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仲 修平 著
『岐路に立つ自営業 専門職の拡大と行方』
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序章 日本の自営業を読み解く──自営専門職に着目する意図
戦後日本の自営業は量的な点において明らかに衰退してきた.しかし,その中で本書が「自営専門職(専門的な職業に従事する自営業)」と名づけた対象は,今日の日本社会が抱える問題と雇用の未来を考えるうえで注目に値すると考えている.すなわち,企業による雇用労働者の生活保障が縮小しているという問題と,人工知能(AI)が定型的な業務を代替し始めることによって専門的な知識や技能を必要とする複雑な業務が増加するという趨勢に照らすと,その交点には「自営専門職」という働き方が浮かび上がってくるのである.現代の労働市場では多数派を占める雇用労働者にとっても,「自営的に働くこと」とは無縁ではいられないし,「自営業は衰退する」という常識的な理解だけで簡単に片づけることはできないのではないかと考えている.
では,日本の自営業はどのような変化の途上にあるのだろうか.本書は雇用労働と連動しながら発展してきた戦後の自営業を対象として職業の構成,職業の経歴や所得などの側面からその趨勢を描き直してゆく.そうすることによって,これからの自営業の姿を明らかにするだけではなく,人びとにとってより暮らしやすい社会を構想する一助となるかもしれない.本章ではこのような問題意識を持つに至った背景を述べる.
1. 姿を変えて日常に見え隠れする自営業
自営業──それは戦後日本においていかに変容してきたのだろうか.本書は日本社会を対象とする調査によって得られたデータに基づいてこの問いに答えることを目指すものである.この試みを通して,これからの日本社会における人びとの働き方や暮らし方を考え直すことを目的とする.
自営業は多くの人びとにとってかかわりの深い存在である.日々の生活において自営業と直接的な縁がないという人がいたとしても,これまでの人生の中で自営業とずっと無縁であったということはほとんどないだろう.それどころか,毎日のように自営業を目にしている,あるいは通りすぎているかもしれない.たとえば,通勤や通学の途中で利用するコンビニや職場の近くにある喫茶店,昼食のために立ち寄る飲食店,子どもが通う学習塾などは「自ら事業を営む」という意味で自営業に該当する.つまり,私たちは日常的に自営業を視界に入れているだけではなく利用しているために,すでに多くのことを「知っている」のである.
ところが,自営業として働く人びとはどのような仕事の経験を経てそこにたどりついているのか,あるいはお店を廃業したあとにどこへゆくのかという素朴な疑問を持つと途端にわからなくなる.さらにいえば,全国各地に点在する自営業者はどのような仕事をしているのか,その仕事によってどのくらいお金を稼いでいるのかということを考えるといよいよわからないのである.より正確にいえば,自営業といえば「儲からなくて不安定な働き方である」という具合に「何となく知っている」としても,その知っている自営業の姿は個々人によって大きく異なると思われる.
人びとがイメージする自営業像が異なることはある意味で当然かもしれない.というのも,現代の日本社会の中では目にとまりやすく想像しやすい自営業からそうではない自営業まで幅広く存在しているためである.たとえば,街の中にあるパン屋,八百屋や整骨院,あるいは印刷物や部品をつくる町工場などは比較的にわかりやすい.なぜなら,人びとが意識する/しないにかかわらず,自営業として働く人びとが店舗を構えているために認知しやすいのである.
一方で,インターネット通販大手のアマゾンジャパンが注文商品を届ける際に利用している一部は個人の運送業者であるが,荷物を受け取る側は配達員が自営業者であるかどうかを気にかけることはほとんどない.また近年では,配車アプリ大手の米ウーバーテクノロジーズが飲食店の料理の宅配サービス「UberEATS(ウーバーイーツ)」を開始したが,配達員として登録する人びとは自営業者の一種である.さらに,個人のスキルや知識をウェブ上で売り買いするココナラという会社も現れている.個々人のスキルとしてはデザイナーや翻訳家などを想定し,ウェブサイトに自らの技能を登録している人の数は70 万人に達しているという(日本経済新聞2018 年2 月5 日).
現代の自営業は私たちの日常生活にとって身近な存在であると同時に,その姿を変えつつあるのでその全貌を捉えることが難しい対象となっているのである.つまり,従来は自営業ではなかったものが自営業となる,あるいは新たなサービスが考案されることによってその担い手が自営業者となるという意味で姿を変えているのである.自営業が変貌する背景には雇用労働の今日的な状況と密接に結びついている.たとえば,アマゾンやウーバーイーツが配達員を自社の正社員ではなく個人請負や業務委託としての自営業者を活用するのは,働き手を直接雇用することによる人的なコスト(年金や社会保険などを企業が負担すること)を削減する狙いがあるだろう.ココナラの事例でいえば,ウェブサイトに登録する人びとは自らの技能をより有効に用いて活動したいという動機に加えて,空いている時間を利用してお金を稼ぐことで生計の足しにしたいという切迫した状況があるかもしれない.逆にいえば,雇われて働くことによる収入が十分ではないということも考えられる.このように考えると,さまざまな自営業が生じる遠因は雇用労働の側で生じている問題にもあるといえるだろう.
