様々な病気を抱えたまま病院の外で生きる人にとって、「患者」としてではなく、社会で人として生きるとはいかなることであり、そのためには何が必要なのか。
自身の難病発症と退院までの経緯を綴った『困ってる人』で大反響をよび、現在大学院で「難病の誕生」をテーマに格闘中の著者によるエンタメ研究日誌・エッセイ!
病は、人を孤独にします。病の苦痛とは、身体が病理に侵されてゆくことに耐えることでもあり、その苦痛が「結局、誰にも伝わらない」現実と対峙することでもあります。伝わらないとわかっているけれど、わたしは心のどこかで、あきらめきれないのかもしれません。…略…言葉にすることが、人の受難や病苦を、分解して相対化する力の源泉になると信じているのかもしれないです。だから、ものを書き続けているのだと思います。
(大野更紗『シャバはつらいよ』「おわりに」より)
世のなかには、毎朝目がさめるとその目ざめるということがおそろしくてたまらないひとがあちこちにいる。…略…耐えがたい苦しみや悲しみ、身の切られるような孤独とさびしさ、はてしもない虚無と倦怠。そうしたもののなかで、どうして生きていかなければならないのだろうか、なんのために、と彼らはいくたびも自問せずにはいられない。…略…あるひとにとって何が生きがいになりうるかという問いに対しては、できあいの答えはひとつもないはずで、この本も何かそういう答をひとにおしつけようという意図はまったくない。ただこの生きがいという、つかみどころのないような問題を、いろいろな角度から眺めてみて、少しでも事の真相に近づきたいとねがうのみである。
(神谷美恵子『生きがいについて』「はじめに」より)
神谷美恵子の問いを継ぐ大野更紗による新連載、近日スタートです。ご期待ください!