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ウェブ連載版『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』 連載・読み物

ウェブ連載版『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』第40回

1月 25日, 2022 松尾剛行

 
5年ぶりの更新! どんどんあたらしい問題がでてきます。[編集部]
 

Vtuberと名誉毀損――メタバースに関する法律問題の一部を考える

 

はじめに

 
 しばらくの間、ウェブ連載版『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』を休んでいましたが、その間に、従来の対象者(被害者)の代理、表現者(加害者)の代理、プロバイダ・プラットフォームの代理に加え、(代理人の弁護士の先生に依頼されて)「(私的)鑑定意見書の提出」の業務が増える等、新たな展開が生じています。そのような新たな展開の1つがVtuber関連の案件に関する寄稿であり、筆者は平成時代から関連する案件を経験し、東京地裁でVtuberを代理して国際動画共有プラットフォームを訴えた事案について、特別に依頼者から守秘義務解除の同意を得て、情報法制研究に寄稿しました(注1)。
 
 現在注目されるメタバース法務の一部の法律問題を検討する一環として、また、『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』第3版に向けた執筆作業の一環として、Vtuberと名誉毀損(名誉感情侵害、プライバシー侵害を含む)についてまとめたいと思います(第3版執筆作業なので、以下、書籍版と同様の「だ・である」体となります)。
 

1 YouTuberと名誉毀損

 
 まず、VtuberはYouTuberの一種であることから、前提としてYouTuberと名誉毀損が問題となる(注2)。
 
(1)YouTuberと特定・同一性
 
 YouTuberは本名を用いず、芸名(ハンドルネーム)を用いることが多い。そこで、ある投稿がYouTuber本人に関する投稿なのか否かが問題となることがある。
 
 東京地判令和3年1月29日29062286は、YouTuberである対象者が動画配信サイトで「B」というハンドルネームで動画を投稿している者であると認められるところ、Bについて述べる掲示板の投稿は、対象者を対象としたものと認められ、また、スレッドの閲覧者においてその同定は可能であるというべきであるとした。
 
 芸名をXとする芸能人(本名X’)について「Xは不倫している」等と投稿すれば、本名X’を使わなくとも、そして本名を公表しておらず誰もX’という本名を知らなくとも、れっきとしたXに対する名誉毀損である(注3)。そして、少なくともYouTuberについては、上記のように、芸名(ハンドルネーム)を用いて行う名誉毀損について同人に対する名誉毀損としているが、これは正当である(注4)。
 
(2)動画の内容について一定の論評が生じることは甘受すべき場合があること
 
 YouTuberに関する名誉毀損法(上記のとおり、名誉感情侵害等を含む)上の特徴としては、YouTuberが自ら積極的に動画を配信しており、その動画の内容について一定の論評が生じることにつき、これを甘受すべき場合があることである。
 
 例えば、東京地判令和3年3月5日29064055では、YouTuberである対象者がチュロス作成の様子を自ら「失敗」「得体の知れない形のチュロスが誕生した」等と評していたところ、掲示板において、別の人が「チュロスはウ○コ?!もう少し美味く作れないの?」という投稿をしたところ、表現者がこれを引用し、表現者自らも対象者が「ついに食べるものなくてうんこ食べ始めたのかと思ったw」と投稿したことについて、「原告(注:対象者)自身も本件チャンネルの閲覧者からチュロスの出来について否定的な感想が述べられることを想定して本件動画を投稿したものと窺われること、「と思ったw」とも記載されており、原告に対する人身攻撃といえる程の表現が用いられているものでもないことからすれば、社会通念上許容される限度を超えた侮辱には当たらない」と判断がされている。
 
 同様に、東京地判令和3年3月31日28292874は、YouTuberである対象者の食レポについて、「店内が暗すぎるから食べ物が見えづらいし編集時点で少しは明るくしなかったのはわざと??食べる顔も気持ち悪くて味が伝わってこない」という投稿について、確かに、「食べる顔も気持ち悪い」という表現は、いささか相当性を欠くものとはいえるが、社会通念上是認できない程度であるとまでは認められないとした(注5)。
 