自営業と雇用の関係は戦後の日本社会で「働き方」に注目する場合,両者は離れがたく結びついてきた.もちろん,昨今の労働市場では働く人びとのおおよそ9 割程度は雇われて働く雇用労働者であることに照らすと(2010 年の労働力調査によると約5460 万人),人びとの認識としても,研究の対象としても「雇われて働くこと」が前提となることは当然といえる.しかしながら,「戦後」という時間的な幅をもたせて日本社会を振り返るとき,自営業という働き方は経済,社会,政治のいずれの側面においても重要な役割を果たしてきた(鄭2002).より具体的にいえば,1960 年代から1980 年代にかけて正社員を中心とする社会が確立してきたのは「雇用の安定」のみで実現したわけではなく,「自営業の安定」という別の安定がしっかり存在していたことを忘れるわけにはいかない(新2012:19).つまり,自営業として働くことは,戦後の日本人の働き方として「もう1 つの」重要な役割を果たしてきたのである.
しかし,誰もが容易に自営業になれるわけではない.第3 節で見るように,日本の自営業はこの数十年のうちに大きく減少し(国勢調査によると,自営業者数は1985 年の890 万人から2010 年の550 万となっている),ごく限られた人びとが選択する働き方となっているのが現状である.自営業という働き方が雇われる働き方にとってかわる,あるいは自営業という働き方に大きな期待を寄せるというのは現実的ではないだろう.
けれども,本書の分析と考察が示唆するのは,雇われて働き続けることに疲れきっている人や雇われなければ暮らしてゆくことができないと思い込んでいる人にとって,目の前の現実を少し好転させる糸口が自営業という働き方の中に隠されているかもしれないということである.というのも,第4 節で述べるように,今日の企業が雇用を通して人びとの暮らしを支える余裕がなくなりつつある現代社会において,「企業から独立して働く」という行為は,人びとがよりよく暮らしてゆくための手段とその原理を映しだす1 つの働き方であると考えられるためである.いいかえると,企業から独立して働くというのは,企業が賄ってきた生活保障を自ら担うという点と,AI の進展にともない人間が担う非定型的な仕事は必ずしも企業内で働く人が担うとは限らないという点を意味している.これらのことを考えるならば,「自営的に働く」ということを読み解く必要が生じてくるのである.
その働き方は上述したように,現代の自営業は雇用労働の状況と連動する形で変貌しつつある.では,日本の自営業はどこからどこへ向かおうとしているのだろうか.この問いは現在を見ているだけでは答えることはできない.「戦後」という過去から現在に生じた現象を複眼的に見つめなおすことによって,よりたしかな考察を加えることができる.本書では自営業に関する諸側面(職業移動や所得など)に焦点を当てて分析してゆくことになるが,それらの結果を解釈するためには雇用労働との比較や関連を視野に入れて考察する必要がある.さらにいえば,雇用労働と自営業の関係を認識しなおすことによって,今日に生じつつある両者の関係が過去に生じたものであるのか,それとも新たな側面が生じつつあるのかという一歩進んだ考察も可能となる.
そこで本書では,企業から独立して働く/生活する原理を見出すための糸口として,戦後日本における自営業の姿を描き直してゆく.その姿をよりよく理解するために,本書は「専門的な職業に従事する自営業(自営専門職)」を鍵となる概念として位置づけていることに最大の特徴がある.自営専門職に着目する理由は第4 節で述べるが,その存在は過去から現在における自営業の趨勢を見極めるために1 つの軸となりうると同時に,これからの日本社会で人びとが働くことを構想するうえでも欠かすことのできないものであると考えている.このような筆者の問題関心によって各章の分析は自営専門職を重要な切り口として,自営業の働き方を参入や退出という職業移動,職業の構成,職業の経歴,所得という側面から浮き彫りにしてゆく.
具体的には,計量社会学の立場から「誰が自営業になるのか/やめるのか」,「自営業の職業構成はどのように変容してきたのか」,「自営業を経験する人びとはどのような職業経歴をたどっているのか」,「自営業はどのくらいお金を稼いでいるのか」という問いを究明することを試みる.それらの問いに答えることを通して,これからの日本社会において人びとがよりよく働くこと/暮らすことを考え直してみたい.
本章の以下では,本書が分析対象とする自営業を定義し,公的な統計データを用いて日本の自営業が置かれた状況を概観する.そのうえで,なぜ自営業,とりわけ自営専門職に着目する必要があるのかについて,日本社会が抱える社会的な問題,雇用の世界が直面している状況および学問的な課題という観点から述べる.最後に本書の構成を明示する.
