「プライバシーは守るべき」「荷物検査はプライバシー侵害だ」「犯罪者にプライバシーはいらない」など、昨今いろいろなかたちで叫ばれる私たちの大事な権利、プライバシー。その内容を突き詰めて考えたこと、ありますか? 9・11以降、安全とプライバシーを天秤にかけて、安全を優先する状況のなか、いまこそ、その本質をとらえる必要がありましょう。博覧強記の『プライバシーなんていらない!?』訳者陣により選書された、法学、哲学、文学、幅広い分野にちらばる必読書をまとめたブックガイドをご覧ください。[編集部]
「プライバシー」と「安全」が衝突したとき、われわれはいかに考え行動すべきか。プライバシーの本質的価値を浮き彫りにする啓蒙書。
ダニエル・J・ソロブ 著/大島義則・松尾剛行・成原慧・赤坂亮太訳
『プライバシーなんていらない!? 情報社会における自由と安全』
定価:本体2,800円+税 2017年4月刊行
四六判上製288頁 ISBN978-4-326-45110-4
→〈書誌情報〉
「やましいことが何もないならば、あなたのプライバシーを放棄してください」という理由を掲げて政府が監視等を正当化する場合に、どういう反論がありうるか。こうしたプライバシーをめぐるいくつかの重要な問いに国際的に著名なプライバシー法学者ダニエル・ソロブが挑む。(大島)
「もっと安全になるなら、ある程度のプライバシーを進んで放棄すべきだ。」「もしやましいことが何もないなら、政府の監視を気にするべきではない。」「安全保障当局の考えを後知恵で批判すべきではない。」「国家の緊急事態においては、権利は削られるべきだ。ただし、その権利は事後的に回復されるだろう。」(中略)これらの議論は、すべてプライバシーと安全の間の論争の一部である。この論争の帰結は甚大である。というのは、プライバシーと安全の双方共に必要不可欠の利益であり、両者の衡量方法は我々の自由と民主主義の基盤そのものに影響するからである。現在――特に2001年9月11日のテロ攻撃(9・11事件)以降――衡量の天秤は、安全側へと傾いた。――『プライバシーなんていらない!?』「はじめに」1-2頁より
■プライバシーを考える!必読30冊■
[選書&コメント]大島義則・松尾剛行・成原慧
※2017年4月までに出版された書籍を対象としています。

『新版個人情報保護法の現在と未来 世界的潮流と日本の将来像』
石井夏生利(勁草書房)

『CODE VERSION 2.0』ローレンス・レッシグ著/山形浩生訳(翔泳社)

『最新判例にみるインターネット上のプライバシー・個人情報保護の理論と実務』松尾剛行(勁草書房)

『ネット炎上の研究 誰があおり、どう対処するのか』田中辰雄・山口真一(勁草書房)

『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』
松尾剛行(勁草書房)

『消費者行政法 安全・取引・表示・個人情報保護分野における執行の実務』
大島義則・森大樹・杉田育子・関口岳史・辻畑泰喬編著(勁草書房)

『表現の自由とアーキテクチャ 情報社会における自由と規制の再構成』
成原慧(勁草書房)

『選択しないという選択 ビッグデータで変わる「自由」のかたち』キャス・サンスティーン著/伊達尚美訳(勁草書房)

『ビッグデータの罠』
岡嶋裕史(新潮選書)

『フィルターバブル インターネットが隠していること』イーライ・パリサー著/井口耕ニ訳(ハヤカワ文庫NF)

『アーキテクチャと法 法学のアーキテクチュアルな転回?』松尾陽編著(弘文堂)

『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ著/斎藤栄一郎訳(講談社)

『サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル〈第2版〉』
清水陽平(弘文堂)

『ドラグネット 監視網社会』ジュリア・アングウィン著/三浦和子訳(祥伝社)

『ライフログのすすめ 人生の「すべて」をデジタルに記録する!』ゴードン・ベル、ジム・ゲメル著/飯泉恵美子訳(ハヤカワ新書juice)

『一九八四年[新訳版]』
ジョージ・オーウェル著/高橋和久訳(ハヤカワepi文庫)

『審判』
フランツ・カフカ著/本野享一訳(角川文庫)

『トータル・リコール』
フィリップ・K・ディック著/大森望編(ハヤカワ文庫SF)

『フーコーコレクション〈4〉権力・監禁』
ミシェル・フーコー著/小林康夫・石田英敬・松浦寿輝編集(ちくま学芸文庫)

『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』
東浩紀・濱野智史編(河出書房新社)

『超監視社会 私たちのデータはどこまで見られているのか?』ブルース・シュナイアー著/池村千秋訳(草思社)

『監視社会』
デイヴィッド・ライアン著/河村一郎訳(青土社)

『ビッグデータの支配とプライバシー危機』
宮下絋(集英社新書)

『私たちが、すすんで監視し、監視される、この世界について リキッド・サーベイランスをめぐる7章』ジグムント・バウマン、デイヴィッド・ライアン著/伊藤茂訳(青土社)

『自由か、さもなくば幸福か? 二一世紀の〈あり得べき社会〉を問う』
大屋雄裕(筑摩選書)

『記号と事件 1972-1990年の対話』
ジル・ドゥルーズ著/宮林寛訳(河出文庫)

『暴露 スノーデンが私に託したファイル』
グレン・グリーンウォルド著/田口俊樹・濱野大道・武藤陽生訳(新潮社)

『個人情報保護法のしくみ』
日置巴美・板倉陽一郎(商事法務)

『プライバシー・バイ・デザイン プライバシー情報を守るための世界的新潮流』
堀部政男・一般財団法人日本情報経済社会推進協会編、アン・カブキアン著(日経BP社)
選者プロフィール
大島義則(おおしまよしのり) 弁護士(長谷川法律事務所)、慶應義塾大学大学院法務研究科講師(非常勤)。著書として、『憲法の地図』(法律文化社)など。
松尾剛行(まつおたかゆき) 弁護士・ニューヨーク州弁護士(桃尾・松尾・難波法律事務所)。著書として、『最新判例にみるインターネット上のプライバシー・個人情報保護の理論と実務』『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』(ともに勁草書房刊)など。
成原 慧(なりはらさとし) 東京大学大学院情報学環客員研究員。専門は情報法。著書として、『表現の自由とアーキテクチャ』など。
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