竜太郎,田中そのみ,谷口潔,冨永二郎,萩原景子,山寺智,山野峰,山本直人,吉村充則.もし本書が少しでも読みやすくなっているとすれば,それはこれら職員の献身的な作業のおかげである.すでにADBを離れている中尾前総裁からも多くのコメントをいただいた.
 邦訳作成と日本語版出版の調整において,ADB 駐日代表事務所(JRO)の児玉治美代表,河津佳子業務調整・広報担当官にお世話になった.原著の出版後,Hal Hill 教授,Anne O. Krueger 教授,大塚啓二郎教授,末廣昭教授,Peter C. Timmer 教授より数多くの貴重なコメントをいただいた.また,大変な光栄なことに原著に対して第15 回樫山純三賞(特別賞)を賜った.訳語のいくつかの点にあたっては,早稲田大学の有村俊秀教授にご助言いただいた.また,勁草書房の宮本詳三氏には企画から編集・出版までの全過程をとりまとめていただいた.記して深く感謝したい.なお,ありうる誤りは監訳者の責任である.(注は割愛しました)
 
2021 年7 月24 日
世界最長のロックダウンが続くマニラにて
アジア開発銀行チーフエコノミスト兼経済調査・地域協力局長
澤田 康幸
 
 
まえがき
 
 1966 年にアジア開発銀行(ADB)が創設されたとき,アジア・太平洋地域は非常に貧しかった.当時は,人口が多く,しかも増加しつつある地域の人々に,いかに食料を行きわたらせるかが最大の課題であった.半世紀後,アジアは世界のダイナミックな発展の中心的な位置にある.
 50 年前,アジアの産業化と開発一般についての見方は悲観的であった.日本は19 世紀後半に近代化を始めており,当時は戦後の高度成長のただ中にあったが,アジアの中ではおおむね例外だと考えられていた.中国は,文化大革命の混迷に入っていくところであった.インドは,社会主義的な考え方と中央計画経済,輸入代替政策によって,成長を阻まれていた.のちに新興工業経済地域(NIEs)と呼ばれることになる,香港(Hong Kong, China),韓国,シンガポール,台湾(Taipei,China)は成長を始めていたが,その未来はまだ不確かなものであった.ASEAN は1967 年に,当初の5 カ国のメンバーによって地域の平和を促進するために創設された.しかし,経済改革と「雁行的発展モデル」による力強い成長は始まっていなかった.中央アジア諸国はソ連の一部であった.地域の多くの国が,紛争や政治の不安定性に苦しめられていた.
 過去50 年の地域のパフォーマンスは,経済成長,産業構造の転換,貧困削減,保健や教育の改善など,いずれの指標でみても予想をはるかに上回るものだ.アジアの開発途上国(ADB の加盟国であるアジア・太平洋地域の46 カ国・地域,ADB からの借入卒業国であるNIEs を含む)の1960 年の1 人当たりのGDP(2010 年米ドルベース)は,平均で330 ドルであったが,2018 年にはそれが4,903 ドルと15 倍になった.その間に世界全体の1 人当たりのGDP の増加は3 倍にとどまったので,アジア途上国の世界のGDP に占めるシェアは4%から24%にまで拡大した.地域の先進国である日本,オーストラリア,ニュージーランドを含めると,世界のGDP に占めるシェアは13%から34%に拡大している.
 何がこのような戦後のアジアの経済的成功の理由であったのか.
 第1 章で論じているように,本書の立場は,アジアに,他の地域とは異なるような特別な発展モデル,つまり「アジア・コンセンサス」のようなものがあったわけではない,ということである.アジア各国が行ってきた政策は,いずれも標準的な経済理論で説明できるし,いわゆる「ワシントン・コンセンサス」が処方する政策ともあまり変わりはない.違いがあるとすれば,アジア各国はこれらの政策を実施するにあたり,実践的なアプローチを用いたということであろう.
 すなわち,各国は,輸入の自由化,外国からの直接投資への国内の開放,金融セクターの規制緩和,資本移動の自由化などの政策を,より「漸進的」でかつ「段階を踏む形」で行ってきた.例えば,資本流入の自由化は,まずは国内の金融セクターが十分に発展してから行うべきということだ.
 

