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『デジタルアーカイブの理論と政策』

 
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柳 与志夫 著
『デジタルアーカイブの理論と政策 デジタル文化資源の活用に向けて』

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はしがき
 
 デジタルアーカイブ学会が設立されて二年が経つ。本来ならまだ二年というところかもしれないが、個人的には「もう」二年という感じが否めない。私たちの講座で学会の事務局を引き受けていることもあり、設立準備から始まり、研究大会やシンポジウム、定例研究会等の開催、学会誌の発行、学会賞の創設、シリーズ『デジタルアーカイブ・ベーシックス』の刊行など、めまぐるしく動いてきたことがその背景にあるのかもしれない。そうした中で思っていたのは、そろそろデジタルアーカイブ論の基礎固めをしなければいけない時期に来ているということだった。すでに三回の研究大会を開催し、回を重ねるたびに発表件数も増加し、各地各所におけるデジタルアーカイブ構築・運用の事例、新しい技術適用事例が報告されていた。こうした時にこそ、少し原理的な部分についてもしっかり取り組んでおく必要を感じていたのである。もちろん、デジタルアーカイブ論は、最終的には現実のデジタルアーカイブの構築・利用の改善に役立つための実学であるが、そうであればなおさら現実への理論適用性を担保するための基礎理論が必要と思われた。
 これまで筆者は『知識の経営と図書館』(二〇〇九年)、『文化情報資源と図書館経営』(二〇一五年)と刊行していく中で、当初の図書館経営論から文化情報資源論、特にその政策・経営面に関心が移ってきた。デジタルアーカイブ論に文化情報資源論が集約されるわけではないが、理論面・政策面の両面でその突破口になりうるのではないか、というのがこの数年深くデジタルアーカイブに関わるようになってからの実感である。その意味でデジタルアーカイブには基礎理論に加えて、さらに政策論も必要なのである。もとより筆者ひとりでその責を果たせるようなことではないが、本格的な理論研究・政策研究のきっかけをつくることぐらいはできるのではないか、それが本書刊行の目的である。
 本書は、デジタルアーカイブの核となるデジタル文化資源の特性と活用を論じた第Ⅰ部、電子書籍や電子図書館が歴史的・理論的にどのようにデジタルアーカイブに関係しているのか・していないのかを考えた第Ⅱ部、それを受けてデジタルアーカイブの理論的考察と政策形成の方向性を論じた第Ⅲ部の三部構成となっている。第Ⅰ部・第Ⅱ部は既出論文をベースに新しい考察を加え、第Ⅲ部は両論とも今回の書下ろしである。第Ⅲ部については、まだ問題提起ができた程度ではあるが、批判を含めて今後の議論を呼び起こすことができれば望外の幸せである。
 
 
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