あとがきたちよみ
『最新解説 知識資源のメタデータ』

About the Author: 勁草書房編集部

哲学・思想、社会学、法学、経済学、美学・芸術学、医療・福祉等、人文科学・社会科学分野を中心とした出版活動を行っています。
Published On: 2026/8/17

 
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谷口祥一・緑川信之 著
『最新解説 知識資源のメタデータ』

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はしがき
 
 本書は,拙著『知識資源のメタデータ』(第2 版,勁草書房,2016年刊行)を内容的に引き継ぎつつも,全体を最新化した上で再構成をはかったものである。
 前著はその初版(2007年刊行)とともに,その一貫した視点や体系的な説明など,知識資源(情報資源)の組織化にかかわる類書の中で他に見られないユニークな図書として幸いにも好評を得ていた。図書館情報学関係の図書において「知識組織化」・「情報組織化」や「情報資源組織化」といったタイトルをもつものは他にもあるが,それらとは取り上げる範囲はほぼ同じでも内容はかなり異なっていた。それは前著刊行の意図の1 つが図書館等の場を越えて,より広い文脈のもとで組織化,すなわちメタデータによる組織化を捉え直したかったこと,また組織化に関する新たな説明枠組みとして再構成を試みた上で,欧米の類書においても見受けられない一貫した視点や体系的な説明を試みたことにあった。
 一方,前著第2 版の刊行以降も,知識資源のメタデータにかかわる主要要素に入れ替えが発生している。具体的には,図書館目録の領域において,概念モデルであるIFLA LRM の登場と採択(2017年),記述規則およびデータ要素定義としての日本目録規則2018年版の登場(2018年)と国立国会図書館による採用(2020年),書誌ユーティリティであるNACSIS-CAT における採用(2024年)などが続いている。また,前著で検索システム例としたNDL-OPAC は,新たな国立国会図書館サーチによって置換されている。これら以外にも細かな変化は多数にのぼる。
 こうした主要要素の入れ替えは,図書館目録を取り巻く環境の変化とそれに対応するための進化と捉えることができるが,2016年以降のこうした変化を反映できていない前著は本質的に有益ながらも,その価値を十分に発揮できていない状況にあった(少なくともその価値を読者に理解してもらいにくい状況にあった)。
 これに加えて,メタデータのレコードおよびデータ要素定義を構成する,以前からのMARC フォーマットは,引き続き採用され続けており,いわばいくぶん「ねじれた」状況にあり,事態を複雑にしている。この点にかかわる変化,すなわち最終形への移行が今後期待されるが,たとえば米国議会図書館が主導するBIBFRAME が有力候補と見なされていても,未解決の部分も多い。これらゆえ,しばらくは移行の最終形と目される安定した状況にはなりえず,ねじれの状況が続くと予測される。
 このような状況認識に基づき,今回,最新の事項や事例に依拠して内容の最新化をはかるとともに,必要な再構成をはかった新著が求められていると考え,新たな図書を刊行することにした。内容・構成とも大幅に変更した章もあるため,タイトルも新たにした。前著の読者にとっても,あるいは新たな読者にとっても価値ある図書となることを意図した。
 採用した方針は,次の通りである。

・全体の基本的な構成は,前著で採用したものを引き継ぎつつも,必要な箇所を再構成した。本書の構成が示している全体の枠組み自体が,本書の視点をそのまま表したものであり,その点で一部を除き前著を継承している。
・各章・各項目内では,原理的・原則的それゆえ汎用的な考え方をまず示し,続けて具体的な事例を交えた説明という構成を基本としている。視点の一貫性や説明の体系性には,特にこだわった記述としている。
・各項目は現時点の最新状況を反映する内容とし,取り上げる事例も最新の
ものとしている。

 このような方針のもと,各章を以下のように構成し執筆した。
 第1 章では,本書の全体像を展望した。知識資源,組織化,メタデータといった本書における基本概念について説明を行い,続けてメタデータの設計・作成・提供という全体的な流れを確認し,それぞれの概要を説明した。また,メタデータに記述する知識資源の属性のうち,主題分析・表現に該当する分類と索引,その背後にある分類法と統制語彙表について説明した。
 第2 章では,メタデータの設計に焦点を合わせ,設計を段階化して解説を試みた。それぞれの設計段階において,何が決定されているのか,既存のメタデータ仕様や関連する基準・標準類はどのように決定されているのかなど,主に設計の観点から説明を展開した。具体例を含めて個別のメタデータを正確に理解するためには,このような視点と枠組みが適切と考えるからである。また,ねじれた現状に即しながらも,できるだけ一貫した,整合的な説明となるよう努めた。
 第3 章では,汎用的な記述メタデータの代表であるダブリンコア・メタデータを取り上げ,第2 章の説明と並行するよう,設計の段階化に沿って説明を展開した。これによって,設計を構成する要素とその順序がなす,本書が採用した枠組み自体の汎用性・有効性を示すことができたと考える。
 第4 章では,知識資源をその主題に基づいて分類したり索引づけしたりするための分類法と件名標目表の基本的な原理と構造およびその作成方法,それら作成された分類法と件名標目表を用いた実際の分類作業と索引作業について説明した。わが国で広く使用または参照されている日本十進分類法および基本件名標目表を用いた主題分析に重点を置いた説明を展開している。
 第5 章では,設計されたメタデータの作成に関して,特に作成作業の実施形態の類型化とその典型例を説明した。次に,利用者へのメタデータの主たる提供方法であるメタデータ検索システムについて,その概要と必要な検討事項等を整理した。併せて,ウェブAPI によるメタデータの公開・提供とリンクトデータ化による公開について簡単に説明を加えた。
 生成AI 等の登場によって,知識資源のメタデータとそれによる知識資源の組織化についても,現状を見直し,改めて今後の展開を考えるべきときが来ているといえよう。そのような状況において,本書が少しでも読者の方々の便益となり,何らかの貢献となれば,執筆者として望外の幸せである。
 勁草書房編集部の藤尾やしお氏と加藤朋子氏には,出版までのさまざまな段階でお世話になった。心からお礼を申し上げたい。

2026年3 月15日
谷口 祥一
緑川 信之
 
 
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