プライバシーを考える!必読30冊

About the Author: 勁草書房編集部

哲学・思想、社会学、法学、経済学、美学・芸術学、医療・福祉等、人文科学・社会科学分野を中心とした出版活動を行っています。
Published On: 2017/10/24

 

「プライバシーは守るべき」「荷物検査はプライバシー侵害だ」「犯罪者にプライバシーはいらない」など、昨今いろいろなかたちで叫ばれる私たちの大事な権利、プライバシー。その内容を突き詰めて考えたこと、ありますか? 9・11以降、安全とプライバシーを天秤にかけて、安全を優先する状況のなか、いまこそ、その本質をとらえる必要がありましょう。博覧強記の『プライバシーなんていらない!?』訳者陣により選書された、法学、哲学、文学、幅広い分野にちらばる必読書をまとめたブックガイドをご覧ください。[編集部]

 
「プライバシー」と「安全」が衝突したとき、われわれはいかに考え行動すべきか。プライバシーの本質的価値を浮き彫りにする啓蒙書。
ダニエル・J・ソロブ 著/大島義則・松尾剛行・成原慧・赤坂亮太訳
『プライバシーなんていらない!? 情報社会における自由と安全』

定価:本体2,800円+税 2017年4月刊行
四六判上製288頁 ISBN978-4-326-45110-4
〈書誌情報〉

「やましいことが何もないならば、あなたのプライバシーを放棄してください」という理由を掲げて政府が監視等を正当化する場合に、どういう反論がありうるか。こうしたプライバシーをめぐるいくつかの重要な問いに国際的に著名なプライバシー法学者ダニエル・ソロブが挑む。(大島)
 
 

「もっと安全になるなら、ある程度のプライバシーを進んで放棄すべきだ。」「もしやましいことが何もないなら、政府の監視を気にするべきではない。」「安全保障当局の考えを後知恵で批判すべきではない。」「国家の緊急事態においては、権利は削られるべきだ。ただし、その権利は事後的に回復されるだろう。」(中略)これらの議論は、すべてプライバシーと安全の間の論争の一部である。この論争の帰結は甚大である。というのは、プライバシーと安全の双方共に必要不可欠の利益であり、両者の衡量方法は我々の自由と民主主義の基盤そのものに影響するからである。現在――特に2001年9月11日のテロ攻撃(9・11事件)以降――衡量の天秤は、安全側へと傾いた。――『プライバシーなんていらない!?』「はじめに」1-2頁より

 
■プライバシーを考える!必読30冊■

[選書&コメント]大島義則・松尾剛行・成原慧
※2017年4月までに出版された書籍を対象としています。

 

OECD、EU、APEC、米国、英国等の国際的な制度枠組みを取り上げ、検討している。様々なプライバシー・個人情報保護法制がありうる中で、我が国はいかなる舵をとるべきかを考えさせる本。(大島)

『新版個人情報保護法の現在と未来 世界的潮流と日本の将来像』
石井夏生利(勁草書房)
インターネット法の第一人者であるレッシグは本書で、プライバシーを一種の財産権として捉え直し、法とアーキテクチャを組み合わせたプライバシー保護の方法を提案している。その後のプライバシーをめぐる論争の進展を踏まえ批判的に再読される価値のある一冊。(成原)
『CODE VERSION 2.0』ローレンス・レッシグ著/山形浩生訳(翔泳社)

インターネット上のプライバシーに関する約1000の裁判例を元に、インターネット上の行為(書き込み等)がどのような場合に「セーフ」「アウト」になるのかを明らかにした一冊。(松尾)

 
『最新判例にみるインターネット上のプライバシー・個人情報保護の理論と実務』松尾剛行(勁草書房)
インターネット上で頻繁に起こる「炎上」。この問題についての本格的な実証研究を行い、「ネット炎上の参加者はインターネットユーザーの0.5%」「高収入であることや子持ちの親であることはネット炎上参加の可能性を高める要素」といった衝撃的な研究結果を発表したことで「ネット炎上」ブームを形成。(松尾)
『ネット炎上の研究 誰があおり、どう対処するのか』田中辰雄・山口真一(勁草書房)

プライバシーと密接な関係にあるインターネット上の名誉毀損について、平成20年代のものを中心とした約1000件を仔細に分類し、各論点における裁判所の立場を明らかにする。インターネット上の違法かどうかが微妙な投稿について、「セーフかアウトか」が具体的に分かる一冊。(松尾)
『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』
松尾剛行(勁草書房)
消費者法と個人情報保護法の結びつきは、実は強い。「第5章 個人情報保護分野における調査・執行」では、日本及び諸外国の行政法上の執行制度を深く掘り下げており、単なる概説にとどまらない資料的・研究的価値がある。(大島)
『消費者行政法 安全・取引・表示・個人情報保護分野における執行の実務』
大島義則・森大樹・杉田育子・関口岳史・辻畑泰喬編著(勁草書房)