(3)それを超えた人格攻撃については、YouTubeで動画を公表しているというだけの理由で甘受義務が生じるものではないこと
 
 しかし、このような動画という作品に対する批判を超えた人格攻撃については、YouTubeで動画を公表しているというだけの理由で甘受義務が生じるものではない。
 
 例えば、上記東京地判令和3年3月31日は、YouTuberである対象者について頭弱い、気持ち悪い等と侮蔑することについて、確かに、対象者が作成した動画の内容に関する批判ないし批評であれば、甘受すべき立場にはあるといえるが、人格を否定したり容姿を執拗に侮辱することについてまで受忍すべき立場にはないとしている。
 
 また、上記東京地判令和3年3月5日も、YouTuberである対象者に対する「クソがつくほどつまんない動画あげてよく生きていけるよね?!」との投稿について、対象者がYouTuberとして活動し、チャンネルに動画配信等を行うことで収入を得ていることなどの事情を併せ考慮すれば、社会通念上許容される限度を超えて、対象者の名誉感情を侵害するものと認められるとした。その際は「つまらない」との評価に留まっていないという点を社会通念上許容される限度を超えたことの重要な理由としている。
 
 要するに、YouTuberは動画がつまらないといった批判は甘受すべきだが、それを超えてYouTuberが気持ちが悪く頭が弱いとか、よく生きていけるものだ等と人格に踏み込んだ攻撃をすれば、(もちろん、一般の対象者と同様に受忍限度を超えたものであることが前提であるが、)そのような行為について違法との判断を免れ得ないのである。
 
(4)動画の転載
 
 なお、動画の単純な転載等については、著作権等の問題(注6)となることが多く、ここで取り上げないが、名誉毀損等の問題となることもある。
 
 もともと、転載による名誉毀損については、大阪地判平成25年6月20日裁判所HP(ロケットニュース事件)が有名である。同事案は、ある男性が上半身裸で街中を歩き、マクドナルドに入店して注文をした後、警察官に任意同行を求められ、交番内にて注意を受けたこと、その男性がその一連の模様を撮影し、「ニコニコ生放送」に動画配信したところ、当該動画をニュースサイトがリンクを貼って転載し、それに対し非常識で、周囲に迷惑をかけるものであったなどの意見ないし論評を表明したことについて、いわゆる公正な論評の法理に基づき人身攻撃にまで及んでいるとはいえず、本件動画の内容や撮影場所なども考慮すれば、意見ないし論評の域を逸脱しているとはいえないとして名誉毀損としての違法性を否定したものである。
 
 ところが、東京地判令和1年12月25日29058447は、食品会社の経営者がナチスもどきの格好をしつつ、裸で、かつ、乳首に洗濯バサミを付けている4年前の動画を動画共有サイトにあげていたところ、そのスクリーンショットに「原告の経営する会社名及び原告の氏名を掲載した上で、「X社長(注:原告)自らがネットに公開した宴会芸だそうです。」と記載したことについて一般の閲覧者からすれば、食品会社の経営者の立場でありながら、異様な扮装をしている対象者を見て、常識に反する異様な人物であって、信頼できないとの印象を持つことは十分にあり得るといえる。したがって、本件投稿は、対象者の社会的評価を低下させるものといえるとした。なお、(対抗言論の論点のところだが)唐突に本件投稿記事が掲載されており、対象者を揶揄する意図以外の目的は看取することができないと認定されている。
 
 これらの整合性をどのように考えるべきだろうか。基本的には、名誉毀損についていえば、YouTuberが自ら公表した動画内の事実関係については、基本的に真実性が存在する。そうすると、当該事実関係が社会的評価を低下させるものであっても、真実性があることを前提に、公共性・公益性等を判断することになることから、その結果として、上記ロケットニュース事件のような判断がされることは比較的多くなるといえるだろう。ただし、いわゆる忘れられる権利(最決平成29年1月31日民集71巻1号63頁参照)の議論等を踏まえると、少なくとも相当程度前の「若気の至り」というような動画について、それを転載する行為について、(真実性はあるとしても)公共性・公益性等が否定されるという判断がされることはあり得るところ、上記東京地判令和1年12月25日はそのような事案と理解することが可能である。
 

