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青柳英治 著
『専門図書館におけるキャリア形成と人材育成』
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まえがき
わが国での企業を中心とする組織の人材育成は,これまで長期的な視点から行われてきた。しかし,平成期の不況以降,そうした長期雇用の保障と人材育成の比重が漸減し,働く者は個々人で自らのキャリアや能力を高める方法を考える必要が高まってきた。組織の競争力の源泉は営利・非営利の別を問わず「人材」である。そのため,どのような環境下にあっても,人材の確保と育成は不可欠であると言える。非営利組織の一つである図書館も例外ではない。特に,専門図書館は,一部を除き法的根拠をもとに設置されている機関が少ないため,後述するように経済・社会情勢の影響を受けやすい。このことから,経営資源の一つである人材は,組織の存亡をも左右する重要な要素となる。
筆者は,2000年代前半から2010年代前半にかけて専門図書館職員の養成・教育訓練に焦点を当て,その実情把握とあり方を検討してきた。特に,企業内専門図書館の職員を対象に,大学等の教育機関における養成と,就職後の図書館関係団体による教育訓練の二つの視点から検討・考察を行ってきた。その成果をもとに,養成・教育訓練のあるべき姿を著書にまとめて提示できた。その際,教育訓練については,文献調査をもとに図書館関係団体が実施する研修プログラム等を中心に検討を進めた。そのため,専門図書館は組織として職員の人材育成をどのように捉え,実際に取り組んでいるのかを,実証的に検討するには至らなかった。
本書では,前述した課題も含め,専門図書館職員の職務経験と人材育成の状況を明らかにする。まず,専門図書館職員の「職務」と「人材」に着目し,それらを重層的に捉えて検討・考察する。次に,職務と人材の検討・考察結果をもとに,専門図書館職員が「プロフェッション性」を満たし得るかどうかに着目し検討・考察を進める。さらに,人材育成の主体である「組織」に着目し,検討・考察を進める。その上で,専門図書館職員がこれまで修得した知識・技術を,客観的に評価する「仕組み」に着目し,これまで議論され,そのうちいくつかは実現した仕組みを整理・検討する。本書では,こうした五つの点に着目しそれぞれに研究課題を設定する。各章では,これら研究課題を明らかにするための目的を定めて,実情の把握,検討,および考察を行う。その成果を相互に関連づけ,体系化することで専門図書館におけるキャリア形成と人材育成を捉えていく。