2. 本書における自営業の定義
本書における自営業とは,「自分の生産手段を所有し,それを自分の労働と,独自の経営資源(また管理資源)と結合することによって彼らの階層状況が規定される階層」を意味する(鄭2002:169).より平易な言葉に直すと,自営業者は土地・原材料・道具・機械や技能などの手段を用いて,自らの労働および少数の被雇用者の労働に支えられた事業活動を営むものである.
日本の先行研究で「自営業」という言葉を用いる場合は,自営業者,自営業主,個人事業主や自由業者などの語が用いられる.これらは同義のものとして扱われることが多いため,本書ではこれらを一括りに「自営業」とする.一方,欧米の研究では,self-employed,self-employment,freelance などの語が用いられる.文脈によって多少異なる場合はあるが,本書ではこれらの語を「自営業」と訳すことにする.
他方,上述の語に類似した概念として「起業家」(entrepreneur)がある.この概念は「新たに事業を起こす」ことを意味する.本書が扱うデータでは起業家を厳密に峻別することができないために,自営業の一部として起業家が包含されている.より正確にいえば,調査の対象者が従業上の地位として自営業を選択した場合,その自営業が新たに事業を起こしたものであるか否かを区別できていない.そのため,本書が対象とする自営業者は,あくまでも調査の回答項目において「自営業主,自由業者」を選択した人びとが主な対象となる.分析対象とする自営業の概念をめぐってはいくつかの議論が蓄積されているため,それらを検討したうえで改めて操作的な定義を述べる(第1 章2 節).なお,「起業家」については経済学や社会学を中心にして調査や研究が蓄積されている.本書で十分に扱うことはできないが重要な視点であるために第1 章の付記において主要な研究知見を整理する.
本書では,戦後日本の自営業の趨勢をよりよく理解するために,自営業と専門職を合わせた「自営専門職」という概念を用いる.ここでの専門職とは,日本標準職業分類や社会調査で用いられる「専門的・技術的職業従事者」を意味する.いうまでもなく,社会学をはじめとする学問領域では「専門的職業(professions)」については,その職業の認識のあり方から実証的な研究にいたる膨大な研究蓄積がある(e.g. 石村1969; 竹内1971; 時井2002; 藤本2005, 2008; Saks 2010, 2016).そのため,職業分類の大分類カテゴリとして扱う「専門的・技術的職業」に含まれる職業を「専門職」と総称して良いのか,さらには専門職と非専門職の境界が連続的になりつつある今日の職業構造において区分すること自体に意味があるのかという批判が考えられる.これらの批判に対しては筆者の力量と用いるデータの制約によって十分に答えることはできないという問題がある.そのため,概念自体に関する厳密な検討は課題として残されるが,長期的な自営業の姿を描き直すという本書の目的に照らして次善の策として「自営専門職」という語をあてることにした.
また,本書では自営業の働き方を捉えるために比較対象として雇われて働く人びとの働き方(雇用者)も分析することになる.本書における雇用とは,「当事者の一方が相手方に対して労務を提供し,相手方がこれに対して報酬を与えるという関係に基づいた事業活動」を意味する(労働省編1993).国勢調査によれば雇用とは,「会社員・工員・公務員・団体職員・個人商店の従業員・住み込みの家事手伝い・日雇い・臨時雇いなど,会社・団体・個人や官公庁に雇用されている人」と定義される.労働基準法でいえば,雇用されて働く人(労働者)とは,「職業の種類を問わず,事業又は事業所に使用される者で,賃金を支払われる者」(第9 条)である.
第2 章以降の分析では自営業と雇用の比較を試みているが,その際の「雇用」は「組織に常時雇用されて働く者(常時雇用者)」を主な対象としている.それ以外の雇用者を分析対象とする場合は個別の名称(臨時雇用,パート・アルバイト,派遣社員,契約社員など)を用いる.ただし,対象とするサンプルサイズが小さくなる場合は次善の策として常時雇用者以外の就業形態を1 つにまとめて「非正規雇用者」とする.より詳し
い分析対象については各章において明示している.
3. 統計データから見る日本の自営業
本書では,戦後から現代に至る自営業の姿を描いていくことになるが,それにさきだってマクロな統計データから日本社会における自営業の現状について基礎的な情報を示しておきたい.具体的には,まず諸外国と比較した場合の日本の位置づけを確認する.次に,この30 年ほどの間に生じた都道府県ごとの自営業比率と職業構成の変化を示す.最後に人びとが自営業という働き方を選択することに対する意識を見ておきたい.
まず,諸外国と日本における就業者に占める自営業比率を確認する.ここでは,経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development,以下OECD)が,2015 年に集計したデータを示しておきたい(図序─1).ここでの自営業は,経営者,個人事業主と家族従業者などを含めたものである.本書が対象とする自営業の操作的な定義は次章で述べることになるが,OECD では家族従業者が含まれているため,自営業比率はあとで見る国勢調査に比べると若干高い値を示している点には注意が必要である(2015 年の自営業比率は8.7%).なお,就業者は15 歳以上で調査期間の前週に少なくとも1 時間以上働いた人びとである.