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 過去の半世紀にわたり,多くのアジアの国では人口が増加し,そのプロセスで生産年齢人口の比率が上昇することによる「人口の配当」を受け取ることができた.この期間には,先進国が開放的な貿易・投資を進めてきたという意味で,アジアは良好な対外環境に置かれてきたということもいえる.また,アジア各国は,技術進歩やグローバリゼーションからも大きな恩恵を受けてきた.特に近年においてそうであった.さらに,いわゆる先進国への「収斂」のプロセスによって,低所得からより早い成長をする機会が与えられた.
 しかしながら,有利な人口動態や対外環境があれば経済成長が自動的に進展するわけではない.本書では,アジアの戦後の経済的成功は,基本的に,効果的な政策と強い制度(政府の組織,経済体制,法的枠組みなど)によってもたらされたという立場をとっている.成功は,政策を選択するにあたっての政府のプラグマティズム,自国や他国の成功や失敗の経験から学ぶ能力,改革を導入する際の決断力にも助けられた.多くの国で,明確な国の将来像を先見力のあるリーダーが提唱し,それを社会の多くの階層が共有し,有能な官僚層が支えたことも大きかった.
 国ごとに政策の組み合わせやタイミングなどに違いはあったし,時には政策が後退したり逆戻りしたこともあったが,成功したアジアの国々は,持続的な成長に必要な政策をとってきた.この50 年の間に,各国は,①開放的な貿易投資政策を採用し,②農業の近代化と産業構造の転換を促進し,③教育や保健に投資をし,④高いレベルの国内貯蓄を動員して生産的な投資を行い,⑤電気,運輸などのインフラを整備し,⑥健全なマクロ経済政策を追求し,⑥貧困削減と格差是正のための政策を実施してきた.
 

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 私は,長い間,アジアの経済的な成功についての見方が単純すぎる面があるのではないかと感じてきた.多くの学者,特にアジア域外の学者たちの議論の中には,国による介入とガイダンスの役割を強調しすぎる傾向がみられる.しかし,アジアの成功は,本質的には,市場と民間セクターを成長のエンジンとすることでもたらされてきたものだ.実際,各国の経済は,国による介入から市場志向に政策を転じてからより高い成長を始めている.もちろん,政府も必要な分野で,市場を支えるような積極的な役割を果たしてきた.
 市場志向の政策は,多くのアジア諸国の商業や技術の長い伝統にも根差している.例えば,日本の明治時代(1868 〜1912 年)には,政府が欧米をモデルに近代的な制度を導入し,産業の分野でもパイロット事業を行ったが,多くの鉄道は日本国内の民間セクターによって建設されている.電気もずっと民間会社が供給してきた.中国やインドにおいても,20 世紀の初頭には,繊維,紙,薬品,鉄鋼,造船などの分野で,民族資本が主導する産業が盛んだった.
 多くのアジアの国が,工業化を促進するために,特定の産業をターゲットに置く「産業政策」をとってきた.そのためには,関税,補助金,信用供与の優遇,税制上のインセンティブが用いられた.それらの政策の中には,成功したものもあれば,失敗したものもある.時間を経るにしたがい,アジア各国の産業政策は,より介入の色彩の弱い,研究開発支援のような政策に移行していった.産業政策は,もしも適切に使われなければ,企業がいわゆる「レントシーキング」によって政策を自分の都合のよいものに変えさせるなど,不公平な競争や非効率を招くことになる.しかし,今日では多くの論者が,もしも適切に使われれば,特に開発の早い段階で,産業政策は有効な役割を果たすということに同意している.実際,現在の先進国である,フランス,ドイツ,米国でも産業政策は役割を果たしてきた.産業政策は,それが競争を促進する面を持っているときに,また,より透明性のある形で,明確なターゲットと実施期限を定めて行われるときに,成功する可能性が高くなる.
 アジアの「輸出志向」の貿易政策も,しばしば過度に強調され,また誤解を生んできたと考えている.日本やNIEs は早い時期から輸出志向の政策を採用している.しかし,このような政策は,むしろ「対外志向」の政策と呼ばれるべきである.というのは,輸出の促進は,より多くの資源(石油や鉄鉱石など)や資本財や技術の輸入を行うために,必要な外貨を獲得するという目的があったからだ.実際,日本は,1960 年代半ばまでは,継続的に国際収支上の経常赤字をかかえており,ときにそれを抑制するためにマクロ経済政策を引き締めなければならなかった.多くのアジアの国がNIEs に続き,「輸入代替」政策から転換していった.自国の産業育成のために輸入品を国産品で代替する輸入代替の戦略は,第二次世界大戦後,世界の多く途上国が採用していた.社会主義の影響もあったし,植民地支配から独立を遂げた国々は自力発展を望んでいた.しかし,この戦略のもとでとられた保護貿易,競争の欠如,過大評価された自国通貨の為替水準は,深刻な非効率を生み,特にラテンアメリカでそうであったように,ときに国際収支危機にすらつながった.
 

