「初期近代インテレクチュアル・ヒストリー研究」フェアに寄せて――ヒロ・ヒライ
各方面から大きな注目を集めているルネサンス・初期近代のインテレクチュアル・ヒストリー研究。それは、歴史学者の時間にたいする感性と哲学者のテクストのなかに入りこむ浸透力で、思想・文学・芸術作品の背景にある「知のコスモス」を描き出す壮大な試み。天才カルダーノや放浪の医師パラケルスス、最後の万能人キルヒャーといった、あらゆる領域で優れた業績を残した人物やその知的世界を読み解くのは、分野横断的なインテレクチュアル・ヒストリーの独壇場です!
『普遍音樂 調和と不調和の大いなる術』
アタナシウス・キルヒャー著、菊池賞訳
工作舎 5,040円 2013年
⇒驚異に満ちたアタナシウス・キルヒャーの伝説的代表作、本邦初紹介! 『普遍音楽』は、17世紀に記された最も重要な論考のひとつであり、バッハやヘンデルら後代の作曲家たちに多大な影響を与えた。しかし、好奇心のかたまりであり、奇事異聞のこよなき愛好者であるキルヒャーの想像力は、音楽史の枠にとどまることがない。彼は彼の時代までに行われていたほとんどの作品形式について、ていねいに論を進める一方、ひとたび古代音楽を俎上にあげると、その空想力と妄想力は全開となる。ナマケモノの歌、歌う魚、猫オルガン、拡声器、盗聴装置、会話する彫像、イオリア竪琴、自動作曲機械などの不可思議な事物が次々に登場。さらに実験的音響論は、「音は光をまねる猿である」という主題のもとに語られ、宇宙の神秘と真理はパイプオルガンの音と構造の中に見出される。
bibliotheca hermetica 叢書『天才カルダーノの肖像 ルネサンスの自叙伝、占星術、夢解釈』
榎本恵美子著、坂本邦暢解説、ヒロ・ヒライ編集
勁草書房 5,300円+税 2013年
⇒医師にして、哲学者、占星術師、ルネサンスの天才ジローラモ・カルダーノの新たなる肖像。ルネサンスの人間と世界を知るための必携書。「どんな仕方にしろ、私の名は残るだろう」。爛熟するルネサンスの文化と思想を映す鏡、天才カルダーノは百科全書的な知を網羅し、諸学に多大な影響を与えました。本書は、文学的な自画像である自叙伝という切り口から、この天才の多岐にわたる活動を統合し、その知のコスモスを描き出す壮大な試み。ルネサンス人の自己認識と世界観を知るための一冊。bibliothecahermetica 叢書、待望の第一回配本!
『西欧古代神話図像大鑑 全訳『古人たちの神々の姿について』』
ヴィンチェンツォ・カルターリ著、大橋喜之訳
八坂書房 6,800円+税 2012年
⇒西欧ルネサンスにおける古代ギリシア・ローマ神話の解釈を知るためには、非常に便利な一冊です。すべての研究者が手元に備えておくべきレフェランス。八坂書房が誇る『大橋喜之コレクション』からの一冊。
『アルベルティ イタリア・ルネサンスの構築者』
アンソニー・グラフトン著、森雅彦・足達薫・石澤靖典・佐々木千佳訳
白水社 7,200円+税 2012年
⇒万能人アルベルティは、レオナルド・ダ・ヴィンチの先駆けとしてイタリア・ルネサンスを体現する芸術家であり文人でした。本書は、彼の生きた時代の知のコスモスを知るためには欠かせない一冊です。トニー作品の本邦第二弾。
『目に見えない病気』
パラケルスス著、澤元亙訳
ホメオパシー出版 3,800円+税 2012年
⇒いま続々と刊行がつづく壮大な『パラケルスス全邦訳プロジェクト』の一端をなす本書は、パラケルススの作品世界でも重要な位置を占め、彼の自然観や医学思想を知るうえで必見の書です。
『普遍の鍵』
パオロ・ロッシ著、清瀬卓訳
国書刊行会 4,500円+税 2012年
⇒幻の金字塔、待望の復活! 多くの現代人に忘れ去られていた記憶術という西欧の伝統知のあり方に光をあてた画期的な一書。書物やインターネットの先駆けとして人知を伝達した記憶術とは?