この図を見ると,自営業比率はコロンビアが51.3% と最も高く,アメリカが6.5% と最も低い.そして,日本は11.1% と全体の中で見ると,OECD やEU の平均よりも低い国々のうちの1 つであることがわかる.日本の自営業比率は決して高いわけではないが,極端に低いわけでもないといえる.1980 年代までは日本の自営業比率はOECD が集計した諸外国の中では高いほうに位置していた.具体的には,1980 年の自営業比率は28.1% であり,その値は15 ケ国の中で上から4 番目であった(日本はメキシコ,韓国,イタリアに次ぐ位置).ところが,日本の自営業者数は1980 年代後半から減少し始め,1990 年代(1990 年から97 年)では年率マイナス1.4% と,メンバー国で最も大きな減少率であったことが知られている(OECD 2000; 大沢2013:232─233).
では,日本の自営業比率は全国的に見てどのように変化をしたのだろうか.ここでは国勢調査のデータを用いて1985 年と2015 年の変化を確認しておきたい(図序─2).この図を見てわかることは,1985 年時点では都道府県によって自営業比率には濃淡が見られたが,2015 年時点では多くの都道府県の自営業比率は5% から15% の間に収まり,その違いはほとんど見られないことである.ただし,この数値には農業などが含まれているために本書が対象とする非農業の自営業とは定義に相違がある点に留意が必要である.しかし,自営業比率は都道府県によって多少の差が見られるとしても,その減少傾向が1980 年代の後半以降に全国的に生じていることを類推することができる.本書では扱うデータの制約によって都道府県による違いを十分に考慮することができていないが,日本の自営業は全国的な減少を迎えた局面にあるということを念頭に置いておく必要がある.
つづいて,どのような職業の自営業が減少したのかを見ておきたい(表序─1).自営業者数は1985 年から2010 年にかけておおよそ890 万人から550 万人へと減少したことはすでに述べた.その職業の内訳を見ると,農業が256 万人から108 万人へと大きく減少し,販売従事者や生産工程従事者も半数以下となっていることがわかる.ところが,注目したいのは専門的・技術的職業従事者の増加である.その増加は85 万人から90 万人へとそれほど大きなものではないが,「その他の職種」を除く職業が減少の一途をたどっている趨勢とは明らかに異なるものである.「その他の職種」とは,日本標準職業分類でいえば「分類不能の職業」のカテゴリに該当するものを基本的に指している.その内実を特定することは公開されている数値からでは困難である.しかし,この間に諸外国の自営業で増加していることが知られているサービス産業(社会サービスや対人サービスなど)に関連する職業において増加している可能性がある(OECD 2000).それらのサービス的な職業従事者の中には,介護や保健医療などにかかわる専門的な職業に近い職業も含まれていると思われるが,ここではたしかなことはいえない.けれども,既存の職業分類では取り扱うことが難しい職業の自営業が増加しているということは,現代社会の中で「衰退する自営業」の諸職種とは異なる自営業の職種が芽生え始めていることを間接的に示しているのかもしれない.
このように現代の自営業は社会調査を通してはつかみがたい多様な職種へと拡がりを続けている.にもかかわらず,本書は自営業の職種としては16% 程度と主流を占めているとはいえない「自営専門職」を1 つの軸として分析を進めてゆく.その理由は本書の分析によって示されることになるが,従来の販売従事者や生産工程従事者としての自営業への参入は近年になるほど困難になっているのに対して,自営専門職への参入が徐々に生じやすくなるという顕著な傾向が見て取れることは,今後の自営業の姿を考えるうえでの専門的職業の重要性を物語っている(第3 章).加えて,自営専門職の職業経歴を記述してゆくと,その担い手は性別や学歴の組合せにはいくつかのパターンが見られると同時に,パターンによって年齢の構成にも相違が見られる(第4 章).このことは,自営専門職への入口(と出口)は複線的なルートになっていることが考えられるために,人びとにとっての働き方の選択肢をより拡げることに寄与するかもしれないことを意味する.本書の分析と考察は,自営専門職という対象が自営業の未来を映しだす存在であると同時に,日本社会にとっても重要な役割を果たす働き方となりうる可能性を秘めていることを示している.
以上のマクロデータから見てきたように,日本の自営業は専門的・技術的職業を除いてこの30 年ほどの間に衰退してきたといえる.いいかえると,日本の労働市場における自営業の役割は小さくなってきたという見方もできる.では,自営業という働き方の選択肢は人びとにとって忘れさられてゆくものなのだろうか.人びとが「自営業を選ぶか否か」という意思決定について,仕事の志向性に関する調査から見ておきたい.図序─3 は,「会社や官公庁などに勤める(被雇用者)」か「会社や店を経営する(自営業)」のいずれかを選ばなければならないとしたらどちらを選択するかという回答に対する比率を示したものである.1997 年時点と2005 年時点で自営業を選択したいと考える人の比率はそれぞれ40.9% と34.7% である.この数値の高低を判断することは難しいが,少なくとも実際に自営業者として働く人の比率に比べると高いといえる(たとえば,2005 年時点の国勢調査における就業者に占める自営業比率は10.6%).この希望と実態の相違は,自営業者として働くことを望みながらも被雇用者にとどまっている人びとが多数存在していることを示唆している.
