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『人生の歩みを追跡する』

 
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石田 浩・有田 伸・藤原 翔 編著
『人生の歩みを追跡する 東大社研パネル調査でみる現代日本社会』

「序章 パネル調査によるひとびとの「人生の歩み」の追跡」「あとがき」(pdfファイルへのリンク)〉
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序章 パネル調査によるひとびとの「人生の歩み」の追跡
 
藤原 翔・石田 浩・有田 伸
 
1.ひとびとの人生の歩みを追跡する意義と方法
 自分以外のひとびとがどんな人生を歩んでいるのか,つい気になってしまうことはないだろうか.身近な人であればなおのこと,自分とまったく関わりのない人でも,その人がどんな人生を歩んできたのか,そしてこの後の人生はどうなるのか,興味を感じることは少なくないだろう.最近のテレビ番組のなかでも,有名人が気になっていた同級生のその後の人生を追跡する番組や,終電後の駅前でたまたま出会ったひとびとの暮らしや人生の経歴に迫る番組などが多くの視聴者を集めているという事実も,「人生の歩み」に対するひとびとの関心の高さを示している.
 確かに人生には,進学,就職・転職,交際・結婚などさまざまな節目があり,そこで何らかの決断が迫られる.当然その決断は,その人の考え方や過去の経験など,本人の人となりが色濃く反映されたものとなるだろう.ただし,人生は必ずしも本人の思い通りにいくものではなく,それらの決断が順調な結果を招くこともあれば,逆に予想もしなかった逆境をもたらすこともある.後者の場合はさらなる決断が迫られ,そしてまたそれが次の結果と決断を生んでいく.使い古された表現ではあるが,まさに「人生はドラマ」なのである.だからこそ人は,ひとびとの人生の歩みに惹かれるのだろう.
 私たちがライフコース,すなわちひとびとの人生の歩みを学問的に探究していこうとする動機にも,実は似通った部分があるのかもしれない.上の学校に進学するか否か,どのように仕事を探してどんな仕事に就くか,仕事を辞めるか続けるか,結婚するか否か,子どもを持つか否か…….人生のこれらの分岐点においてひとびとはどのように考え,どのような決断を下すのか.そしてそれらの決断がさらにどのような結果を招くのか.これらを知りたいと思う気持ちが,ライフコース研究の動機となっているケースは,少なくないと思われる.
 ただし研究者がひとびとの人生の歩みに関心を持つ理由はそれだけではない.それは,ひとびとの人生の歩みを観察・分析することで,私たちの社会についてより深い理解を得られるためにほかならない.
 ひとびとの人生の歩みと私たちの社会には2 つの双方向的な関係がある.第1 に,社会とはひとびとが集まってできているものであるため,ひとびとの人生の歩みやそれに伴う変化が,そのまま社会の動きに直結することになる.たとえば,日本社会の少子化とは結局,ひとびとの未婚化・晩婚化,あるいはカップルが持つ子ども数の減少に起因する.そのため,ひとびとの人生のなかでこれらの現象がどのように,なぜ生じているのかを突き止めることで,社会の少子化のメカニズムを理解することができ,必要な場合はその対応策を考えていくことができる.
 またひとびとの人生の歩みを追跡することで,社会におけるさまざまな格差の生成・変化のメカニズムを理解することができる.ひとびとの間の格差は生まれたときからある程度は存在するだろうが,それが目にみえて大きくなるのは教育を受け,社会に出た後のことである.そしてそれらの格差は就職や結婚といったライフイベントが生じる際に一層大きくなっていく可能性がある.人生の歩みのなかでひとびとの間の格差がどのように変化していくのか,またそれは初期時点の有利/不利とどのように関連しているのか,これらを追跡することで社会の格差のより正確な理解が可能となるのである.
 第2 に,ひとびとが人生の歩みのなかで行う選択や,それが招く結果は,それぞれの社会の制度的・構造的な条件に制約され,規定される.たとえば,社会のなかに子育てと就業との両立を可能にする仕組みが十分に整っていない場合,新たに子どもを持った夫や妻は─実際には妻が圧倒的多数であるが─仕事を辞めたり,雇用形態を変えなくてはならなくなってしまう.このように社会の側もひとびとの人生に影響を及ぼしているため,ひとびとの人生の歩みを観察・分析することでそれぞれの社会が持つ特徴を浮き彫りにできるのである.
 このような問題関心に基づいて,本書ではひとびとの「人生の歩み」を追跡し,それを通じて今日の日本社会についての理解を深めていこうとするのであるが,本書では,大規模な社会調査データを用いて多くのひとびとの人生を同時に観察し,これらの問題をより確かな形で検討していこうとする点が大きな特徴である.このために用いるのが,通称「東大社研パネル調査」と呼ばれる継続的な調査のデータである.この調査については次節で概観するが,個人を追跡する大規模な社会調査を用いることの意義をここでは述べておきたい.
