あとがきたちよみ
『新しい図書館でイベントを企画する――石川県立図書館の挑戦』

About the Author: 勁草書房編集部

哲学・思想、社会学、法学、経済学、美学・芸術学、医療・福祉等、人文科学・社会科学分野を中心とした出版活動を行っています。
Published On: 2026/5/19

 
あとがき、はしがき、はじめに、おわりに、解説などのページをご紹介します。気軽にページをめくる感覚で、ぜひ本の雰囲気を感じてください。目次などの概要は「書誌情報」からもご覧いただけます。
 
 
田村俊作 監修
宮原佑介・空 良寛・長谷部涼子 著
『新しい図書館でイベントを企画する 石川県立図書館の挑戦』

「はじめに」「おわりに」(pdfファイルへのリンク)〉
〈目次・書誌情報・オンライン書店へのリンクはこちら〉
 

*サンプル画像はクリックで拡大します。「はじめに・おわりに」本文はサンプル画像の下に続いています。

 


はじめに
 
 二〇二二年七月に新たに開館して以来、石川県立図書館には多くの方々が訪れています。
 開館に際して立てた来館者の目標数値は年間一〇〇万人でしたが、年度途中に開館した二〇二二年度はともかく、二〇二三年度には早くも目標値を上回る一〇二万人を記録しました。来館者数はその後も順調に増え続け、二〇二四年度には一一九万人に達しました。二〇二五年度も引き続き毎月前年度を上回る来館者数を記録しました。
 なぜ石川県立図書館は好調をキープし続けているのでしょうか。
 中心部を構成する円形の大閲覧空間は圧倒的な迫力で来館者に迫ってきます。一〇〇種類以上もの椅子やソファがそれぞれにふさわしい場所に置かれ、建物の魅力にいろどりを添えています。石川県立図書館は魅力的な施設です。
 でも、それだけではありません。円形の大閲覧空間では、本にそれほど興味を持っていない人でも思わず手に取ってしまいたくなるように、ユニークなテーマ別に選ばれた本が表紙を見せて並べられています。赤ちゃん連れの方でも誰でも気兼ねなく来館できるように、館内はおしゃべり自由です。他の人たちに配慮してでしたら、写真撮影も自由です。楽しく、充実した時間を館内で過ごしていただける工夫が随所にこらされています。
 私たちにとって、イベントも石川県立図書館が伝える魅力の重要な一部です。ここで私たちが想定しているイベントは、人々を集めて行う講演会やトークショーなどですが、展示会や壁などを使ったパネル展示などもイベントの範囲に含めています。
 人々の興味をかき立て、今まで図書館に出向かなかったような人まで行ってみたくなるようなイベント、そして、イベントに参加した人たちを、本を通じてさらに知的世界の探究へといざなうようなイベントはどんなイベントなのか。
 本書では、宮原佑介さんを中心に、空良寛さん、長谷部涼子さん、磯貝祐喜さんという、新しい石川県立図書館の立ち上げに携わった皆さんが、図書館を立ち上げ運営する際に検討したことや実践したことを説明しています。さらにイベントに焦点を当てて、図書館にふさわしいイベントはどのようなもので、どのように実施すればよいのかについて考え、工夫し、実践してきた経験を整理し、図書館における効果的なイベントについて実例を交えて解説しています。イベント開催の手引きとなることを意図して書いたものです。
 本書は全八章から構成されています。前半の四章は、新しい図書館について、構想から開館後の運営まで経験したことを説明しています。新しく図書館を作ろうとしている皆さんの参考になればと思っています。第五章から第八章はイベントについて企画から開催までの検討事項を、広報も含めて解説しています。
 なお、本書が扱っているのは主に二○二四年度までのイベントで、二○二五年度に新たな工夫を加えて実施しているさまざまなイベントは取り上げていません。円形大閲覧空間の二階で開催される石川県立図書館主催の企画展示や、能登半島地震関連で続けている数多くのイベントも扱っていません。そうした意味で、本書は新しい石川県立図書館のイベント関連活動の全貌を伝えるものではありませんが、その拠って立つ考え方や工夫のエッセンスはお伝えできていると考えています。
 本書を一番読んでいただきたいのは、図書館で働く皆さん、図書館を設置している自治体の皆さん、新たな図書館の建築を計画している自治体・設計者の皆さんです。「来館者を増やすなんて難しい」「イベントを企画するなんて大変」「図書館がなんでイベントを企画するの?」そう思ったら、ぜひ読んでみてください。
 読者の皆さんが本書から、図書館をより良く運営するためのヒントを少しでも得ていただければ嬉しい限りです。
 
二〇二六年三月
石川県立図書館長 田村俊作
 


 
おわりに
 
 イベントの積極的な開催は図書館の施策として正しいのか、効果があるのか。
 どのようなイベントが効果的か、どんな広報をすればよいのか。来館者が増えても本を読む人が増えなかった場合、そのイベントの開催は図書館として正しいのか。私たちは最初から答えが分かっていたわけではなく、手探り状態でした。
 時に参加者が一人しかいなかったり、着ぐるみに入ってから閉所恐怖症である自分と出会い体調不良になったり、大勢の前でピアノを弾いたり、子ども相手に本気でボードゲームで戦ったりしながら、徐々にコツをつかんでいきました。
 イベントを重ねるにしたがって、おすすめの本を聞かれたり、イベントで展示していた本を借りたいと言われたり、利用者の皆さんから直接意見を聞ける機会も増えていきました。これらの声を大事にしながら日々の図書館運営とイベントの企画を今後も続けるつもりです。
 下げてもよい敷居は下げる。これが今の図書館、あるいは他の公共施設にも言えることだと思います。
 図書館の来館者数や貸出冊数の全国的な減少などの暗いニュースを冒頭に説明しましたが、小さなきっかけで本を読む人や図書館を利用する人が増えると確信しています。その小さなきっかけにイベントがなり得ると確信できたことが本書を書くきっかけになりました。
 紹介してきた事例は好事例、悪事例どちらにとっていただいても問題ありません。本書が読まれることで図書館が少しでも変わり、「なんだか楽しそう」と気軽に図書館に来る人が増えれば幸せです。
 
石川県立図書館の窓辺から
宮原佑介
 
*石川県立図書館の写真集がホームページにあります。こちらもぜひご覧ください。
https://www.library.pref.ishikawa.lg.jp/category/aboutlibrary/2996.html 
 
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