あとがきたちよみ
『教育思想のポストモダン 増補改訂版――近代批判のゆくえ』

About the Author: 勁草書房編集部

哲学・思想、社会学、法学、経済学、美学・芸術学、医療・福祉等、人文科学・社会科学分野を中心とした出版活動を行っています。
Published On: 2026/6/17

 
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下司 晶 著
『教育思想のポストモダン 増補改訂版 近代批判のゆくえ』

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増補改訂版へのはしがき
 
 ポストモダン。近代批判。
 こうした言葉を聞かなくなってからずいぶんと時間がたった。もちろん、本書の初版を上梓した二〇一六年にもこれらのタームはすでに過去のものとなってはいたが、それでも残り香はあった。だが今や、それすら失われてしまった。私の記憶には、確かにある。しかし一般には、まるで存在すらしなかったかのようだ。
 こうした状況にもかかわらず、あるいはだからこそ、ここに『教育思想のポストモダン』の増補改訂版をお届けできることを、心より嬉しく思う。初版が出版されてから一〇年、本書は幸いにも版を重ねることができた。チェ・スンヒョンさん(忠北大学校)の翻訳によって韓国でも刊行して頂いた(게시 아키라『포스트모던 교육사상 : 일본교육학은 포스트모던을 어떻게 수용했는가』최승현(번역), 박영스토리 , 2020)。存外にも多くの方々にお読み頂き、さまざまなご意見を賜った。その全てには応えられないとしても、月日の経過によって研究動向はもちろん、私の見解も変わった部分があり、いつしか「増補改訂版」を世に問いたいと考えるようになっていた。
 そんな折に好機が重なり、幸いにもそのアイディアが実現できるはこびとなった。いちからリライトしたい気持ちがなかったわけではないが、それは到底無理だし、なにより時代の空気感をパッケージした作品なので、本文にはあまり手を加えず、いくつかの文章で補うこととした。副題は、「戦後教育学を超えて」から「近代批判のゆくえ」に変更した。追加した文章はこの「増補改訂版へのはしがき」と「増補改訂版あとがき」をのぞけば以下の通りである。

コラム① 近代論と近代教育学批判
コラム② 五五年体制と冷戦後教育学
終章付論 ガート・ビースタとためらいの消失
補論一 批判の後に何が来るのか
補論二 批判の力は連鎖する
補遺 韓国語版への序文

 詳細は本論に譲りたいが、ポストモダニズムや近代批判は、多くの人が考える以上に大きな刻印を教育学に残している。自分はそんなものとは無縁だと考える人ですら、その思考法が無意識の前提となっていることが少なくない。それらはむしろ、日常となってしまったからこそ、みえないのだ。大仰になるが、みえないものをみえるようにすることが学問の仕事だとするならば、本書はまさにそれを目指して書かれたし、いびつなレンズだったとしても、それまでは気づかなかったが確かにそこにあったものを浮かび上がらせる役割をはたしうるのであれば、著者としてこれ以上の喜びはない。
 いずれにしても、初版と同じく読者の批判を待ちたい。
 
 
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