 まず大規模な社会調査データを用いることの意義は,個別のひとりひとりの人生を観察するなかから,ひとびとに共通する経験的な規則性とばらつきの全体像を明らかにすることができることである.特定の個人の生活史やオーラルヒストリーを聞き取る形で,人生の歩みを明らかにする方法もあるが,私たちが目指すのは,多くのひとびとの人生に潜む共通する部分を炙り出すことで,その社会に暮らすひとびとにみられる規則性を顕在化することである.またここでいう規則性がどの程度のひとびとに当てはまり,どの程度の散らばりを持つのかを示せば,規則性の確率的な根拠も明らかにすることができる.つまり,規則性のメカニズムに接近することが可能となる.大規模な調査データを用いなければ,このような枠組みからの科学的な営みは困難である.
 さらに1 時点の横断調査ではなく,同じ個人を長期間にわたり追跡するパネル調査のデータであることの意義も大きい.これまでの横断的な社会調査も人生の歩みについて同様の関心を持っていたかもしれない.しかし,そこで行われているのは,年齢の異なる個人の比較であったり,結婚している人と結婚していない人の比較であったりする.以前の自分と今の自分,今の自分とその後の自分を比較しているわけではない.横断調査は異なる個人を比較することによる歩みの記述であるが,パネル調査を用いることにより,同じ個人の変化の記述が可能になるのである.
 以上の問題意識と視角から,本書では,パネル調査の利点を最大限に生かして,ひとびとはどのような人生を歩んでいるのか,そして(ひとびとが人生を営んでいる)現代日本社会とはどのような社会であるのかを明らかにしていく.特に本書では現代日本社会における個人の生活の要素として重要な「就業・キャリア・貧困」「生活・健康」「家族」「社会・政治に対する意識・態度」の4つの側面にフォーカスし,これらの問題を検討していく.
 
2.「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」(JLPS)
 ひとびとの人生の歩みを跡付けるために,私たちは同じ個人を長期にわたり追跡していくパネル調査を実施してきた.正式な名称は,「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」(Japanese Life Course Panel Surveys: JLPS)であるが,実施主体の名前をとって通称「東大社研パネル調査」と呼ばれている.若年・壮年者を対象として,彼ら・彼女らの人生のなかで経験したさまざまなイベント(就職,転職,交際,結婚,出産),おかれている状況(職場環境,家庭の環境,友人や親子関係),生活時間の使い方(通勤,仕事,食事,余暇),健康,価値観・意識などに関して,定期的にたずねていくことにより,その軌跡と変化を丁寧に跡付けることを目的として,調査を行っている.
 東大社研パネル調査は,現在では5 つの調査により構成されている.2004年3 月に高校を卒業した生徒を追跡している「高卒パネル調査」(JLPS-H, Highschool students),2007 年時点で20-34 歳の若年層,35-40 歳の壮年層を追跡している「若年パネル調査」(JLPS-Y, Youth)と「壮年パネル調査」(JLPS-M,Middle-aged),2015 年に中学3 年生であった生徒とその親を1 年おきに追跡する「中卒親子パネル調査」(JLPS-J, Junior high school students),そして2019 年に20-31 歳層を対象とし,「若年パネル調査」の第1 回の調査とほぼ同じ年齢群の対象者に対して同様の方法で調査を実施した最新の「若年リフレッシュ調査」(JLPS-R, Refreshed youth sample),である.それぞれの調査の実施年と対象年齢を示したのが,図序-1 である.
 本書に収められている各章の論文は,「若年パネル調査」と「壮年パネル調査」を用いた分析である.そこでこの2 つの調査について以下詳細に紹介する.「若年パネル調査」と「壮年パネル調査」は,それぞれ日本全国に居住する20-34 歳(1972 年~ 1986 年生まれ)と35-40 歳(1966 年~ 1971 年生まれ)の男女を母集団として,選挙人名簿と住民基本台帳を用いて対象者を抽出している.全国の抽出地点を,10 の地域ブロックと市郡規模(16 大都市,人口20 万以上市,その他の市,町村)の組み合わせで層化したうえで271 地点を抽出した.さらにそれぞれの地点では,性別と年齢グループ(20-24 歳,25-29 歳,30-34 歳,35-40 歳)の組み合わせで層化し,対象者を抽出した.若年・壮年調査は,対象年齢以外は,調査設計・調査票もすべて同様であり,互換性が保証されている.
