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『最新教育原理 第2版』

 
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安彦忠彦・石堂常世 編著
『最新教育原理 第2版』

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まえがき
 
 本書は、新学習指導要領の内容を念頭に置き、教職科目「教育原理」のテキストおよび教育学を学ぼうとする学部学生向けの入門書として編集・刊行されたものである。編者の願うところは、今日の山積する学校教育上の諸問題について、読者に必須の基礎的・基本的な知識と教養を身に付けさせるとともに、併せて、読者を教育学・教育研究へ効果的に導きたいということである。この意味で、教育に関心をもつ一般の人や、教職志望の社会人の方にも、必ず役立つようにと心がけた。
 この方面のテキストは、昔から類書が多く、どれも特徴があり優れたものもあるが、本書は、2004(平成16)年に本出版社から刊行し、幸いにして版を重ねた『現代教育の原理と方法』を全面的に改訂し、大幅に内容を変えたので、新しい書名で刊行したものの第2版である。しかし、その特徴は基本的に旧著を踏襲しており、一方で、教育学を学ぶ学生および教職を志す学生に、教育学の「基礎的・基本的な知識」を提供するとともに、他方で、現在の学校が直面している「様々な現代的課題」についても幅広く触れている、という点である。とくに教職志望者に対しては、一般社会から、教職の専門性や教師の力量の高度化が強く求められている今、広い視野と深い専門教養と高い実践的力量をそなえた、省察力のある品性の優れた教師が、理想像として念頭に置かれていることを強調しておきたい。この特徴については、以下にもう少し詳しく述べて、本書の趣旨を理解していただこう。
 第一に、類書と同様、学校教育の諸分野に関する基礎知識を、人名、事項など、できるだけ網羅することとした。それは、「教育原理」ないし「教育学入門」として必要な基礎知識を欠かすことはできない、と考えたからである。そのために、それらを要約的に、わかりやすく説明することに留意したとともに、「索引」をやや多めにして便宜を図っている。読者は、そのような努力のあとを、本書の至る所に見るはずである。
 第二に、学校の抱える最近の教育課題については、その研究成果や国内の事情・国際的な動向を含めながら論じていること、にも注意してほしい。とくに、2020 年4月から正式実施の学習指導要領で新たに展開される道徳教育、外国語教育、特別支援教育に関する章がかなり書き改められている。この点については、章によって多少の違いはあるが、最近の主な教育課題には、ほぼすべて論及している。論じ尽くせていない点もあるが、それは主に紙数の制約があるためであり、ご寛恕願いたい。
 第三に、一般社会から強く求められている、教師の臨床的実践能力を育て、高めるよう十分配慮した、という点がある。この点から見て、類書にない本書の最も重要な特色は、小学校の「外国語科・外国語活動」や「特別支援教育」という新しい実践領域についても、それに一章を当てて正面から論じていることである。一般的には、これらの領域はやや特殊なので、あまりこの種のテキストで論じられないのであるが、本書は、今後の学校教育で最も注目される重要なものと考えて、あえて独立に取り上げた。
 以上のほかに、本書の最後に、各章の「参考文献」を一覧で示したが、これは読者に向けて、今後の一層の勉学の助けとなるものを、それぞれの章の分担執筆者に選んでいただいたものである。読者は、それらの文献を通して、より深く興味や関心をもった専門的な分野に踏み込み、さらにその分野の展望を得るよう努めてほしい。
 現在、「公教育」の中心たる「学校教育」は、国際学力調査などにより世界的に関心の的であるが、学校外の「私教育」つまり「教育一般」についても、とくに日本では危機的な状態にある。本書から、そのような状態を全体的・多面的に知り、今後、どこをどのように改善していけばよいのかについて、読者が少しでも明確な示唆と見通しを得て、教育に携わってもらえればと願っている。とくに、教職を志している学生や社会人の方々には、その教育的力量の向上のためにも、本書が役立つことを確信し、また期待するとともに、併せて読者各位から本書へのご批正をいただければ幸いである。
 
2020 年3月
編者 安彦忠彦
 
 
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