ではなぜ,少なからぬ人びとが自営業を選択したいと考えているにもかかわらず,実際には自営業を選択しないのだろうか.その理由の1 つには,自営業として働くよりも雇用されて働く方がより暮らしやすいという人びとの判断があると思われる.たしかに,企業が年金や社会保険の一部を負担し,働く人びとの生活を保障してきたことを考えると,雇用されることによってそれを享受することの便益は大きい.とりわけ,その主たる受益者である「正規雇用」と呼ばれる人たちにとってはあえて生活のリスクが高まる自営業を選択することは合理的な判断とはいえないかもしれない.たとえば,生活のリスクとしては高齢期に受け取る公的な年金額は自営業者であれば雇用者よりも制度的な違いによって少ないことが予想される(自営業者は基本的に第1 号被保険者であるために国民基礎年金のみを受給する).
しかしながら,「雇用されることによって生活の安定が得られる」ということはどこまで「あたりまえ」なのだろうか.もしその前提が崩れるとするならば,人びとはそれでも雇用されて働くことを選択するのだろうか.このように考えると,控えめにいっても,社会の中に「雇われない働き方」という選択肢が残されていることは,人びとの活動の場を広げることに寄与するのではないだろうか.次節で述べるように,今日の日本社会が抱える社会的な問題や雇用の世界のこれからを考えると,「自営業として働く」という選択は雇用労働と比較してあながち「非合理」とはいいきれないかもしれないのである.
4. 自営業,とりわけ自営専門職に着目する現代的意義
本書では,専門的な職業に従事する自営業を鍵となる切り口にして戦後日本の自営業の姿を描きなおしてゆくことになる.本書が自営専門職に着目するのは,雇用労働が抱えている今日的な問題と雇用の未来が指し示す方向性から日本社会を見つめなおすならば,その対象から目を背けることができないのではないかと考えているためである.以下では,そのように考えるに至った背景を働くことをめぐる現代社会の問題,雇用の未来およびこれまでの研究という観点から述べておきたい.
4.1 働くことをめぐる今日的な問題
20 世紀末から21 世紀初頭の日本社会は,「失われた20 年」と表現されるように経済活動の低迷が長期化することによって,人びとの生活環境はかつてないほど厳しい状況になりつつある.企業だけではなく政府が「民営化」をかけ声にして市場原理主義の方向へ舵を切るという構造転換は,雇用の非正規化と所得水準の下落を引き起こした.より具体的には,1995 年の1 人当たり雇用者報酬(賃金・俸給と雇用主の社会負担の合計)を100 として,2010 年までの伸びを見ると,イギリスやアメリカを含む主要国の中では日本のみが1 人当たり雇用者報酬が1997 年から低下してきた(2010 年には89.3)ことが示されている(大沢2013:182─183).その結果として私たちが目の前にしている社会は,標準的な所得の半分以下で暮らす相対的な貧困層の拡大,さらにはそうした生活環境で暮らす子どもたちの増加という深刻な社会問題を抱えている.
1990 年代後半以降の日本企業はグローバルな企業間競争にさらされる経済環境のもとで正規雇用者の人員削減とパートタイム,派遣社員や契約社員と呼称される非正規雇用者への置換えを進めてきたことは周知の事実である.非正規雇用者の内実を見ると,パートタイム労働者の3割以上,契約・派遣労働者の7 割以上は自身の収入が生活を賄う主な収入源であり,調査時点の月収(税込み)が20 万円未満である人の比率はおおむね5 割から6 割程度である(厚生労働省「平成22 年就業形態の多様化に関する総合実態調査」).このカテゴリの中で最も給与水準の高い月収20 万円に近い人だとしても,その収入から税金と社会保険料を差し引き,さらに家賃,光熱費と食費を考慮すると手元に残るのは数万円であると想像できる.このような低収入の状況に置かれた非正規雇用者の増加が「働く貧困層(ワーキングプア)」を生み出す要因の1 つとなっている.
こうしたデータは,経済的な困窮層が日本社会の内部に相当な厚みをもって存在していることを示唆している.端的にいえば,私たちが生きている社会は「働くことによって人間らしいまっとうな生活をおくることがむずかしい」という根本的な問題を抱えているのである.
正規雇用者から非正規雇用者を中心とする企業社会への変容は,企業が働く人びとの生活を保障してきた従来の状況から個人が自らの生活を守る状況への変化と見ることができる.たとえば,医療・年金・住宅などの社会サービスの給付は正規雇用者を主な対象として,政府が業界の保護等によって企業経営をサポートし,その企業が雇用を通して働く人びとの生活を保障する役割を果たしてきた.ところが,非正規雇用者はそれらのサービスを受けるために個々人が企業の代わりに自らで賄う必要がある.要は,企業が従業員の生活を守るほど余裕がなくなりつつあるのである.
