著者のクリストフ・ポンセさんからメッセージが届きました。
読者の皆さんへ
この本は「見つめる」ことから生まれました。フィレンツェのウフィツィ美術館での春の一日のことです。私はボッティチェリの絵画《プリマヴェラ》の前に立ち、じっと眺めていました。すると二人の若い女性の眼差しが、画面の内側から自分の方に向けられていることに気がつきました。
とっさに私は、以前から気になっていた別の図像を思い出しました。マルセイユ版タロットの一枚、《恋人》のカードです。カードのなかの若者はまるで、二人の女性の眼差しに惹きつけられて絵画の前にたたずむ私のようです。こうして《プリマヴェラ》は、その秘密をそっと明かしてくれたのです。それから私は本格的な調査にとりかかり、絵画の謎を説明してくれる研究成果にたどり着きました。本書をとおして皆さんは、それを追体験されるでしょう。
奇妙なことに私がウフィツィ美術館を訪れた4月26日は、ロレンツォに愛された二人の女性の一人シモネッタの命日でした。彼女は、多くの詩人や画家たちにも霊感を与えていました。とくにボッティチェリは、フィレンツェの教会内に眠る彼女のもとに埋葬されることを望んだほどでした。本書の執筆に私を駆りたてたのも、また彼女なのでしょう。つぎは読者の皆さんが、ボッティチェリの絵筆によって永遠のものとなった彼女の美しさに魅了される番かもしれません。出版記念イヴェントで、お会いできることを楽しみにしています。
パリにて
クリストフ・ポンセ
日時:2016年2月6日(土) 17:00より
会場:HMV & BOOKS TOKYO 6Fイベントスペース(東京・渋谷)
トークショーの詳細は【こちら】へ。ぜひお越しください。
*たくさんの方のご来場、どうもありがとうござました。