2 Vtuberと名誉毀損(注7)

 
(1)Vtuberと特定・同一性
 
 Vtuberにおいて問題となるのは特定・同一性である。上記の通り、芸名(ハンドルネーム)を使って、YouTuberを誹謗中傷するという事案においては、まさに芸能人をその芸名を使って誹謗中傷するのと同様である。ところが、Vtuberの場合には、「キャラ設定、脚本等を考える人」「アバターを作る人」「アバターを(モーションキャプチャー等で)動かす人」「声をあてる人(但しそのままの声とは限らない)」(それぞれのカテゴリーで複数の人が関与する可能性もある)等の多数の人が関与することがある。そこで、VtuberAについて誹謗中傷がされた場合において、Aへの関与者が複数人存在する場合に、「誰」に対する誹謗中傷なのかは必ずしも明確ではない。
 
 ただしVtuberも、1人が「中の人」であり、特定のVtuberと現実の自然人1人が1対1で対応することもある。例えば、東京地判令和3年6月8日2021WLJPCA06088006(注8)や東京地判令和2年12月22日29063051はそのような事案について同一性を肯定している。
 
 同様の事案であるが、詳細を述べたものに、東京地判令和3年4月26日2021WLJPCA04268004がある。この判決では、対象者が所属する芸能プロダクションであるプロダクションには多数のVTuberがタレントとして所属しているところ、その中で「B」として活動しているのは原告のみであり、また、上記プロダクションがVTuberのキャラクターを製作する際には、当該キャラクターとして活動する予定のタレントとの間で協議を行った上で、当該タレントの個性を活かすキャラクターを製作していること、「B」の動画配信における音声は原告の肉声であり、CGキャラクターの動きについてもモーションキャプチャーによる原告の動きを反映したものであること、「B」としての動画配信やSNS上での発信は、キャラクターとしての設定を踏まえた架空の内容ではなく、キャラクターを演じている人間の現実の生活における出来事等を内容とするものであることも考慮すると、VTuber「B」の活動は、単なるCGキャラクターではなく、原告の人格を反映したものであるというべきであるとした。
 
 これはあくまでも事例判断であるが、少なくとも、1人の「中の人」が存在し、アバターの演じる内容にその人格が反映されており、アバターが「覆面レスラーの覆面」のような位置づけに過ぎないのであれば、同一性(特定)に問題がないことは、裁判例によっても示されている。
 
 問題はそれ以外である。例えば、「デマをばら撒いている」として、脚本の内容面を問題としているのであれば、「その脚本家がデマといえるような脚本を書く人だ」として、複数の関与社のうちの脚本家に対する不法行為と構成する等、具体的な内容に応じて個別の関与者との同一性を認めていくということもあり得る。
 
 ただ、そういうものではなく、例えば、単に「VtuberA死ね」と繰り返す(名誉感情侵害)場合等には、果たして関与者全員に対する名誉感情侵害と言えるかは難しい問題である。
 
 とはいえ、他の理論で同一性が認められない場合に、関与者全員に対する権利侵害性を否定すると、Vtuberは架空の人物だから誹謗中傷をして構わないということになりかねず、メタバース時代において重要な社会活動の場と目される仮想空間が「自由に誹謗中傷できる空間」となりかねない。その意味では、現行法の下でメタバースにおける活動を守るためには、(他の理論構成で関与者の誰かとの同一性を認められない限り)関与者全員に対する権利侵害性を認めるしかないのではないか(注9)。
 
(2)プライバシー
 
 Vtuberとの関係で重要なのはプライバシーである。すなわち、Vtuberの「中の人」が公表されていない場合に、熱狂的なファンがこれを突き止めて公表してしまうことがよく見られる。
 
 上記東京地判令和3年6月8日はVtuberのファンスレッドにおいて、そのVtuberの中の人であるとして、顔写真を添付した投稿をしたことで、顔写真の人物(対象者)がVtuberを演じる者であると考えるのが通常であるとした。そして、プライバシー侵害の有無について、以下のとおり論じてこれを肯定した(注10)。「そもそも着ぐるみや仮面・覆面を用いて実際の顔を晒すことなく芸能活動をする者もいるところ、これと似通った活動を行うVチューバーにおいても、そのVチューバーとしてのキャラクターのイメージを守るために実際の顔や個人情報を晒さないという芸能戦略はあり得るところであるから、原告(注:対象者)にとって、本件画像が一般人に対し公開を欲しないであろう事柄であったことは十分に首肯できる。」
 
