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憲法学の散歩道

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憲法学の散歩道 8月 09日, 2022 長谷部恭男

憲法学の散歩道
第31回 高校時代のシモーヌ・ヴェイユ

 シモーヌ・ヴェイユは、截然として容赦がない。彼女によると、「哲学の適切な方法は、解決不能な諸問題のあらゆる解決不能性を明晰に理解し、ただそれらを熟考することである。じっとたゆむことなく、年月を経ても、希望を抱くこともなく、辛抱強く待ちつつ。この規準に照らすと、本当の哲学者はわずかしかいない。わずかならいるとさえ言いがたい。……」

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憲法学の散歩道 6月 14日, 2022 長谷部恭男

憲法学の散歩道
第29回 憲法学は科学か

 明治時代の日本は、ドイツから2つの憲法原理を輸入した。君主制原理と国家法人理論である。君主制原理は、天皇主権原理とも呼ばれる。ごく単純化して言うと、上杉慎吉が唱導したのは君主制原理であり、美濃部達吉が唱導したのは国家法人理論である。
 君主制原理は、国家権力はもともとすべて、君主(天皇)が掌握しているとする。しかし、国家権力を君主が実際に行使する際は、君主が自ら定めた憲法(欽定憲法)にもとづいて行使する。大日本帝国憲法のもっとも核心的な条文である第4条は、次のように定める。……

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憲法学の散歩道 5月 17日, 2022 長谷部恭男

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第28回 法律を廃止する法律の廃止

今回は、少々頭の体操の様相を帯びている。新世社から刊行されている拙著『憲法』は、現在第8版である。その448頁に次のような括弧書きの注釈がある(章と節の番号で言うと14.4.5)。

もっとも、19世紀半ばまでのイギリスでは、ある法律を廃止する法律が廃止されると、元の法律は復活するという法理が通用していた。法令の「廃止」がどのような効果を持つかは、個別の実定法秩序が決定する問題であって、概念の本質や論理によって一般的に決まる問題ではない。

 これは、いわゆる違憲判決の効力論に関する注釈である。違憲判決の効力という標題の下で通常議論されているのは、法令違憲の判断が最高裁によって下された場合、その法令の身分はどうなるかである。……

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憲法学の散歩道 4月 12日, 2022 長谷部恭男

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第27回 ボシュエからジャコバン独裁へ──統一への希求

 ジャック・ベニニュ・ボシュエは、フランス絶対王政のイデオローグとして知られる。
 ボシュエは1627年、ディジョンの司法官の家柄に生まれた。イエズス会の教育を受けた後、メスの司教座聖堂参事会員となった彼の説教師としての声望は次第に高まり、1669年にコンドムの司教となり、さらに1670年にはルイ14世の王太子付きの指導教師となった。1680年に指導教師の務めを終えた彼は、1681年にモーの司教となった。マルブランシュ、ピエール・ジュリウー、フランソワ・フェヌロン等と論争を繰り広げた彼は、「モーの鷲l’Aigle de Meaux」と呼ばれた。……

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