憲法学の散歩道
第5回 宗教上の教義に関する紛争と占有の訴え
2019年11月に刊行された『憲法判例百選〔第7版〕』は、宗教上の教義に関する紛争が問題とされた二つの事件を収録している。184事件と185事件である。 184事件でとり上げられた最高裁判決(最判昭和56・4・7民集35巻3号443頁)は、具体的権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとる訴訟であっても、その訴訟を解決するために、宗教上の教義に関する判断をすることが必要不可欠である場合には、その訴訟は法令の適用による終局的な解決が不可能であり、したがって、裁判所法3条にいう法律上の争訟にあたらないとする。つまり、訴えは却下される。……