表現の自由とアーキテクチャの関係について論じた本であるが、忘れられる権利やネット監視などを題材に、プライバシーについても、アーキテクチャによる権利の保護と制約の二面性を描き出し、表現の自由との調整や協働のあり方を模索している。(成原)
『表現の自由とアーキテクチャ 情報社会における自由と規制の再構成』
成原慧(勁草書房)
今日ではパーソナルデータに基づいて各々の個人に最適化された選択の環境が構築されるようになっている。本書は、プライバシーが個人の選択の自由や自己決定の前提に関わる権利であることに気づかせてくれる。(成原)
『選択しないという選択 ビッグデータで変わる「自由」のかたち』キャス・サンスティーン著/伊達尚美訳(勁草書房)

セキュリティ分野において技術書だけではなく分かりやすい一般書も公刊しているという定評のある著者が、ビッグデータ時代のプライバシー問題の、特に技術的な側面について図表を用いながら平易な表現で説明する一冊。(松尾)

 
『ビッグデータの罠』
岡嶋裕史(新潮選書)
私たちはネット上で、自分の好みなどに関するパーソナルデータに基づいて自動的に選別された情報に基づいて、個人的な選択のみならず、社会的な意思決定を行うようになっている。本書は、プライバシーが、単なる個人の権利にとどまらず、民主主義の前提となる社会的価値をもっていることを教えてくれる。(成原)
『フィルターバブル インターネットが隠していること』イーライ・パリサー著/井口耕ニ訳(ハヤカワ文庫NF)

今日ではネット上を中心にさまざまな権利・自由がアーキテクチャにより保護されるとともに制約されるようになっている。法哲学、情報法、憲法学、民法学など各分野の法学者がアーキテクチャと法の関係を問い直す本書は、アーキテクチャとプライバシーの関係について考える上でも有益な知見を与えてくれるだろう。(成原)
『アーキテクチャと法 法学のアーキテクチュアルな転回?』松尾陽編著(弘文堂)
ビッグデータの利活用が、いかに強力で便利かを示唆すると同時に、その危険性についても警鐘を鳴らす一冊。この分野は進展が早いので、本書出版後にも他に重要な文献は出ているものの、まずは本書を読むことで、大掴みで理解をすべき。(松尾)
『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ著/斎藤栄一郎訳(講談社)

インターネット上の炎上問題対策の実務書は昨年頃から大量に刊行されたが、その中でも、「一般向けの実用書」としては最も優れている一冊が本書。「自分の名前がネット上に掲載されている!」といった場合の削除方法を知りたいといったニーズに対し、サイト毎に平易に解説をしている。(松尾)

『サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル〈第2版〉』
清水陽平(弘文堂)
インターネットにおける「監視」から逃れるため、ありとあらゆる工夫を凝らした著者の体験記。「これ程までのことをしないとインターネットにおける監視から逃れられないのか」等と、インターネット上の監視網がどの位細かく張り巡らせられているかを改めて感じさせる一冊。(松尾)
『ドラグネット 監視網社会』ジュリア・アングウィン著/三浦和子訳(祥伝社)

現在では、肌身離さず携帯することも多いスマートフォンが普及している。自分の人生をデジタル化して記録する「ライフログ」を残すことは技術的に容易になりつつある、といえる。ライフログとは何であり、どういう価値があるかを学べる一冊。(大島)
『ライフログのすすめ 人生の「すべて」をデジタルに記録する!』ゴードン・ベル、ジム・ゲメル著/飯泉恵美子訳(ハヤカワ新書juice)
イギリスの作家ジョージ・オーウェルの小説であり、プライバシー・個人情報保護の文脈では必ず言及される古典となっている。「オーウェル的な監視」という言葉が何を意味するのかを読んで知ろう。(大島)

 
『一九八四年[新訳版]』
ジョージ・オーウェル著/高橋和久訳(ハヤカワepi文庫)

フランツ・カフカの小説であり、監視論の文脈で言及されることが多い古典である。「カフカ的な監視」と言われて、ピンと来ないようであれば読んでみよう。(大島)

 
『審判』
フランツ・カフカ著/本野享一訳(角川文庫)
犯罪の予知が可能になった未来を描いた古典的SF「マイノリティ・リポート」を所収。人が想像できることならば、それは実現できることである。すぐそこにあるマイノリティ・リポートの世界を、想像しよう。(大島)
『トータル・リコール』
フィリップ・K・ディック著/大森望編(ハヤカワ文庫SF)

監視社会論の古典として今なお参照されるフーコーのパノプティコン論。フーコーのテクストを読み返すことにより、彼が分析した古典的な監視と現代的な監視との間で、何が変わったのか、変わらない問題は何なのか考えてみたい。(成原)
『フーコーコレクション〈4〉権力・監禁』
ミシェル・フーコー著/小林康夫・石田英敬・松浦寿輝編集(ちくま学芸文庫)
本書は、批評家、社会学者、法律家、技術者らが情報社会における「公共性」と「匿名性」について論じた学際的な議論の記録である。10年以上前の議論であるが、いま読んでも示唆が多く、プライバシーの価値を考える上でも参考になる。(成原)