 表序-1 に示したのがWave 1 からWave 13 までの回収時期と回収状況である.なお,Wave とはパネル調査の回数を表す用語であり,例えばWave 13 とは初回から数えて13 回目の調査を示す.Wave 1,すなわち1 回目の調査は2007年1 月から4 月にかけて実施した.対象者には事前に郵便により1 回限りの調査ではなく追跡調査であることを伝え,了承を得た対象者に対して調査票を郵送した.調査会社の調査員が後日対象者を訪問して,対象者自身が記入した調査票を回収した(郵送配布・訪問回収法).Wave 1 の回収率(回収率(1))は,若年調査が35%,壮年調査が40%となっている.回収率(1)とは,調査票を郵送してアタックした総数から転居・長期不在・住所不明・その他(死亡・入院等)を除いた有効アタック数に対する有効回収票の割合である.若年が壮年よりも回収率が低く,表にはないが男性が女性よりも低い.Wave 1 の回収状況を分析した三輪(2008)によれば,この回収率は同時期に実施された他の調査と比較してほぼ同水準にあり,回答者の属性の偏りも他の調査と比較して大きくはないことがわかっている.
 その後毎年継続して1 月から3 月,あるいは4 月から6 月の時期に追跡調査を実施してきた.Wave 1 と同じ郵送配布・訪問回収の方法で実施してきたが,Wave 4 に関しては予算の関係で郵送配布・郵送回収の方法を用いたため,回収率が他の年度と比較してやや低くなっている.表序-1 のそれぞれの年度の回収率(1)は,当該年度のアタック数(前年度以降に調査を拒否した者,住所不明となり脱落した者などアタックできなかった対象者を除く)に対する回収数の比率である.回収率(2)は,Wave 1 で回収した対象者のうちどのくらいが残っているかを示す.Wave 13 では,若年調査のWave 1 で回収した3,367人のうちの52%の対象者から回収できたことを示している.
 パネル調査を継続していくと,調査にこれ以上協力することを拒否する回答者や転居などにより住所不明となりアタックできない回答者がでてくる.脱落の分析をした田辺(2012)によれば,20 歳前半の若年者,男性,引越し予定者で脱落傾向が強いことが明らかになった.そこで毎年の脱落者を考慮し,2011年には対象者の補充として追加サンプルを抽出した.2007 年当時に20-34 歳(若年調査)と35-40 歳(壮年調査)であった男女を母集団として,Wave 1と同一の手続きで対象者を抽出した.調査方法は,予算の関係から,郵送配布・郵送回収法を採用した.表序-2 に追加サンプルの回収状況を示した.2011年以降,継続サンプルと同様な形で毎年追跡しており,2019 年にはWave 9を実施した.調査方法は,第1 回と同じ郵送配布・郵送回収法を踏襲している.回収方法の違いからか,継続サンプルと比べると追加サンプルは回収率がやや低いが,継続サンプルと同年齢の回答者を補充し分析のケースを確保するという点からみると,追加サンプルの意義は大きい.
 
3.パネルデータを用いた社会学的研究
 本書は若年・壮年パネル調査のデータを用いた社会学的研究の成果である.パネル調査のメリットについては,同じく東大社研パネル若年・壮年調査の成果をまとめた石田(2017)がすでに論じており,また筒井他編(2016)などがまとまった入門書としてあるので,ここでは本書で扱われているパネルデータ分析の手法について説明する.
 
3.1 パネル調査データを用いた変化の記述
 横断的調査が個人間の差異についての情報しか得られないのに対して,パネル調査はミクロな個人のレベルで変化を観察することで,個人間の差異だけではなく,個人内の変化についての情報を得ることができる.もちろん,就業,婚姻状態,意識などのマクロの時系列変化そのものをみたければ,調査を繰り返すごとに年齢の分布が変化し,サンプルの脱落も生じるパネル調査ではなく,繰り返し横断的調査のデータを活用すればよい(山口 2004).しかし,パネル調査からは,マクロな時系列変化だけではなく,それがどのようなミクロな変化によって生じたのかという視点から,アプローチが可能となる.
 また,同一個人への調査を繰り返すことによって,1 時点だけではなく,複数時点の状態を観察できる.それによって,ある調査時点の状態だけではなく,調査期間中にどの程度その状態が続いているかといった継続率や,調査期間中に少なくとも1 度はその状態にあったことがあるかといった経験率についての集計が可能である.たとえば,第2 章(林雄亮)では,調査期間中に一度は貧困に陥った経験があるかどうかについての集計を行っている.このような継続率や経験率については1 時点の横断調査でも回顧的にたずねることで求めることが可能かもしれないが,注目する変数が収入をもとにした貧困,健康状態,意識などである場合,これらについて長期的な回顧情報を得ることは難しい.
