あとがきたちよみ
『高等学校通信教育規程 令和3年改正解説』

About the Author: 勁草書房編集部

哲学・思想、社会学、法学、経済学、美学・芸術学、医療・福祉等、人文科学・社会科学分野を中心とした出版活動を行っています。
Published On: 2022/2/17

 
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小川慶将 著
『高等学校通信教育規程 令和3年改正解説』

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はじめに
 
 通信制高等学校は今、大きな変革期を迎えている。
 今日の通信制高等学校は、自らのペースで学ぶことができるという通信教育の特性を最大限に活かし、スタートラインも目指すゴールもそれぞれ異なる、多様な生徒が学びに向かう場となっており、時代の変化・役割の変化に応じながら、その有り様は劇的に変わってきている。また、近年の情報通信技術(ICT)の急速な進展や、社会全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)化に伴い、高等学校通信教育の質を飛躍的に向上させ得るような新技術を基盤とした、新しい学びの形も次々に生まれてきており、通信制高等学校が魅せる新しい取り組みには、一層の期待が高まっている。
 その一方で、昨今、一部の通信制高等学校におけるずさんな教育実態が次々と明るみになり、通信制高等学校全般に対する社会の信頼を揺るがしかねない状況となっている。こうした事態が、通信制高等学校で懸命に学ぶ生徒や、生徒一人一人に真摯に向き合う教職員をはじめとする、通信制高等学校を支える関係者の努力に疑念が向けられるようなことは決してあってはならず、再発防止に向けた制度改善が急ぎ求められている。
 期待と疑念、その双方に的確に応えていくことができるのか、通信制高等学校の真価が問われている。折しも中央教育審議会等においては、平成31 年(2019 年)4 月の諮問を受けて、通信制課程の在り方に関する本格的な検討が行われることとなった。具体的には、中央教育審議会の下に設置された「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」では、高等学校教育全般を見渡した大局的な見地からの検討がなされるとともに、文部科学省初等中等教育局の下に設置された「通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議」では、上記ワーキンググループの検討状況を踏まえながら、専門的・実務的な観点から高等学校通信教育に特化した検討が行われてきた。こうした検討の結果は、それぞれの会議での審議まとめ(報告書)へと結実するとともに、そのエッセンスは令和3 年(2021 年)1 月の中央教育審議会の答申にも表れている。
 これらを踏まえ、高等学校通信教育規程の改正等を内容とする「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令」(令和3 年文部科学省令第14 号)及び「高等学校学習指導要領の一部を改正する告示」(令和3 年文部科学省告示第61号)が、令和3 年3 月31 日に公布されるに至った。これらの令和3 年改正は、通信制高等学校の設置基準としての性格を有する高等学校通信教育規程について、昭和37 年(1962 年)の制定以来となる概念整理を図るとともに、通信制高等学校で学ぶ全ての生徒が適切な教育環境のもとで存分に学ぶことができるよう、教育課程面、施設設備面、そして学校運営面にわたって多角的な観点から改正が行われており、一部の例外を除き、令和4 年(2022 年)4月1 日から施行されることとなる。
 本書は、こうした令和3 年改正による高等学校通信教育規程に関する改正項目を中心に、改正の趣旨や内容をできる限り簡潔明瞭に解説しようとするものである。このような解説を試みようと考えたのは、著者自ら、文部科学省初等中等教育局参事官(高等学校担当)付に在籍し、高等学校教育行政の一担当者として、令和3 年改正に携わったことに加え、高等学校通信教育を取り巻く法制度の解釈に悩み、過去に発出された文部科学省の通知・通達や行政実例等をひも解きながら、適切と考えられる解釈にたどり着くまでに多くの時間を費やしたことがその背景にある。通信制高等学校に関わる様々な方々から、関係法令を遵守するにあたって、それらをどのように解するべきであろうかと、日々悩んでおられる実態をうかがうにつれ、一担当者として到達した解釈を、関連する資料と併せて示すことでその一助となることを願い、今般の改正の時機を捉え筆を執った次第である。
 本書の特徴は、令和3 年改正の趣旨及び内容を十分に伝えることができるよう、第1 章「概要解説」、第2 章「逐条解説」、第3 章「一問一答」の3 章から構成することとしている。第1 章では、通信制高等学校を取り巻く制度概要や現状を概観した上で、令和3 年改正の背景や経緯・概要をまとめている。第2 章及び第3 章では、令和3 年改正の個別の改正事項について、それぞれの趣旨及び内容を深掘りすることを目的としている。第2 章では逐条形式で各条項の文言に照らしながら詳細な検討を行い、第3 章ではそのエッセンスを一問一答形式で簡潔に解説するよう心掛けた。
 本書の対象は、通信制高等学校の管理職・教職員をはじめ、都道府県教育委員会・都道府県私学担当部署の担当者、地方自治体の教育特区担当者、学校法人の担当者、さらには各学校と連携・協働する国内外の大学・企業・地元自治体等の方々など、通信制高等学校を支え、又は将来支える幅広い関係者を念頭に置くものである。本書を通じて、通信制高等学校を取り巻く制度への理解が深まることで、高等学校通信教育の特性を活かした更なる取り組みの実現に資するものとなれば、望外の喜びである。
 なお、本書の解説は、著者が個人の立場で執筆したものであり、本書に記載した一切の内容及び解釈は、文部科学省の公式見解を何ら示すものではなく、全て著者の個人的見解にとどまるものであることにご留意願いたい。
 本書の刊行にあたり、各種会議の主査・座長の立場から議論を牽引し、高等学校教育改革の推進にご尽力いただいた荒瀬克己先生、全国高等学校通信制教育研究会会長・顧問のお立場から数多くの有益なご指導・ご助言をいただいた賀澤恵二先生、点検調査をはじめ様々な取り組みをサポートいただいたNPO 法人全国通信制高等学校評価機構副理事長の飯島篤先生、さらには、今般の検討・改正の過程において、ご支援・ご協力を賜りました皆様に、改めて心から感謝申し上げます。また、未熟な小生を育て、支えていただいた、塩川達大前参事官、酒井啓至参事官補佐をはじめとする文部科学省初等中等教育局参事官付の皆様にも、深く感謝の意を表します。最後に、本書の刊行に向けて多大なるお力添えをいただいた、勁草書房編集部の藤尾やしお氏に、心からお礼申し上げます。
 
令和3 年12 月
小川 慶将
 
 
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