あとがきたちよみ
『実践 ディープ・アクティブラーニング――高校から大学・社会へ広がる深い学びのデザイン』

About the Author: 勁草書房編集部

哲学・思想、社会学、法学、経済学、美学・芸術学、医療・福祉等、人文科学・社会科学分野を中心とした出版活動を行っています。
Published On: 2026/2/20

 
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松下佳代 編著
『実践 ディープ・アクティブラーニング 高校から大学・社会へ広がる深い学びのデザイン』

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まえがき
 
 日本の大学教育では、2000 年代に入ってアクティブラーニングという授業方法が注目されるようになった。背景にあったのは、ユニバーサル化の進行によって学生が多様化し、従来の講義型の授業が成り立ちにくくなったこと、知識の獲得だけでなくそれを使いこなすスキルや対人関係能力などが求められるようになったことなどである。この動きに拍車をかけたのは、2012 年8 月の中央教育審議会答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」(「質的転換答申」)や文部科学省の「大学教育再生加速プログラム(AP)」などにおけるアクティブラーニングの政策的推進であった。その後、2014 年末からの学習指導要領の改訂作業や高大接続改革などを通じて、アクティブラーニングは、高等教育のみならず初等・中等教育も含む諸段階における、いわば文科省推奨の授業方法となり、2015 年頃から数年にわたって「アクティブラーニング・ブーム」とでもいうべき状況が出現した。
 このブームが生まれる前、私たちは、「大学での学習は単にアクティブであるだけではなく、ディープでもあるべきだ」として、『ディープ・アクティブラーニング』(勁草書房)を構想し、2015 年1 月に刊行した。そこでは、アクティブラーニングの抱える問題を指摘した上で、いくつかのフィールドでの試みとともに、深いアクティブラーニングを基礎づける理論を示した。この本は、2017・2018 年の学習指導要領改訂でも参照され、文科省による「主体的・対話的で深い学び」の提起にもつながったとされている(ただし、このフレーズの文科省訳は“proactive, interactive, and authentic learning”であり、“deep”は入っていない)。
 その刊行から10 年の歳月が経過した。アクティブラーニングは、今やその言葉を知らない教育関係者はいないほどに普及した。が、一方、当初期待されたような成果をおさめていないことを示す調査報告もあり、また理論的な批判の的にもなっている。
 そのような現状をふまえて、本書では、大学・高校でディープ・アクティブラーニングをめざして実践を行ってきた教員を執筆陣として、ディープ・アクティブラーニングの現在地を明らかにすることを試みる。具体的には、『ディープ・アクティブラーニング』で提案された理論やその後の研究成果を整理するとともに、それに基づいた授業実践を紹介する。実践の舞台は、高校の探究学習・教科教育、高大をつなぐ初年次教育、大学の共通・教養教育(パーソナル・ライティング、サービスラーニング、冒険教育)と専門教育(統計学教育、消費者教育、日本語教育、理学療法学教育、歯学教育、薬学教育)、大学教員・大学院生へのFD・プレFD など多岐にわたる。また、実践のスパンも、1 コマの授業から半期の授業科目、さらには学士課程全体のカリキュラムにまで広がっている。
 このような多様性を含みつつも、本書の各章には共通する問題意識がある。それは次のようなものである。

・アクティブラーニングの提唱によって大学の授業風景は確かに変わったが、大学教育はよくなったといえるのか?
・ディープ・アクティブラーニングはもともと、アクティブラーニングへの批判でもあり、拡張でもあった。ディープ・アクティブラーニングは、アクティブラーニングへの批判に応答できるか?
・アクティブ×ディープをどう捉えるか? それを具体化するためにどんな実践が可能なのか?
・ディープ・アクティブラーニングの働きかけは、学生・生徒たち(FD の場合は教員)にどう受け止められているか?

 いずれの章でも、ディープ・アクティブラーニングを実践した当事者が、そこでの学生・生徒たちのリアルな姿とあわせて実践を記述し、その有効性と意味を自らに問いかけている。必ずしもうまくいった実践ばかりではないが、その実践の軌跡から得るものは少なくないはずだ。
 本書が、アクティブラーニングを深い学びへとリデザインする際の参考となることを願っている。
 
松下佳代
 
 
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