 継続率や経験率よりもさらにふみこんで,個人の中でどのような変化が生じているのかを詳細に記述するためには,遷移行列または推移行列や移行行列と呼ばれる表を作成する.これは,t 時点とt+1 時点の回答にどのような変化が生じたのかを,まとめて集計したものである.これによって,注目する変数が時点間で変化しやすいのかどうか(あるいは安定しているのか),また変化するのであればどのようなカテゴリ間の移動が生じやすいか(生じにくいのか)を明らかにすることができる.たとえば第4 章(石田浩)では,主観的健康の推移を遷移行列から検討している.表ではなく図で示されることもある(第6章石田賢示).また,連続する2 時点の間をまとめて集計するのではなく,たとえばWave 1 とWave 12 といった特定時点の間でどのくらい変化があったのかをみることもできる(第5 章村上あかね).さらに,もし時点間で変化が生じなかったとしたら現状はどのようになっているのかに関する反事実的な分析を行うことも可能である(第3 章大久保将貴).このような記述が可能なこともパネル調査の意義である.
 対象としている変数が連続変数とみなせる場合については,安定性の指標として級内相関が用いられる.そもそもある変数に関心があるという場合,その平均値だけではなく,それがどのようにばらついているのかに関心があることが多い.個人i について,横断的調査を通じて得られた変数の値(yi)は,個人間でばらついており,変数の変動は個人間の差異に基づく.一方で,パネル調査を通じて得られた変数の全体の値(yit)は,個人間の差異だけではなく,個人内での変化も反映されており,その変動についても個人間の差異と個人内での変化の両方の情報が反映されている.この変数の全体の値(yit)の変動を個人間の差異に基づく変動と個人内の変化に基づく変動に分け,全体の変動に占める個人間の変動の割合を示したのが級内相関である.このような級内相関を利用して,複数の意識項目の個人内での変動を比較した研究もある(三輪・山本 2012).もちろん,時点で異なる変数の値の違いを変化とみるためには,安定性という視点と同様に誤差についても検討が必要となる(Hout and Hastings2016).こういった点で,慎重さが求められるものの,パネルデータを用いることで,変数の安定性がどの程度かを検討することが可能である.第9 章(藤原翔)では教育意識の,第11 章(永吉希久子)では,福祉国家の役割への支持についての級内相関が求められている.
 パネルデータといえば,後に説明するような因果効果の推定に利用できると考える場合が多いだろうが,以上のような社会の記述についても異なる見方を提供してくれる.これまでの横断調査(クロスセクション調査)は,個人間の差という視点から社会を記述してきたが,パネル調査によって個人内の変化という視点から社会を記述することが可能となる.さらに,個人内の変化が個人間で異なるという視点から記述することができる(第1 章有田伸).
 
3.2 パネル調査データを用いたアプローチ
 ここではパネル調査データを用いた標準的なアプローチとして,(1)固定効果モデル,(2)イベントヒストリー分析,(3)成長曲線モデルを紹介する.
 多くの社会学的研究は,x を独立変数(あるいは処置変数),y を従属変数(あるいはアウトカム変数)とした回帰分析から,この2 つの変数間の関連を明らかにしてきた.横断的な調査では個人間の差の情報からこれら2 つの変数の関連をみていたが,パネル調査では個人内の変化の情報からこれら2 つの変数間の関連を明らかにすることができる.これは,パネルデータを用いることで,因果推論が可能となるということと関連する.特に,パネルデータを用いた因果推論で重要となるのは,固定効果モデル(fixed effect model)と呼ばれる方法である.この方法によって,同一個人の複数時点のデータを収集することで,時間とともに変化しない観察されない異質性の影響を考慮したうえで,時間とともに変化する独立変数x が従属変数y に与える影響を推定することが可能である.この時間とともに変化しない観察されない異質性には,そもそも社会調査によって観察することが困難な個人の特性などが含まれる.時間とともに変化する独立変数x と時間とともに変化する従属変数y についての固定効果モデルは,「x が他の状態からその状態となることのy の変化に対する影響」(山口2009, p. 130)をみているといえる.同一の個人が未婚の状態から既婚の状態へと推移することによって幸福度がどのように推移するかをみることで,婚姻状態が幸福度に及ぼす影響を推定する,といった分析がその例である.これらの分析は,個人間の差異ではなく,個人内の変化の結果を利用して変数間の関連をみようとしており,x の係数は個人内効果推定量(within-effects estimator)とも呼ばれる.これが固定効果モデルのエッセンスであり,実験データではなく観察データから因果推論を行ううえでの強力で標準的な手法となっている.時間によって変化しない変数(一般には性別や学歴など)そのものの影響はみることができないが,それと時間とともに変化する変数の交互作用項を投入することが可能である(Allison 2009).本書の分析の多くも固定効果モデルを用いている.ただし,固定効果モデルの仮定は強く,それが十分に満たされない場合も多い(Allison 2009; 有田 2013; Bollen and Brand 2010; Imai and Kim 2019; 山口 2004).
 純粋に個人間の違いをみたい場合は,時間とともに変化する独立変数x と従属変数y の個人内の平均値を用いることによって,個人間効果推定量(betweeneffects estimator)を得ることができる.この分析には,時間とともに変化しない変数も用いることが可能である.横断的データに対して重回帰分析を行った場合と同様に,個人間の差を利用して変数間の関連をみようとする方法である.