『ルネサンスの神秘思想』
伊藤博明
講談社学術文庫 1,300円+税 2012年
⇒本邦における第一人者による西欧ルネサンスを知るための入門書。すべてのルネサンス学徒に捧げます!
『イメージの地層 ルネサンスの図像文化における奇跡・分身・予言』
水野千依
名古屋大学出版会 13,000円+税 2011年
⇒各賞を総ざらいしている本書は、本邦における美術史研究の気鋭による入魂作です!
『パラドクシア・エピデミカ ルネサンスにおけるパラドックスの伝統』
ロザリー・L・コリー著、高山宏訳
白水社 7,600円+税 2011年
⇒大御所による翻訳で基本中の基本書が本邦でも、ついに紹介されました! ルネサンス期に流行したパラドクスという文学ジャンルを縦横無尽に探究する良書です。
『キリシタン文学における日欧文化比較 ルイス・デ・グラナダと日本』
折井善果
教文館 5,000円+税 2010年
⇒西欧と日本の邂逅! いかにして西欧ルネサンスの学知は、「キリシタンの世紀」と呼ばれる時代(戦国末期から江戸初期)にあった日本にもたらされたのでしょうか? 気鋭による入魂作です!
『ギヨーム・ポステル 異貌のルネサンス人の生涯と思想』
ウィリアム・J・ブースマ著、長谷川光明訳
法政大学出版局 4,900円+税 2010年
⇒カルダーノとならぶ、爛熟する西欧ルネサンスの摩訶不思議な鏡ポステルの数奇な生涯と類まれな業績を読み解くための入門書です!
『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』
フランセス・イェイツ著、前野佳彦訳
工作舎 10,000円+税 2010年
⇒永遠の名著がついに本邦に紹介されました! 魔術から近代科学は生まれたのか、魔術の本質はヘルメス主義だったのか、という論争を世界中に巻き起こしたイェイツ・テーゼは本書において提出されました。
『認識問題1 近代の哲学と科学における』
エルンスト・カッシーラー著、須田朗・宮武昭・村岡晋一訳
みすず書房 8,800円+税 2010年
⇒ルネサンス期の自然観・世界観を決定づけた哲学的な枠組みの深淵に迫る一書! カッシーラーは世界のどこよりも本邦で人気があります。
『原典 イタリア・ルネサンス人文主義』
池上俊一監修
名古屋大学出版会 15,000円+税 2009年
⇒重要テクストを集成した他の追随を許さない野心的で浩瀚な原典集。このヴォリュームと値段にもかかわらず、かなり売れているようです。
『哲学の歴史4 ルネサンス 15-16世紀 世界と人間の再発見』
伊藤博明責任編集
中央公論新社 3,200円+税 2007年
⇒西欧ルネサンス期の哲学・思想を知るための入門書。『天才カルダーノの肖像』の著者・榎本恵美子さんもカルダーノの章を担当しています!
