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あとがきたちよみ
『ちょっと気になる政策思想』

 
あとがき、はしがき、はじめに、おわりに、解説などのページをご紹介します。気軽にページをめくる感覚で、ぜひ本の雰囲気を感じてください。目次などの概要は「書誌情報」からもご覧いただけます。
 
 
権丈善一 著
『ちょっと気になる政策思想 社会保障と関わる経済学の系譜』

「おわりに」「知識補給 市場は分配が苦手なのに繰り返しでてくるトリクルダウン」(pdfファイルへのリンク)〉
〈目次・書誌情報はこちら〉
 
■本書の書評
hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)
web日本医事新報 二木立氏による書評
社会保険旬報No.2732(2018.12.11)大塚義治氏による書評
■関連ツイート
著者・権丈善一氏によるチラシ紹介
担当編集ツイート


おわりに
 
 2001年,僕がはじめて本を書き,その書名を『再分配政策の政治経済学』とした時,その序章に次のようなことを書いています.

多くの人は,わたくしが社会保障を考えると言いながら,なにゆえに,ほぼすべての章にわたって〈権力の話〉が登場するのかを奇妙に受け取られるかもしれないし,ヴェブレン,ミュルダール,それにガルブレイスの考え方が,分析の基礎になっていたり,ここ数年の研究のなかには,マキャベリの話などが出てくることのつながりを疑われるかもしれない.しかしわたくしのなかでは,これらはすべて,十分に,社会保障論なのである.これを弁明するためにも,わたくしが学部のゼミの時から「先生」であった藤澤益夫先生が,その著『社会保障の発展構造』のなかで,多角的な論題を取り扱いながら,一つの社会保障論の構築を試みた際に引用された古人の言葉を,ここにも引かせてもらおうと思う.

いくらいろいろな野菜がまじっていても
全体はサラダという名のもとにまとまっている
モンテーニュ

 これを書いたのは30代ですから,あれから,20年近く経ちました.このへのへの本第3弾では,いろいろな野菜が入っている社会保障論を自分なりに調理してみたという感じでしょうか.
 僕はよく,社会保障をたとえて,大海に浮かぶ小舟という話をしています.社会保障というのは,大海,つまり財政金融政策と人口構造の上に浮いている小舟のようなもので,小舟の様子は,大海の有り様次第なんですね.だから,社会保障の研究,制度設計を考える際には,「財政は分かりません,金融は分かりません,経済が分かりません」ではあってはならないわけです.
 僕たちが,これまで幾度となく見てきたように,社会保障に関する政治的な公約は,国民経済との関係を抜きにすれば,なんとでも書くことができます.そしてなんとでも書かれた社会保障に関する公約の実行可能性,持続可能性を見抜き,両可能性を備えたビジョンであるのかどうかを判定するためには,社会保障という小舟が浮かぶ大海──国民経済,特に財政金融政策──への関心は不可欠となります.
 ちなみに僕は,以前は「実行可能性(feasibility)」を中心に議論をしてきました.主に年金を語ったへのへの本第1 弾には,実行可能性という言葉が多くでてきます.しかし,ある頃から,当面の実行可能性があっても「持続可能性(sustainability)」のない出来事を話題の中心にしなければならない状況に入り,以降,実行可能性と持続可能性という2 つをセットにして語るようになってきました.そのあたりの事情は,へのへの本第2弾と本書第3弾を読んでもらえば,分かってもらえると思います.
 Warm Heart は大切です.社会保障の関係者は,Warm Heart のもち主で満ちています.しかし,Cool Head も備えなければ,実行可能性と持続可能性の両方を備えたあるべき姿を描くことができません.そういう思いも少し抱きながら,これまでいろいろと書き,いろいろなところで話し,そして今回は,この本をまとめてみました.

* * *

 今回も,勁草書房の橋本晶子さんにはお世話になりました.彼女は,はいはいと話を先に進めてくれ,いつの間にやらこの本の広告が大々的に出ていたり……まだ原稿を書いているのに(笑).僕には,逃げ場のない環境を作り出す背水の陣作戦は効果覿面のようで,おかげで本書も形にすることができたようです.
 この度も,本当にありがとうございました!
 あっ,それと,へのへの本第1 弾,第2 弾に続く,航空母艦から飛び立つ3機目の戦闘機は,これが最後の緊急発進となります! 第3弾の頃には,編集者の橋本さんから,「へのへのさん」と敬意をもって呼ばれていたへのへのもへじ──まぁ,本の内容よりも表紙で有名になった本だったし(笑)──を,表紙,裏表紙,そして背表紙に3 冊も書いてくれたわが家の画伯にもお礼を……どうもありがとう‼
 
2018 年7月30日
 
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