 ランダム効果モデルあるいは変量効果モデル(random effect model)もパネルデータ分析ではよく用いられる方法である.この方法も,観察されない異質性を考慮してはいるものの,それが独立変数x と関連がない(独立である)という強い仮定を置いている.そのため,独立変数の効果の推定値は,個人内効果と個人間効果の推定値の重み付け平均となっている(Rabe-Hesketh and Skrondal2012).係数の解釈としては,「x が他の状態ではなくその状態であることとyの状態との関連」(山口 2009, p. 131)をみているといえる.ランダム効果モデルについても,個人間効果推定と同様に,時間とともに変化しない変数も用いることが可能である.
 個人内効果と個人間効果の両方を1 つのモデルで推定したい場合は,ハイブリッドモデル(hybrid model)が用いられる(Allison 2009).これは計量経済学では相関ランダム効果モデル(correlated random effect model)とも呼ばれており(Wooldridge 2014),またマルチレベルモデルの文脈でも同様の方法が提案されている(Rabe-Hesketh and Skrondal 2012).社会学で,ハイブリッドモデルというモデルが開発され,しばしば用いられるようになっていることは,個人内効果だけではなく個人間効果にも関心があり,そして個人内効果と個人間効果の違いにも関心があるからだろう.
 本書の多くの章が固定効果モデルを用いているが,その方法がすべてではない.たとえば従属変数のラグを用いたモデルなどもあり,どのような場合に使い分けるのかが議論されている(Angrist and Pischke 2008=2013).Vaisey and Miles(2017)は,アメリカのGeneral Social Survey のパネルデータを用いて,通常のOLS 重回帰分析,ランダム効果モデル,固定効果モデル,ハイブリッドモデル,そしてラグ付き従属変数(lagged dependent variable)モデルの係数を比較した結果を示しており,それぞれのモデルの特徴を整理している.また,構造方程式モデリングで,固定効果モデル,ランダム効果モデル,ラグ付き従属変数などは表現することができ,そこからさらに柔軟なモデルを展開することが可能である(Allison 2009; Bollen and Brand 2010).
 固定効果モデルに代表される以上のパネルデータ分析は,何らかのイベントがどのような結果をもたらすのかについて明らかにするものであった.一方で,そのイベントが生じた原因は何なのか,どのようなタイミングで生じるのかについても,時間的変化の情報を持つパネルデータ分析から検討することができる.イベントヒストリー分析(event history analysis)あるいは生存分析(survival analysis)はこのようなイベントの生起を対象とし,それが生じた原因を分析するうえで重要な手法である.これについては,時間によって変化する変数も時間によって変化しない変数のどちらについてもその影響を分析することが可能である.イベントヒストリー分析の手法はさまざまあるが,本書では,特にパネルデータとの親和性の高い離散時間ロジットモデルあるいは離散時間多項ロジットモデル(福田 2009)が用いられている.第6 章(石田賢示)では友人関係の獲得イベントや喪失イベントがどのような人に生じやすいのかをそれぞれ分析している.また,ある1 つのイベントの発生に注目するのではなく,競合関係にある複数のイベントの発生について分析することも可能である.第5 章(村上あかね)では賃貸から親同居持家と親別居持家という競合関係にあるイベントの生起について,第7 章(三輪哲・田中茜)では結婚イベントと破局イベントという競合関係にあるイベントの生起について,イベントヒストリー分析(離散時間多項ロジットモデル)を行っている.これまで,社会学的研究では,職歴,結婚,子どもの誕生などを,主に回顧的な情報を用いることで把握してきたが,所得や意識や態度などの,時間によっても変化し,回顧的にたずねても正確な情報が得られない変数を含めたイベントヒストリー分析を行うのであれば,パネル調査が必要となる.
 さらに,パネル調査によって複数時点の変数の情報が得られることで,変化のパターンを明らかにすることが可能となる.もっとも基本的な分析は,調査初期の水準(切片)や調査時点間あたりの平均的な伸び率(傾き)つまり直線的な変化がどの程度かを明らかにすることだろう.これは成長曲線モデル(growth curve model)や潜在曲線モデル(latent growth model)と呼ばれている.もちろんこのような水準や変化を示すだけではなく,それがどのような特徴によって異なるのかを分析することもできる.変化に直線を当てはめるのではなく,変化に曲線を当てはめることも可能である.またこれらの変化のパターンはいくつの集団に分けられるのか,また個人がどの集団に所属するかに影響を与える要因は何なのかを明らかにする方法もある(たとえば,Jung and Wickrama 2008).これは成長曲線モデルと潜在クラス分析をあわせた方法といえる.第1 章(有田伸)では,個人内での所得変化について,その分布や変化の個人差がどのような要因によって生じているのか(結果としての傾き)について分析を行っている.
