2022年6月、アメリカの連邦最高裁でロー対ウェイド判決を覆す判断がなされ、人工妊娠中絶にかんする規制は各州の裁断に委ねられることになりました。「リプロダクティブ・ライツ」のなかでも論争的な「人工妊娠中絶」をめぐる判断に、注目が集まるとともに議論が交わされています。全米の半数以上の州で中絶が厳しく規制され、アメリカ社会、とりわけ女性と妊娠の可能性のある人々に大きな影響を与える見通しです。日本の状況はアメリカとは異なるものの、この問題をとらえなおす意義はいまなお大きくあります。その土台ともなる、重要な論争が1990年代半ばに展開されていました。江原由美子編『生殖技術とジェンダー[フェミニズムの主張3]』(1996年9月刊行、https://www.keisoshobo.co.jp/book/b26369.html)に収められた井上達夫氏と加藤秀一氏の議論は、30年後のいまも古びていません。お三方のご了承のもと、期間限定でお二人の議論と、編者である江原由美子氏の解題を部分公開いたします。ぜひお読みください。[編集部]
江原由美子編『生殖技術とジェンダー[フェミニズムの主張3]』より期間限定無料公開[2022年8月8日まで]※公開終了しました。
第一章 人間・生命・倫理[井上達夫]
1 憂鬱
2 線引き問題
3 胎児と生命権
補論 生命倫理と公論の哲学
第二章 女性の自己決定権の擁護――リプロダクティヴ・フリーダムのために[加藤秀一]
1 女性の自己決定権――何が問題か
2 中絶の批判に対する反論――井上達夫氏の所論を中心に
3 リプロダクティヴ・フリーダムの方へ
第三章 胎児・女性・リベラリズム――生命倫理の基礎再考[井上達夫]
1 はじめに
2 「胎児の味方は女性の敵」か?
3 「線引き」の誤謬はどこにあるか――葛藤論の視点
補記
第四章 「女性の自己決定権の擁護」再論[加藤秀一]
1 「女性の自己決定権の擁護」について
2 女性の自己決定権を再び擁護する
3 おわりに――「生命権」の問題
「論争」の余白に
第九章 生命・生殖技術・自己決定権[江原由美子]
2 「胎児の生命権」対「女性の自己決定権」?――井上・加藤論争の論点
【訂正・付記】
第二章45頁14行目:[誤]不定的 → [正]否定的
第二章51頁1行目:[誤]公論 → [正]行論
第三章105頁13行目:『生の領分(Life’s Dominion)』(Dworkin[1993])→ 後年に邦訳『ライフズ・ドミニオン――中絶と尊厳死そして個人の自由』(水谷英夫・小島妙子訳、1998年、信山社)刊行
第三章105頁最終行:[誤]「何が神望か」をめぐる → [正]「何が神聖か」をめぐる
江原由美子編
『生殖技術とジェンダー[フェミニズムの主張3]』
1996年9月刊行、ISBN:978-4-326-65192-4
四六判・444ページ、定価3,960円(税込)
https://www.keisoshobo.co.jp/book/b26369.html
【勁草書房の関連書籍】
塚原久美『中絶技術とリプロダクティヴ・ライツ』https://www.keisoshobo.co.jp/book/b166045.html
江口聡編・監訳『妊娠中絶の生命倫理』https://www.keisoshobo.co.jp/book/b93985.html
松本彩子『ピルはなぜ歓迎されないのか』https://www.keisoshobo.co.jp/book/b26481.html
山根純佳『産む産まないは女の権利か』https://www.keisoshobo.co.jp/book/b26468.html
ジゼル・アリミ/アニック・コジャン著、井上たか子訳『ゆるぎなき自由』https://www.keisoshobo.co.jp/book/b594019.html
落合恵美子『近代家族とフェミニズム 増補新版』https://www.keisoshobo.co.jp/book/b607051.html
瀬地山角・加藤秀一・坂本佳鶴惠編『フェミニズム・コレクションI』(品切)https://www.keisoshobo.co.jp/book/b24955.html