医学史とはどんな学問か
第7章 啓蒙主義と新しい人間観の医学 1700-1800
18世紀は啓蒙主義の医学の時代である。16・17世紀の宗教と政治と医学理論の激動の時代が終わり、新しい医学と医療がヨーロッパの各地で発展した。「人間」を分析対象とし、技術発展と相まって医療に深くかかわる医学の原型が現れ始めた時代を描き出す。
18世紀は啓蒙主義の医学の時代である。16・17世紀の宗教と政治と医学理論の激動の時代が終わり、新しい医学と医療がヨーロッパの各地で発展した。「人間」を分析対象とし、技術発展と相まって医療に深くかかわる医学の原型が現れ始めた時代を描き出す。
16世紀中葉に始まった科学革命期、医学においてもこれに呼応し新しい理論を求める動きが現れた。機械論、血液循環論などが複雑に絡み合う17世紀医学理論の変化の重層を描き出す。
16世紀の中葉から17世紀の中葉、ヨーロッパ各地で宗教改革と反宗教改革の運動が政治・文化・社会に大きな影響を与えた。そこで生まれたのがパラケルスス主義――宗教改革の基盤となったキリスト教思想、そして錬金術と化学的な実験を軸に、当時の世界観と医学を根源から改革しようとした思想潮流である。宗教改革を契機に初期近代の国家や社会のモデルが形成され、医療のさまざまな側面が大きく転換し発展した様子を描く。
ルネサンス医学は、ギリシア語の医学の起源を復興することで、それまでと大きく異なる革新の姿勢をもつことになった――それが解剖学の発展である。印刷という新メディアによる解剖図の発展と拡散、解剖講義の劇場性等、古代医学の復興と文化・芸術の関連を描く。
7世紀以降に成立したアラブ・イスラーム世界は、古代ギリシア医学を吸収・消化し独自の発展を加えた医学・医療のシステムを形成した。その背景にあった革新的文化政策とは。
医学の導入と大学における発展/キリスト教と聖なる癒し/文化と社会の中の疾病/ペスト・ハンセン病・拒食症
古代ギリシア文明とヒポクラテス集成の医学/アレクサンドリアの医学/ガレノスの医学/キリスト教と新しい構造の医療
過去の医学史―二つのパターン/医者の歴史/患者の歴史/疾病の歴史