 以上のようなさまざまなパネルデータを活用したアプローチが用いられている章を示したのが,表序-3 である.
 
4.本書の構成
 本書は以上のようなパネルデータの特徴を活用し「就業・キャリア・貧困」「生活・健康」「家族」「社会・政治に対する意識・態度」の問題にアプローチする.この4 つのテーマは,現代日本社会における個人の生活の要素として重要なものである.
 第1 部の「就業・キャリア・貧困」では就業やそれに基づく収入・所得などの視点からひとびとの変化に関する分析が行われる.まず,第1 章「誰が所得上昇を果たしているのか?─21 世紀日本社会の「右肩上がりの人生」─」(有田伸)が現在の日本社会で,所得上昇を果たしている就業者がどの程度存在しているのか,またその程度の違いは何なのかについて分析を行う.第2 章「若年・壮年期の貧困─世帯形成と世帯の収入源からみた動態分析─」(林雄亮)では,貧困状態に注目し,個人のライフコースを通じた所属世帯の変化や世帯員の変化とともに,どのように貧困に陥ったりあるいは貧困から抜け出したりするのかについて,その動態を明らかにする.第3 章「ライフコースにおける男女間賃金格差の生成─不平等と階層に着目して─」(大久保将貴)では,キャリアやライフイベントの変化と男女間収入格差が拡大していくプロセスに,絶対的水準に注目した不平等だけではなく相対的水準に注目した階層という視点からアプローチする.
 第2 部「生活・健康」では,健康,住宅,社会的孤立という視点からひとびとの変化についての分析が行われる.第4 章「健康格差はいかに生成されるのか?─ライフコースの流れに着目して─」(石田浩)では,ひとびとの主観的健康がライフイベント,職場の環境や仕事の仕方などによって,そして運動や食事の頻度や内容の影響をどのように受けるのかについて,個人間効果と個人内効果の両方に注目して検討する.第5 章「誰が持家に移行するのか─階層と家族に注目して─」(村上あかね)では,誰がどのような住宅に住んでいるのかに注目し,約10 年の調査期間中にどのような住宅居住があったのか,誰が持家に移行するかについて,分析を行う.第6 章「社会的孤立を生み出す2 段階の格差─友人関係の獲得と喪失の過程に着目して─」(石田賢示)では,誰が孤立状態であるのかという従来の問いに加え,誰が孤立に至りやすいのか,そしてまた誰が孤立から抜け出すのかに注目し,それぞれに影響を与える要因を分析する.
 第3 部は「家族」に関して,結婚,ワーク・ライフ・バランス,そして教育意識から検討する.第7 章「どのような「婚活」が結婚へと導くのか」(三輪哲・田中茜)では,交際から結婚に至る過程において,どのような「婚活」が,結婚や破局と結びつきやすいのか分析する.第8 章「職場のワーク・ライフ・バランス環境とパートナー関係」(不破麻紀子)は,近年の職場のワーク・ライフ・バランス環境の整備が,パートナーとの会話や食事,また結婚満足度や仕事満足度に与える影響を明らかにする.第9 章「高学歴志向の差異と変化─ライフイベントに注目して─」(藤原翔)は,高学歴志向について個人間の差異と個人内の変化およびその学歴による差に注目した分析を行う.
 第4 部では,「社会・政治に対する意識・態度」という視点から,ひとびとの変化を追跡する.第10 章「希望と満足は政治を動かしたか─社会・政治意識と政治状況の相互作用の解明─」(田辺俊介)は,2007 年から2018 年までの社会・政治的状況がひとびとの希望や生活満足感に与える影響や,逆にひとびとの行動自体が政治的状況とどのように関連しているのかを分析する.第11章「福祉国家に対する支持の変容─雇用・家族リスクの拡大は何をもたらすのか─」(永吉希久子)は,雇用と家族をめぐるリスクの高まりが,福祉国家の支持に対してどのような影響をもたらしたのかについて分析を行う.
 最後に終章では,各章の分析から示された知見を基に,ひとびとの人生の歩みを通してみえてくる今日の日本社会の姿について議論を展開する.なお紙幅の都合上本書に載せられなかった補表などは本書専用Web ページ(https://csrda.iss.u-tokyo.ac.jp/panel/outcome/ayumi/)に掲載されている(次ページのQR コードからアクセスできる).
 以上で,パネル調査データを用いた分析の準備は整った.では次章からは,実際にパネル調査データを分析することで,ひとびとの「人生の歩み」を追跡していこう.