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 私は,ADB の加盟国の経験に基づいてアジアの戦後の成功の理由を振り返るのは,ADB にとって大事な仕事だと考えた.2015 年にADB 自体の50 年史『アジアはいかに発展したか:アジア開発銀行がともに歩んだ50 年』を編纂し始めたときから,すでにアジア各国の開発の歴史をセットにして書くという構想はあった.
 実際に本書『アジア開発史』を書き始めたのは,2017 年にADB の50 年史が刊行されてからであり,完成までにおよそ3 年を要したことになる.本書は,50 年にわたるアジアの多様な面からなる開発と変遷を14 のテーマから論じている.強調されているのは,政策,市場,技術発展だ.アジア・太平洋地域にあるADB の46 の開発途上加盟国・地域の経験を対象としているが,必要に応じて,ADB の域内の先進加盟国であるオーストラリア,日本,ニュージーランドの経験も加えている.第1 章は,それに続く14 章の要約の役割を果たしている.
 よく知られた,世界銀行による1993 年の『東アジアの奇跡』など,アジアの経済発展に関する他の多くの書物に比べてみたとき,本書にはいくつかの特徴がある.
 第1 に,「東アジアの奇跡」が対象としたNIEs やいくつかの東南アジアの国(インドネシア,マレーシア,タイ)を超えてアジアの途上国全体を取り扱っており,また,時間的にも,アジアの急速な変遷を戦争直後から現代に至るまでカバーしている.したがって,中国,インド,カンボジア,ラオス,ベトナム,中央アジア諸国における中央計画経済から市場志向改革への転換とその後の力強い成長が取り上げられている.バングラデシュ,フィリピンなどアジアの多くの国が成長を加速したのも2000 年代になってからだ.2008 年から2009年の世界金融危機の後も,NIEs を除いたアジアの途上国は平均で年率6%程度の成長を維持しており,これは経済の規模が12 年間で2 倍になるスピードだ.
 第2 に,本書は,アジアや世界における新しい問題やトレンドに目を向けている.すなわち,気候変動,海洋汚染,人口高齢化などを取り扱っている.同時に,1997 年から1998 年のアジア通貨危機や世界金融危機の後の政策対応にも触れている.また,グローバル・バリューチェーン,人工知能などの新技術の影響,新しいサービスの重要性と多様性なども分析している.
 第3 に,アジア,北米,欧州の広範な加盟国を出身とする多くのスタッフが本書の編纂に加わったことにより,本書は各国の経験への深い理解とバランスのとれた見方に支えられたものとなった.さらに,ADB で貸付などの実務に関わっている多くのスタッフが,保健,教育,ジェンダー,農業,エネルギー,運輸,水,環境と気候変動,地域協力・統合などを扱う章の記述に貢献した.
 本書を書くにあたっては,各章の記述をできるだけ読みやすく,興味深いものにすることを心掛け,技術的にすぎる議論は避けて,多様なエピソード,データ,各国の事例を盛り込んだ.一方,本書は,アジアの政策に影響を与えた,経済発展に関する理論の変遷も論じている.
 

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 多くの人が21 世紀は「アジアの世紀」だと言っている.私自身,アジアの成功と経済的な存在感の拡大には大いに力づけられているが,一方で,「アジアの世紀」の考え方にはいくつかの慎重な見方をしている.まず,アジアは世界の人口の半分以上を占めるのだから,2050 年までに世界のGDP の半分を超えることになっても,それほど驚くようなことではない.何より,アジアの途上国にはまだまだ多くの課題が残されている.根強く残る貧困,拡大する所得格差,大きなジェンダーのギャップ,環境の悪化,気候変動(特に太平洋諸国に深刻な影響を与えている)などがそうだ.医療や教育,電気,安全な飲料水などの普及もまだ不十分だ.自己満足の余地はない.
 過去50 年にわたり,アジアは,いくつかの国における戦争や紛争の期間を除けば,おおむね平和を保ってきた.平和と安定がアジアの経済的成功の基礎をなした.各国は,アジアの域内・域外における友好を促進し,協力関係を高めていくことに引き続き最大の努力をしなければならない.
 アジアの経験とイノベーションは目覚ましい.しかし,欧米が過去5 世紀にわたって発揮してきたのと同様の影響力を持つようになるには,まだしばらくの時間が必要だろう.アジアは,その制度をさらに強化し,世界の科学や技術の発展にさらに貢献し,国際的な課題に取り組むうえでの責任をさらに果たし,自分たちの考え方をさらにしっかりと伝えていく,という努力を今後も続けていかなければならない.私は,アジアが世界でより大きな役割を果たすことが,より公平で,よりまとまりがある,より繁栄する国際社会を築くことにつながることを期待している.
 

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 最後に,本書の編纂にあたったADB のチームのメンバー,それを率いた幹部たち,事務局スタッフ,各局のスタッフ,支援をしてくれた外部のコンサルタントの大きな貢献とハードワークに心から感謝したい.
 澤田康幸チーフエコノミスト兼経済調査・地域協力局長,同局のシニア経済アドバイザーのジュゾン・ジャンは本書編纂チームをリードし,自ら多くの章の執筆を行った.総裁直属のシニア・アドバイザーであるニニー・コーは,本書の内容を精査し,編纂プロセスの調整を行った.レア・スムロンは,図表や資料の整理などに携わった事務局を率いた.この4 人とそのほか過去3 年の間に本書の編纂に携わった人々のたゆまぬ献身によってこそ,本書の出版が可能になった.
 本書が,過去の50 年にわたるアジアの開発の歴史を包括的に振り返るという当初の目的を果たし,そのような歴史についての読者のよりよい理解に貢献し,そして,アジアおよび世界の残された開発上の課題に取り組むことにも資するような,活発な議論を促すことを期待したい.
 
2020 年1 月
アジア開発銀行総裁・理事会議長
中尾 武彦
 
 
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