こうした視点に立つならば,非正規雇用者は自らの生活を自らで守らなければならない存在であるため,企業に雇われていたとしても「企業から独立した」働き方の1 つの形態と見ることができる.いわば,非正規雇用者は「自営業者」に近い状態に置かれている.誤解を恐れずにいえば,現代社会は,たとえ雇われて働いていたとしても自営業のように生活保障の面で企業から独立した働き方を迫られる時代にある.つまり,「雇われて働く」という就業形態においても「雇われずに働く」という要素が含まれており,両者は地続きの関係になりつつある.そのため,現代の自営業を考察することは単に自営業のことがわかるだけではなく,「雇用労働の現在」の理解を深めることにもつながると考えている.すなわち,雇われて働くこと以外の選択肢の現実と可能性を見極めたうえで,雇用されて働くことを問い直すことが可能となる.
さらにいえば,経済的な格差の問題を対処していくためには富(ないし国としての財源)をどのように分配していくのかという課題に突き当たる.その課題を考えるためには,「社会全体の経済力の余裕がないと,格差を縮めるための富の再分配もままならないということを肝に銘じるべきだ」(筒井2015:201)という指摘を思い起こす必要がある.加えて,「有償労働の世界で多様な人々が活発に働く環境があること」(筒井2015:201)が経済力を高める1 つの条件として提示されている.
では,「多様な人々が活発に働く環境」とはいかなる場なのであろうか.これまでの日本社会は,その働く場の担い手としては,職務内容を限定せずに長時間にわたり働くことができる「正規雇用」が想定されてきた.ところが,そのような企業社会のほころびは上述した通りである.少なくとも,企業に勤めて長時間にわたり働くことができる人びとを前提とするかぎり,働く担い手となりうる対象を入り口から絞りこむことになりかねない.働くことにおいて活発な担い手を少しでも多様に広げるという点において,自営業という選択肢を数ある中の1 つとして検討の俎上に載せる意味が生じてくるのである.少子高齢化がますます進行する日本社会において働く場をどのように確保していくのか,働くことによって得られる富をいかに再分配するのかという点は実社会においても研究の世界においても喫緊の課題である.社会階層研究に関していえば,人口変動を考慮して社会階層を再考するという点はすでに中心的なテーマとなっている(e.g. 白波瀬2005, 2009, 2018).
本書の文脈に即していえば,自らの生活を成り立たせるために身近な場で働き暮らすことができる1 つの手段としての自営業という選択である.雇用されることがあたりまえではなくなりつつある時代において,生活の糧(たとえ就労だけによる収入で生活できなくとも)を稼ぎ,税や社会保険の負担を一定程度担うことができる小さな働く場をつくる手段として「自営業」に着目し,「自営的に働くこと」の現実と可能性をデータに基づいて考えてみたいのである.そのためには,自営業や雇用という就業形態の選択肢と同時に,人びとが担う仕事をめぐる昨今の大きな変化とその展開,すなわち雇用の未来を視野に入れる必要がある.そのことを視野に入れた先には,自営業かつ専門職という本書が着目する働き方は雇われることを前提としない働き方や暮らし方を構想するうえで重要な意味を帯びてくるのである.
4.2 雇用の未来と専門的な職業の拡大
近年,人工知能(AI)やロボティクス(工学の諸分野や情報科学を統合して高度なロボットに関する研究を行う学問分野)の進展にともなって,人間が担う仕事とロボットが担う仕事をめぐる調査や研究が進められている(e.g. Frey and Osborne 2017).日本に関する野村総合研究所の調査によれば,労働人口の約49% が就く職業は10 年から20 年後にはAIやロボットによって技術的には代替できるという推定結果を示している(日本経済新聞2016 年4 月29 日).その調査では,代替の可能性が低い職業として教員,医師やデザイナーなどの専門的な職業が挙げられている.
ここではそれらの論争の詳細に立ち入ることは控えるが,技術的な革新によって人間がこれまで担ってきた定型的な仕事は減少していくという流れであることは疑いえないと考えられる.逆にいえば,非定型的な仕事を通して何らかの付加価値を与えることが可能である専門的な職業がより重要な役割を果たすことを意味している.この流れによって,正規雇用や非正規雇用の仕事は就業形態の区分にかかわらず,定型的な仕事,すなわち機械が代替することができる(自動化できる)仕事であれば雇用される機会は徐々に減っていくことを予想できる.
一方,企業の側に立つと,人事の面でこれから重要なことは「人間にやらせる仕事と機械にやらせる仕事の的確な振り分け」(大内2017:171)であるだろう.このような仕事の再編成の結果,人間の仕事として残るのは,AI によって対処することが難しい(少なくともAI が対応するよりも人間の方がよりうまく対応できる)仕事であるだろう.すなわち,その仕事は非定型的な仕事,あるいはより高い付加価値を必要とする仕事であると考えられる.