 
(注、図表、参考文献は省略しました。pdfファイルをご覧ください)
 
 
あとがき
 
 本書で用いられている東大社研パネル調査の若年・壮年パネル調査は,2007年に開始された.その後欠かすことなく毎年調査を実施することができており,2020 年の1 月から3 月にかけては,第14 回目のWave 14 の調査を計画している.「継続は力なり」で,より長期にわたり調査データが蓄積されることで,対象者が多様なライフイベントを経験するようになり,それぞれのイベントの生起に関する分析が可能になる.たとえば,この12 年間で子どもの誕生は多くの対象者が経験するイベントとなりつつあり,離婚を経験する方もまだ数は限られているがおられる.
 序章でも触れたように,母集団を代表する形で抽出された大規模なパネル調査データを用いる研究のメリットは計り知れない.大規模データであると,レアなイベントを経験した対象者と出会うことができる.同じイベントであっても,たとえば子どもの誕生が早い人と遅い人といったように,個人間の違いがあることがわかってくる.このような違いを考慮することにより,推論したい母集団でイベントが生起する確率的な根拠を調査により明らかにすることができる.さらにパネル調査であることの利点を生かすことにより,時間の流れとともにひとびとの間で見られる違いを,人生の歩みの多様性として丁寧に描き出すことが可能となる.比較的多くのひとびとが経験するライフコースとはどのような軌跡なのか,「典型的」でないライフコースの歩みとはどのようなものがあるのか,といった時間軸に沿った形での個人の変化の多様性を学ぶことができる.そして異なるライフコースの軌跡が,母集団においてどのように確率的に出現するのかを推測することができる.このように本書は,ひとびとの人生の軌跡を大規模なパネル調査によって明らかにしようとしてきた試みである.
 ここではひとびとの歩みに着目してきた研究とパラレルな形で,個人的な人生の歩みに引き付けてこの研究プロジェクトとの関わりを述べることをお許しいただきたい.私が東京大学社会科学研究所に着任したのは,1995 年である.長くアメリカとイギリスで勉強し教鞭をとってきたあとの転身であった.長期にわたり日本社会を外から見てきたので,一度母国に戻り内から「参与観察」したいという思いがあったのだと思う.日本に帰国してできれば良いなと思っていたことのひとつに,質の良い社会調査データの創出と共有があった.日本というフィールドに身を置くことにより,日本人を対象とした調査を企画・実施し,自ら調査データを創り出す過程に加わりたいと思っていた.また日本に散在する貴重な調査データを収集し,共有する仕組みを作ることができないか模索していた.海外では,2 次分析(他の研究者が集めたデータを2 次的に分析する)ためのデータアーカイブがあり,自分自身の研究でも大きな恩恵を受けた.日本にもこのようなアーカイブがあれば日本の社会科学的実証研究に役立つのではないか,という思いがあった.
 後者については,社会科学研究所の附属施設である社会調査・データアーカイブ研究センターの前身である日本社会研究情報センターが1996 年に新たに発足し,そこに設置されたSocial Science Japan Data Archive(SSJ データアーカイブ)が1998 年から社会調査データの学術研究のための2 次利用に向けた公開を開始した.社会科学研究所に保管されていた調査を電子化したものが公開データの第1 号で,他機関の研究所から寄託を受けた調査データも公開した.予想外であったのは,利用者が限られていたことである.初年度(1998 年)には276 のデータセットを公開したが,利用申請研究者はわずか14 名であった.当時はまだ2 次分析という考え方が社会科学者の間では普及しておらず,1 次分析(自分で調査データを収集し分析すること)の方が,価値が高いと思われていた.幸いにも,2 次分析を紹介する教科書の出版,2 次分析のためのセミナーなどの企画によって,現在ではSSJ データアーカイブに利用申請を行う研究者の数は,年間4,000 名ほどになっている.
 社会調査データの創出に関しては,2000 年に開始された日本版総合的社会調査(Japanese General Social Survey: JGSS)の立ち上げにかかわることができたのは幸運であった.東京大学社会科学研究所と大阪商業大学比較地域研究所の共同プロジェクトとして発足したもので,日本全国に居住する20 歳から89歳の男女が母集団の調査である.アメリカで1972 年から実施されているGeneral Social Survey(GSS)をお手本とした反復横断調査という形式の調査である.「反復横断」というのは,定期的に同じ母集団に対して,類似の質問項目による調査をすることで,その時点ごとの対象者の行動や意識を明らかにするものである.社会全体の横断的な姿とその変化を記述することを目的としている.しかし,同じ個人を追跡していく縦断調査ではないので,個人レベルの変化を記述することはできない.
 2000 年代に入った当時には,海外での調査データの主流は,横断調査ではなく同じ個人を追いかける縦断(パネル)調査へすでに移行していた.個人の変化に関する分析は,個人から回顧的に情報を収集するのではなければ,同一個人を追跡して繰り返し観察していくことが必須である.それにより,たとえば結婚前と結婚後で幸福度が向上するのかをはじめて検証することができる.しかし日本では,特に若年を対象としたパネル調査の蓄積は限られていた.そこで社会科学研究所の資金を用いて2004 年3 月に卒業した高校生を追跡する「高卒パネル調査」を開始した.この経験を生かして2007 年から実施したのが,本書で扱っている若年・壮年パネル調査である.幸いなことに研究資金を継続して確保することができ,冒頭に述べたように第14 回目の調査を実施するまでに至った.