 上記東京地判令和2年12月22日も、VTuberとして「B」のアバターネーム又はハンドルネームで活動していた原告について、電子掲示板上で、本名や年齢を明らかにした事案について、「本名や年齢は個人を特定するための基本的な情報であるところ、インターネット上で本名や年齢をあえて公開せずにハンドルネーム等を用いて活動する者にとって、これらの情報は一般に公開を望まない私生活上の事柄であると解することができるから、本件投稿は原告(注:対象者)のプライバシーを侵害するものであったと認められる。また、本件全証拠をみても、本件投稿について違法性阻却事由があるとはうかがわれない。」としてプライバシー侵害を認めている。
 
(3)名誉感情侵害
 
 名誉感情侵害につき、東京地判令和3年4月26日は、「片親だから」、「オヤナシだから」、「母親が居ないから」などと、Vtuberとしての行動を原告の生育環境と結びつける形で批判する投稿について、生育環境と結びつけてまで原告を批判する本件各投稿は、単なるマナー違反等を批判する内容とは異なり、社会通念上許される限度を超えて原告を侮辱するものとして、その名誉感情を侵害することが明らかというべきであるとした(注11)。
 
 これに対し、上記東京地判令和3年6月8日は、「Cてまじで慢心すごいわ 成金の品のなさ出てるな」というVtuberに対する掲示板での批判について、Vチューバーとしての配信動画(作品)を見た投稿者が「慢心」、「成金」、「品がない」との否定的な批評をしているとみるのが通常であるところ、作品又はその演者に対する批評として受忍限度を超えるような程度には至っていないとした。すなわち、「配信動画に限らず、芸術・芸能作品に対する批評は最大限保障されるべきであることはいうまでもなく、かつ、不特定又は多数である社会一般に作品を提供する者は、その帰結として肯定的・否定的な批評を受けること自体は当然甘受すべきものであるから、その批評が人身攻撃に及ぶなど批評(意見ないし論評)の域を逸脱しているなどの場合を除き、不法行為を構成するとはいえない」という規範を立てた上で、当該Vtuberは「宝石、宝、お金が大好きで、海賊になって宝を探すのが夢。」とのキャラ設定を自ら行い、高級な食事のエピソードを配信動画のテーマとするなどしているのであるから、「慢心」「成金」「品がない」などの感想を一部の者が抱くことはあり得ることであって、その表現も、原告に対し否定的ではあるものの、対象者個人の具体的なエピソードや家庭環境などをもとに人格攻撃しているものとも解されないから、表現者として作品を提供する原告として受忍すべき限度の範囲内にあるというべきであるとした。
 
 これらの裁判例の結論は一見矛盾しているようにも見えるが、東京地判令和3年6月8日が「個人の具体的なエピソードや家庭環境などをもとに人格攻撃しているものとも解されない」としているように、上記1で述べたYouTuberについてその作品内容そのものに関する一定の批判は甘受すべきだが、それが人格攻撃に到れば、(動画を配信しているという理由で)一般人以上にそれを甘受することが求められるものではない、という法理がそのままVtuberについても適用されたと理解することができるだろう。
 

3 まとめ

 
 Vtuberに関する法律問題のうち、YouTuberにおいて既に論じられている問題同様にとらえ、解決できるものは多い。上記の名誉感情侵害に関する2つの裁判例はこのようなYouTuberのアナロジーで解決できる事案といえる。
 
 上記のとおり、Vtuber固有の重要な問題は、複数の関与者が存在し、他の理論で同一性が認められない場合に、単に「VtuberA死ね」と繰り返す(名誉感情侵害)場合等に、関与者全員に対する名誉感情侵害と言えるかという点であろう。「Vtuberは架空の人物だから誹謗中傷をして構わない」ということであれば、メタバース時代において重要な社会活動の場と目される仮想空間が「自由に誹謗中傷できる空間」となりかねないという点を踏まえ、議論を深めていくべきであろう。
 