そのような仕事に求められる1 つの条件は専門的な知識や技能に基づく個々人の創造的な活動であるだろう.つまり,倫理的な判断や対話が求められる複雑な営みである(たとえば,先に述べた仕事を人間か機械に割り振るような管理的な仕事).日本標準職業分類でいえば,「管理的職業従事者」や「専門的・技術的職業従事者」がそれに該当する(何をもって専門職とするかという職業分類自体も問題になるが,ここでは踏み込まない).とりわけ,後者については個々人が時間や場所の制約をなくしてより自由な環境で働くことも可能であり,情報通信技術(ICT)の発達にともないすでにそのような働き方が可能となりつつある(テレワークはその典型例である).
これらの働き方では,仕事内容(職務)はより特定され,かつその職務における専門的な技能が必要となる.そのような技能を有する担い手はもはや正規雇用として企業の中で抱えておく対象ではないかもしれない.なぜなら,正規雇用のように各企業内で長い期間をかけて育成していくことは,技術革新のスピードが早い今日の状況に照らすと,企業にとって教育にかけるコストのわりにはそれによるリターンの見込みが低いと予想されるためである.そのため,従来のように企業の内部で働く担い手を確保するよりも,企業の外部から技能を有する担い手を確保する方が企業にとっては効率的であると考えられる.その流れの帰結の1つとして,「自らのプロとしての技能を提供するという自営的な働き方
が広がっていくだろう」(大内2017:172)という指摘は極めて重要な意味を持つ.
つまり,今日の日本社会では依然として長期的な雇用契約のもとで企業に雇われて働く人びとが主流であるが,そうした人びとにおいて自営的な働き方と無縁ではいられなくなるのではないか,しかも専門的な自営業として働く/働かざるを得ない機会はより増えるのではないかというのが筆者の考えである.上述したように「多様な人びとが活発に働く環境」ということを念頭に置くならば,専門的な技能を有しつつ自営的に働くという選択肢は少なくとも働く場の裾野を広げることに寄与するのではないかと考えている.以上のような社会的な背景と雇用の世界で生じることに鑑みると,本書が焦点を当てる「自営専門職」という対象は日本社会における働き方を考えるうえでも必要不可欠なのである.
4.3 自営業に関する研究と本書の位置づけ
ここまで述べてきたように,日本社会が抱えている問題と雇用の未来に目を向けると,自営業という働き方は時代遅れで衰退していくという常識的な理解だけでは片づけることができないといえる.ところが,自営業の世界は,社会学,とりわけ日本の社会学では,「被雇用層ではない」という消極的な形で1 つの階層として認識されてきた(鄭2002:iii).前節で示したように日本の自営業が1980 年代の後半以降に減少したという事実に照らすと,研究対象として積極的に取り上げる必要はないのかもしれない.しかしながら,ひとたび諸外国における自営業の動向を視野に入れるならば,「自営業の減少」は自明のことではないことがわかる.より具体的には,1980 年代以降におけるOECD に加盟する多くの国々では自営業は景気の循環にともない増加と減少を繰り返していることが知られている(OECD 2000).それに比べると,日本の自営業は30 年以上にわたり減少を続けている例外的な国なのである(玄田ほか1998; Genda and Kambayashi 2002; Kambayashi 2017).
ここには,日本の自営業を対象とする大きな研究課題が横たわっている.すなわち,「なぜ,これほどまでに長期にわたって継続的に自営業が衰退し続けているのか」という課題である(神林2017:317).この研究課題に答えることは日本を研究対象とするかぎり決して逃れることはできない.というのも,本節の冒頭で断片的に示した正規雇用と非正規雇用の間に生じている問題の背景には,「自営業の衰退」が大きく関係しているためである(神林2017).さらにいえば,自営業が衰退して雇用の世界が膨らむと,「学歴・学校歴が労働力の配分においても,個々人の職業アスピレーションにおいも,決定的に重要になる」(野村2014:247)のである.いいかえると,今日の経済的な格差や学歴にともなう不平等の問題を対象とするにしても,自営業を理解する必要が生じてくるのである.
しかしながら,自営業に関する研究は経済学や社会学のいずれにおいても十分に蓄積されているとは言い難い状況である.主な研究については第1 章で整理することになるが,自営業は「周辺的」あるいは「残余的」な働き方の形態として捉えられてきたために,研究対象としては脇に追いやられてきたといえる.少なくとも,社会学の社会階層研究においては雇用労働を主な研究対象としてきたために,自営業に関しては依然としてわかっていないことが多いのである.「戦後」という長期的な視点から自営業を捉え直すことを通して,現時点の自営業を位置づけるという研究課題は当該研究の間隙に残された問題の1 つである.戦後日本の自営業の姿を再構成することを通して,上述した「なぜ日本の自営業は諸外国に比べて減少してきたのか」という大きな問いに対して,1つの仮説を提示してみたいのである.