 調査データを着実に積み上げるだけではなく,パネル調査の特性を生かした研究についても近年飛躍的に蓄積が進んできたといえる.私たちの研究プロジェクトでも,序章に述べたようにパネル調査データを分析するさまざまなアプローチを採用し,パネル調査の利点を最大限に生かした分析を目指してきた.果たしてその成果が実を結んだかは,読者の判断に委ねることになる.
 本書は,研究プロジェクトのメンバーが取り組んでいるさまざまな研究テーマの中で,限られたトピックに絞って編集したものである.このためプロジェクトに参加している他のメンバーの研究が紹介されていないことが,個人的にはとても残念である.私たちの研究プロジェクトのウェブサイトをご覧になると,東大社研パネル調査プロジェクト・ディスカッション・ペーパーシリーズという形でプロジェクト関連の研究成果を公開している.ご参考にしていただければ幸いである(https://csrda.iss.u-tokyo.ac.jp/panel/dp/).
 私自身は,2020 年3 月に定年を迎えることになるが,その前に東大社研パネル調査の成果をこのような編集本としてまとめることができたのは,望外の喜びである.これはひとえに各章の執筆者の皆さんと特に共編者の有田伸さん・藤原翔さんのご尽力の賜物である.
 最後に少し長くなるが,謝辞を述べておきたい.東大社研パネル調査プロジェクトでは,さまざまな形で資金援助を受けてきた.本研究は,日本学術振興会の科学研究費補助金・基盤研究(S)(18103003,22223005),特別推進研究(25000001,18H05204)の助成を受けたものである.東大社研パネル調査プロジェクトの運営と調査の継続にあたっては,東京大学社会科学研究所の研究資金と人的支援,株式会社アウトソーシングからの奨学寄附金を受けた.研究所の歴代の所長(仁田道夫,小森田秋夫,末廣昭,大沢真理,佐藤岩夫)からは,プロジェクトの活動の意義を理解し適宜必要なときに支援の手を差し伸べていただいた.研究所の附属施設である社会調査・データアーカイブ研究センターには,職業・産業コーディングとクリーニング,SSJ データアーカイブからの調査データ公開に関して援助を受けた.これらの大規模な資金と組織的支援がなければ,このような形で研究プロジェクトを継続してくることは不可能だった.記して感謝したい.
 東大社研パネル調査プロジェクトのメンバーは,入れ替わりがありつつ少しずつ拡大し,現在では教員,ポスドク,大学院生を合わせて総勢50 名ほどのグループとなった.パネル調査実施委員会のメンバーには,毎年途切れることなくパネル調査を継続するために,調査企画・調査票作成・調査実施の手配・調査会社との調整・納品データのチェック・コーデイングとクリーニング作業とその監督といった一連の作業を担っていただいた.ここではひとりひとりお名前は挙げないが,実に多くの方のお世話になった.また調査の実務を依頼した中央調査社の担当者にもお骨折りいただいた.お礼を申し上げる.
 東大社研パネル調査プロジェクトの研究会および学会報告・成果報告会等の参加者からは,本章のもとになった報告に貴重なコメントをいただいた.なお本書での東大社研パネル調査の使用にあたっては,東大社研パネル調査運営委員会の許可を受けた.
 勁草書房の松野菜穂子さんには,東大社研パネル調査プロジェクトの発足当初から関心をもっていただき,『格差の連鎖と若者』3 巻シリーズに続き,本書の刊行を勧めてくださった.松野さん退職後は,宮本詳三さんが引き継ぎ,丁寧に本書の編集を担当していただいた.記してお礼申し上げる.
 言うまでもないことだが,長期にわたりパネル調査を継続できているのは,調査の対象者が毎年真摯に回答を続けてくれているからにほかならない.蓄積された調査データがなければ,この研究プロジェクトは成り立たない.その意味でプロジェクトへの最大の貢献者は,調査対象者と言っても過言ではない.心から感謝申し上げる.
 本書は,東大社研パネル調査を素材とした研究会の現時点での研究の到達点を示すひとつの指標でもある.ひとびとの人生の歩みがあるように研究会の歴史もその歩みを物語る.もともと研究関心をある程度共有しながらも多様なテーマに関わるメンバーが集い,議論を重ねるなかで研究テーマだけでなく研究のアプローチや分析の手法も少しずつ変化してきた.それがメンバーの生み出す成果にも如実に反映されている.さらに今後,研究会の新たな歴史がどのように築かれていくのか,見守っていただければ幸いである.
 
2019 年12 月
石田 浩
 
 
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