『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』
東浩紀・濱野智史編(河出書房新社)

「監視社会」の現状の説明に加え、どのように対応すればよいのかについて、個人レベル、企業レベル、政治レベルについてそれぞれ提言しているところに特徴がある。ただし、アメリカの状況を前提としているので、日本でそのまま適用できるかは別途考察が必要か。(松尾)
『超監視社会 私たちのデータはどこまで見られているのか?』ブルース・シュナイアー著/池村千秋訳(草思社)
ひとくちに「プライバシーや個人情報を考える」といっても、色々なやり方がある。本書は、社会学者であるデイヴィッド・ライアンの監視論についての本である。視野狭窄に陥らぬよう、様々な学問手法からプライバシーを考えてみるとよい。(大島)
『監視社会』
デイヴィッド・ライアン著/河村一郎訳(青土社)

『プライバシー権の復権』等の著者が、安全とプライバシーの関係等について新書形式で分かりやすく説明。ヨーロッパとアメリカのプライバシー観の相違や、インターネット時代における「ネットワーク化された自我を造形する権利」としてのプライバシー等が分かる一冊。(松尾)

『ビッグデータの支配とプライバシー危機』
宮下絋(集英社新書)
リキッド・モダニティー(液状化する近代)の概念を提唱したジグムント・バウマンと監視論の大家デイヴィッド・ライアンが、流体的で不安定な近代における監視である「リキッド・サーベイランス」概念に取り組む一冊。(大島)
『私たちが、すすんで監視し、監視される、この世界について リキッド・サーベイランスをめぐる7章』ジグムント・バウマン、デイヴィッド・ライアン著/伊藤茂訳(青土社)

本書は、将来の社会像として、監視の徹底を通じて平等と自由を実現する「ハイパー・パノプティコン」という選択肢を提示する。著者の挑発的で論争的な問題提起を、いかに受け止め、どのように批判することができるのか。読者の思考が試される一冊。(成原)
『自由か、さもなくば幸福か? 二一世紀の〈あり得べき社会〉を問う』
大屋雄裕(筑摩選書)
フーコーが描き出したパノプティコンをモデルとする規律社会に代わり、情報技術を用いた管理社会の到来を予見していたドゥルーズ。管理社会の突きつける問題に対処しうるプライバシー論のあり方について考えるための手がかりを与えてくれる一冊。(成原)

『記号と事件 1972-1990年の対話』
ジル・ドゥルーズ著/宮林寛訳(河出文庫)

ソロブが警鐘を鳴らしてきた米国政府による遍在的なネット監視が抱える問題は、スノーデンの暴露により現実の切迫した問題として世界に広く知られることとなった。スパイ映画のような手に汗握る闘争を描く本書は、情報社会におけるプライバシーの意義と危機を考えるきっかけを与えてくれる。(成原)
『暴露 スノーデンが私に託したファイル』
グレン・グリーンウォルド著/田口俊樹・濱野大道・武藤陽生訳(新潮社)
羅列的知識を並べた法律の概説書は多いが、単に知識を身に着けるだけではなく個人情報保護法の考え方がわかるようになっている。個人情報保護法を自家薬籠中の物にするために、本書の分析は不可欠である。(大島)

 
『個人情報保護法のしくみ』
日置巴美・板倉陽一郎(商事法務)


アーキテクチャによりプライバシーを保護するプライバシー・バイ・デザインの基本的な内容を具体例と共に解説した本。なお、原著は論文集であるが、必ずしも原著の逐語訳をするのではなく、入門書として再構成している。(松尾)
『プライバシー・バイ・デザイン プライバシー情報を守るための世界的新潮流』
堀部政男・一般財団法人日本情報経済社会推進協会編、アン・カブキアン著(日経BP社)


選者プロフィール
大島義則(おおしまよしのり) 弁護士(長谷川法律事務所)、慶應義塾大学大学院法務研究科講師(非常勤)。著書として、『憲法の地図』(法律文化社)など。
松尾剛行(まつおたかゆき) 弁護士・ニューヨーク州弁護士(桃尾・松尾・難波法律事務所)。著書として、『最新判例にみるインターネット上のプライバシー・個人情報保護の理論と実務』『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』(ともに勁草書房刊)など。
成原 慧(なりはらさとし) 東京大学大学院情報学環客員研究員。専門は情報法。著書として、『表現の自由とアーキテクチャ』など。
 
 
■ブックリストのpdfファイルはこちら→〈『プライバシーなんていらない!?』刊行記念フェア 「プライバシーを考える!必読30冊」pdf〉
 
 
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