あとがきたちよみ
『平和学入門2』

About the Author: 勁草書房編集部

哲学・思想、社会学、法学、経済学、美学・芸術学、医療・福祉等、人文科学・社会科学分野を中心とした出版活動を行っています。
Published On: 2020/11/10

 
あとがき、はしがき、はじめに、おわりに、解説などのページをご紹介します。気軽にページをめくる感覚で、ぜひ本の雰囲気を感じてください。目次などの概要は「書誌情報」からもご覧いただけます。
 
 
多賀秀敏 著
『平和学入門2 戦争を理解するための思考のドリル』

「序 平和学入門2 で何を学ぶのか」(pdfファイルへのリンク)〉
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《『平和学入門1 平和を理解するための思考のドリル』のたちよみはこちら》
 


序 平和学入門2 で何を学ぶのか
 
 このテキストは,『平和学入門1』『平和学入門2』の2 冊構成になっている。第1 巻では副題を「平和を理解するための思考のドリル」として,「平和」についての講義を行い,この第2 巻では副題を「戦争を理解するための思考のドリル」として,戦争についての具体的な議論を中心に講義を展開する。
 まず,第1 部「戦争を定義する」を概観してみよう。ここでは戦争についての定義を考えてみたい。『平和学入門1』のテキストでは,「第3 講 平和の概念整理」で,平和の定義を考えた。これと同様に,戦争の定義にもさまざまなものが考えうる。戦争の肯定的定義では,戦争は人類社会にとって不可避なものであり必要悪であるとして,その存在,あるいはその継続を認めている。中立的定義では,戦争の善悪や是非に触れずに,その現象を記述するために操作的定義を用いる。それに対して,平和学の研究者たちが行ってきた否定的定義では,戦争は避けられるものであり,必要悪ではなく意識的に起こされるものとして,その消滅を目指して定義する。
 では,平和の定義と戦争の定義は同じスタンスで議論していってよいのだろうか。実は決定的に異なる点がある。それは,戦争の定義の方は,侵略戦争,自衛戦争,制裁戦争などのように,違法性・合法性が問われることである。そのために,日本の国会でも,憲法で言うところの「国権の発動たる戦争」とは何であるかについての議論が関連法との議論で質疑が展開されてきた。そして,もちろん,国際法上の定義もある。そこで,第1 講「戦争の中立的定義」,第2 講「戦争の肯定的定義」,第3 講「戦争の否定的定義」は,平和の定義と戦争の定義のスタンスの違いを意識しながら,読み進めてもらいたい。
 次に,第2 部「戦争の原因と結果」での学びを概観しておこう。第2 部では,戦争の統計学,すなわち,データを使って戦争を理解することに入っていきたい。ここでは,数字を使いながら,戦争がどのように変遷してきたのかを考え,どうしたらこの戦争をなくすことができるのか,あるいは,将来,武力紛争がどのように変化する可能性があるのかを知る手掛かりとしたい。
 さらに,戦争の原因の説明の方法について,動物行動学,先史考古学,文化人類学などの議論を取り上げる。これに加えて,経済的要因として,アメリカの軍産官学労情民複合体の観点から,なぜ戦争が起きるのか,また,世界から戦争がなくならないのかについて考えてみたい。そこからさらに検証を進めて,アメリカとは対極にある軍備を持たない国々のあり方についても考えてみたい。そして,これらの戦争の原因の分析に加えて,科学技術の発展が戦争のあり方をも変えてしまっていることに着目し,大量化,巨大化,精密化,差異化,高速化,情報化,体系化のような科学技術の累積と戦争の関係を検証していきたい。
 続いて,第3 部では,戦争を防ぐことに関して,世界では歴史的にどのような努力がなされてきたか,あるいは,どのような仕組みによって戦争が回避されてきたのかについて考えてみようと思う。まず初めに,軍備管理・軍縮の方法論とは何かを考察してみよう。そして,武力を背景にした勢力均衡政策の利点と欠点について,モデルを使いながら理解を進めよう。勢力均衡による安全保障から集団安全保障,さらに,第1 次世界大戦,第2 次世界大戦の教訓を踏まえ,日常的な信頼醸成措置に基づいて安全を保障しようという協調的安全保障にそれらが進展してきていることも学んでいきたい。そして,最後に,いまだに,私たちが逃れられていない,核兵器による恐怖の均衡とは何かについて議論しよう。
 
 
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