5. 本書の構成
以上の目的を探求するために本書の構成は以下の通りである.
第1 章では,計量社会学的な自営業研究を展開するに先立ち,自営業の認識をめぐる従来の研究,および自営業に関する国内外の研究潮流を整理する.そのうえで,日本における自営業研究の課題を具体的に指摘し,その課題に対する本書の検討課題を明示する.
第2 章から第6 章では,全国調査によるデータを用いた計量分析によって,職業移動・職業構成・職業経歴・所得の検討課題に取り組む.これらの検討課題は,次のような意図に基づいている.まず,失業率と自営業への/からの職業移動に焦点を当てる.この検討は,これまでの研究において自営業は雇用状況の悪化に際して,人びとに働く場を提供するか否かという論争が自営業に着目する出発点として繰り広げられてきたが,日本の文脈を考慮しつつ1 つの答えを提示することを目的としている.これによって,ブルーカラー(熟練職や半熟練職など)やホワイトカラー(販売職や事務職など)の自営業は失業の受け皿とはなり得ないが,専門職の自営業は失業の動向とは関係のないところで参入や退出が生じていることを示す(第2 章).
この結果は,自営業の職業構成がブルーカラーやホワイトカラーから専門職へと変容していくことを示唆するものであるが,その趨勢を捉えるためには長期的な視点から歴史的に生じた現象なのかを常時雇用と比較しながら明らかにする必要が残される.そこで第3 章では戦後から現代にかけて自営業の職業構成がどのように変化してきたのかを職業構造の変動を考慮したうえで明らかにする.この検討によって,日本の自営業の職業構成は徐々に専門職へ姿を変えつつあることを示すが,どのようなタイミングで誰が自営専門職へと参入するのか,そこには何らかの職歴パターンがあるのかという疑問が残る.
そこで続く第4 章では,自営専門職を選択する人びとがどのような職業経歴をたどっているのかを把握する.そのうえで,第5 章と第6 章では自営業への移動の帰結としてどの程度のお金を稼いでいるのかを見極める.具体的には自営業者の所得は職業によってどの程度異なるのか,その違いは時代によって変化しているのかを検討し(第5 章),さらに専門職において自営業者の所得は他の従業上の地位(常時雇用者と非正規雇用者)とどの程度異なっているのか,異なっているとすればそれはなぜなのかを仕事の特性を考慮したうえで明らかにする(第6 章). 終章では,第2 章から第6 章までの分析結果に基づいて本書の結論を提示したうえでその含意を考察する.最後に今後の課題と展望を述べて
本書を締め括る.
付記 本書で用いる社会調査データ
本書の第2 章から第6 章の分析で使用する社会調査データについて説明する.分析対象や使用する変数などは各章において説明するため,以下では調査の概要を示す.
第2 章から第6 章では「社会階層と社会移動全国調査(Social Stratification and Mobility)」(以下,SSM 調査)のデータを用いた.SSM 調査は,1955 年から10 年おきに全国の20 歳から69 歳までの男女(女性は1985 年から)を対象として行われている調査である(2015 年調査は20歳から79 歳まで).本書では,1955 年から2015 年までのSSM 調査データを用いた.データの二次分析の使用に当たっては,2015 年SSM 調査データ管理委員会の許可を得た.
これらの章は,特別推進事業(研究代表者:白波瀬佐和子,課題番号:25000001)および東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター2017 年度課題公募型二次分析研究会「現代日本における格差・不平等の趨勢とメカニズムに関する研究」(研究代表者:盛山和夫)の研究成果の一部である.
第6 章では「日本版General Social Surveys」(以下,JGSS)の2000年,2001 年,2002 年,2003 年,2005 年,2006 年,2008 年,2010 2012 年のデータを用いた.調査対象者は全国の満20 歳から89 歳までの男女である.JGSS は,大阪商業大学JGSS 研究センター(文部科学大臣認定日本版総合的社会調査共同研究拠点)が,東京大学社会科学研究所の協力を受けて実施している研究プロジェクトである.JGSS─2000~2008 は学術フロンティア推進拠点,JGSS─2010~2012 は共同研究拠点の推進事業と大阪商業大学の支援を受けている.また,JGSS の二次分析に当たり,東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センターSSJ データアーカイブから各年の個票データの提供を受けた.
各調査に関わってこられた皆様,そして調査にご協力いただいた方々に対し,ここで記して深く感謝申し上げる.なお,本書は科学研究費補助金による特別研究員奨励費(DC2)「就業形態間における職業移動に関する社会学的研究──東アジアの階層比較に向けて」(課題番号:13J07904),特別研究員奨励費(PD)「失業経験者の職業経歴に関する社会学的研究」(課題番号:15J04049)による成果の一部である.また,本刊行物は,JSPS 科研費(課題番号:18HP5173)の助成を受けたものである.本研究の成果は著者自らの見解等に基づくものであり,所属研究機関,資金配分機関及び国の見解等を反映するものではない.