『カルダーノのコスモス ルネサンスの占星術師』
アンソニー・グラフトン著、榎本恵美子・山本啓二訳
勁草書房 4,000円+税 2007年
⇒『天才カルダーノの肖像』の著者・榎本恵美子さんと、アラビア占星術史研究の世界的権威・山本啓二さんのタッグによる邦訳です。カルダーノを水先案内人としてルネサンスの占星術的な世界へ皆さまを招待します! トニー作品の本邦第一弾。
『ヴァールブルク著作集6 ルターの時代の言葉と図像における異教的=古代的予言』
アビ・ヴァールブルク著、伊藤博明監訳、富松保文訳
ありな書房 4,500円+税 2006年
⇒すべてはヴァールブルクから! プロテスタント主義の勃興するドイツ文化圏を中心に占星術的な主題が当時いかに流布していたのかを追ったスリリングな一冊。
『自然の占有 ミュージアム、蒐集、そして初期近代イタリアの科学文化』
ポーラ・フィンドレン著、伊藤博明・石井朗訳
ありな書房 8,800円+税 2005年
⇒自然と驚異! 近代的な博物館が生まれる以前、珍奇物の収集家の書斎や家は、「驚異の部屋」(ヴンダー・カマー)と呼ばれる摩訶不思議な空間をつくりだしていました。本書はイタリアを中心に扱っています。
『フィレンツェ共和国のヒューマニスト イタリア・ルネサンス研究』
根占献一
創文社 6,500円+税 2005年
⇒本邦におけるルネサンス学の良心による入魂作です。長年のイタリア・ルネサンス探求の集大成となっています。後半となる『共和国のプラトン的世界』とセットで読まれるべきものです。
『共和国のプラトン的世界 イタリア・ルネサンス研究・続』
根占献一
創文社 5,300円+税 2005年
⇒本邦におけるルネサンス学の良心による入魂作です。長年のイタリア・ルネサンス探求の集大成となっています。前半となる『フィレンツェ共和国』とセットで読まれるべきものです。
『奇蹟の医の糧 医学の四つの基礎「哲学・天文学・錬金術・医師倫理」の構想』
パラケルスス著、大槻真一郎・澤元亙訳
工作舎 3,800円+税 2004年
⇒放浪の医師パラケルススは、バーゼル大学での教授職を追われ、その後は非常にラジカルな医学体系の構築と内省に向かいます。本書は彼の新しい医学のマニフェストとも呼べる中期の代表作です。
『ヴァールブルク著作集5 デューラーの古代性とスキファノイア宮の国際的占星術』
アビ・ヴァールブルク著、伊藤博明監訳 加藤哲弘訳
ありな書房 5,000円+税 2003年
⇒北方ルネサンスの芸術家デューラーの知的コスモスを知るための必携書。上述の『ルターの時代の言葉と図像』とならんで占星術的な色彩の濃い一書です!
『ルネサンス哲学』
チャールズ・B・シュミット/ブライアン・P・コーペンヘイヴァー著、榎本武文訳
平凡社 7,000円+税 2003年
⇒ルネサンス・アリストテレス主義研究の大家シュミットの遺稿をもとに、アメリカ・ルネサンス学会の中心的な人物コーペンヘイヴァーがバランスのとれた一冊の書物として完成させた本書は、ルネサンス思想についての必携書です。
『ルネサンスの教育 人間と学芸との革新』
エウジェニオ・ガレン著、近藤恒一訳
知泉書館 5,600円+税 2002年
⇒イタリア・ルネサンス学の祖エウジェニオ・ガレンによる素晴らしい教科書。長いこと入手不可能でしたが、新版として復活しました!
[選書&紹介文] ヒロ・ヒライ
【ヒロ・ヒライ監修 bibliotheca hermetica叢書】
『テクストの擁護者たち 近代ヨーロッパにおける人文学の誕生』
アンソニー・グラフトン著、福西亮輔訳、ヒロ・ヒライ監訳 7,500円+税 2015年
時空を超えた不朽のメッセージを読みとるべきか、歴史の産物として距離感をもって臨むべきか、古典解釈をめぐる普遍的な問題。
『パラケルススと魔術的ルネサンス』
菊地原洋平著、ヒロ・ヒライ編集 5,300円+税 2013年
近代医学の創始者か、魔術・錬金術の達人か? ルネサンス思想下に独自の体系を築いたパラケルススの世界観を明らかにする。
『天才カルダーノの肖像 ルネサンスの自叙伝、占星術、夢解釈』
榎本恵美子著、坂本邦暢解説、ヒロ・ヒライ編集 5,300円+税 2013年
医師にして、哲学者、占星術師、ルネサンスの天才ジローラモ・カルダーノの新たなる肖像。ルネサンスの人間と世界を知る必携書!