(注1)松尾剛行「プラットフォーム事業者によるアカウント凍結等に対する私法上の救済について」情報法制研究10号66頁
(注2)なお、動画上の発言等が名誉毀損になるという態様についてはここで取り上げない。美顔器の箱内に陰毛が入っていた旨を言っている動画について名誉毀損罪の成立を認めた東京高判平成29年12月22日28260372等参照。
(注3)なお、東京地判令和2年12月9日29063348は同人活動を行う者について、X’というハンドルネームを元に、同人が提起したと言っている訴訟は全て虚偽だ等と摘示することが名誉毀損とする文脈で「なお、本件投稿3の投稿者及び一般の読者が、「F」というユーザー名及び「X’」というアカウント名やハンドルネームを用いている原告の具体的な氏名を認識していない可能性は否定できないが、仮に前記投稿者等による当該認識の事実が認められないとしても、本件投稿3が原告の権利たる名誉権を侵害する違法なものであることを左右するものではない。」としている。
(注4)なお、東京地判平成30年9月6日29053522は、作詞活動において実名を付記して公表していた事案で、YouTuberとの同一性を認めた。東京地判令和1年12月24日29058531動画配信サイト上で、そのハンドルネームの者が自分であると示した上で、その氏名、住所等を公開していた事案で、YouTuberとの同一性を認めた。
(注5)なお、同判決は「あんなブサイクな男に全く興味があるわけ無いしナルシストはキモい」について、「直前の投稿である815番の「Cって登録者のこと「オレにみんな興味もってる!」って思ってるみたいだけど結局みんなディズニーに興味あるだけでお前に興味ないから。」という投稿に続けたものであり、原告に興味がないという投稿に賛意を示したものであるといえる。確かに、「ブサイク」であるとか「ナルシストはキモい」などの記載はあるが、直接には原告個人をナルシストであるとか、気持ち悪いなどと指摘するものとまではいえず、その記載は、いささか相当性を欠くとはいえるが社会通念上是認できない程度であるとまでは認められず、原告の名誉感情を侵害するものとまではいえない。」ともしている。
(注6)興味深いものとしてゲーム攻略情報(に関するグループチャット上の投稿)の著作物性が問題となり、動画(ツイキャス上の配信)が著作権侵害とされた東京地判令和3年10月18日裁判所HP等がある。
(注7)なお、Vtuberではないが、YouTube動画において声のみ出演する対象者についての「年増女が年甲斐もなく若い男への片思いに堕ちちゃっただけだろ 恥ずかしい それで大事な子供二人も失ってあげくその若い男も他の女とせっせと子作りに励んでいたという 今頃どんな気持ちでいるんだろうね 悲しいなあ」という投稿について、名誉毀損を認めた東京地判令和3年3月17日29063715も参照。
(注8)「「C」というVチューバーとして活動するのは専ら原告であ」るという認定がされている。
(注9)なお、その結節点としてVtuberそのものに人格を認める(法人については法律で法人格を認めているので同様に認める)ということもあり得るが、AIについても議論が始まったばかりである状況で、そこまで一足飛びにいくことには躊躇がある。
(注10)なお、所属事務所との間でも一個人として生身で活動を行うことが禁じられていたことを肯定の方向の事情として考慮している。
(注11)なお、キャラクターとしての「B」に対するものであって原告を揶揄する意図はないという弁解について「発信者が上記のような目的を有していたとしても、そのことから直ちに本件各投稿による原告の名誉感情の侵害が否定されるものではない。」とされた。

 
 
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松尾剛行

About The Author

まつお・たかゆき 弁護士(第一東京弁護士会、60期)、ニューヨーク州弁護士、情報セキュリティスペシャリスト。平成18年、東京大学法学部卒業。平成19年、司法研修所修了、桃尾・松尾・難波法律事務所入所(今に至る)。平成25年、ハーバードロースクール卒業(LL.M.)。主な著書に、『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』(平成28年)、『金融機関における個人情報保護の実務』(共編著)(平成28年)、『クラウド情報管理の法律実務』(平成28年)、企業情報管理実務研究会編『Q&A企業の情報管理の実務』(共著)(平成20年)ほか。