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『実務解説 行政訴訟』[勁草法律実務シリーズ]

 
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大島義則 編著
『実務解説 行政訴訟』[勁草法律実務シリーズ]

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はじめに
 
 本書『実務解説 行政訴訟』は、行政事件訴訟法の定める各訴訟類型の制度概説を行った上で、争点となりやすい個別論点を取り上げて論点解説を行う法律実務書である。訴状、準備書面、仮の救済の申立書等の主張書面において各要件の該当性に関する主張を起案する際に、ハンドブックとして手元に置いて使用することを想定している。
 そのため、本書は、行政訴訟を受任した弁護士等の行政訴訟を提起・追行する者を想定読者としている。また、本書の内容は、行政法を勉強中の学生や各種資格試験受験生にも役立つものであり、学修用のハンドブックとしても機能するものと考えている。
 序章「行政事件訴訟における事案検討の手順」では、行政紛争事案を検討する際の思考プロセスや検討方法について概説をしている。行政紛争事案を検討する際の思考の流れとして、①訴訟類型・仮の救済の選択⇒②訴訟要件論⇒③本案論⇒④訴訟の終了(判決等)という4 段階のステージが存在する。序章では、この①〜④の全体像について解説した。
 第1 章~第8 章はそれぞれ「Ⅰ 制度概説」と「Ⅱ 論点解説」から構成されている。各訴訟類型の概要をざっと知りたい方はまずは各章冒頭の制度概説を読んで全体像を把握することが有益であろう。制度概説の中では、[取消─1]などと論点の目次を示して論点解説への誘導を図っている。より深く個別論点の内容を知りたい方には、論点解説を読んでいただくことになる。論点解説では、特に、訴状や準備書面で実際に起案することになる②訴訟要件論や③本案論を中心として詳細な解説を行っている。個々の論点解説の冒頭では解説本文のPOINT を簡潔に示しており、リサーチがしやすいよう工夫をしている。なお、取消訴訟を扱う第1 章では、他の抗告訴訟と重なる共通部分の総論的な解説を含むため、分量がやや多くなっている点にご留意願いたい。
 本書の内容面の特徴として、情報公開法に基づき入手した平成16 年行訴法改正時の内閣法制局提出書類及び法案説明資料を参照するほか、行政事件を担当する裁判官の書籍を重視して執筆している点が挙げられる。このような方針を採用しているのは、改正当初の立法者意思や裁判所における実務運用を踏まえた上で、裁判所も説得可能な有効な攻撃防御方法を提案できるようにするためである。
 もちろん事案によっては判例や裁判所の見解に抗うべき局面も生じてくると思われるので、本書を活用する際はこの点にご留意願いたい。なお、情報公開により入手した資料については研究的価値も有すると思われるため、執筆の際に参考にした開示資料は勁草書房のウェブサイトにおいて公開したい。
 本書の執筆陣は、「行政訴訟の攻撃防御方法研究会」(研究代表:大島義則)のメンバーである。もともと、本研究会のメンバーの一部により構成された「行政事件訴訟の攻撃防御方法研究会」(主任研究員:大島義則)は、平成29 年1 月1 日~同年12 月31 日を研究期間として、公益財団法人日弁連法務研究財団の財団研究「行政事件訴訟の攻撃防御方法の研究」(研究番号125)を実施していた。当該研究の成果は、日弁連法務研究財団編『法と実務 vol.15』(商事法務、2019)に掲載されている。本研究会は、この財団研究の研究期間が過ぎた後も任意の研究会として存続し、メンバーを一部拡充して成立したものである。本研究会は、行政事件訴訟に関する研究・教育活動をすることを目的としており、本書はその成果の一部である。現在、行政事件訴訟を取扱う弁護士はそれほど多くない状況にあるが、行政事件訴訟の活性化を目指して、今後も様々な活動をしていく所存である。
 本書が行政事件訴訟を取扱う実務家や行政法学修中の方のお役に立てるのであれば、筆者らの望外の幸せである。最後に、本書執筆のために開催した各研究会にオブザーバーとして参加してくださった横田明美氏(千葉大学准教授)、本書の企画・出版にあたって大変お世話になった勁草書房編集者の山田政弘氏に、厚く御礼申し上げたい。
 
令和2 年2 月
弁護士 大島義則
 
 
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