連載・読み物

憲法学の散歩道
第44回 君主制原理vs国家法人理論──ゲルバーの場合

 カール・フリードリヒ・ゲルバーは1823年、チューリンゲンに生まれた。ライプツィヒ大学とハイデルベルク大学で法学を学び、弱冠23歳にしてイェナ大学の教授となった。その後、エアランゲン大学、チュービンゲン大学を経て1863年、ライプツィヒ大学教授となった。逝去したのは1891年である。学外では、ヴュルテンベルク王国の上院議員、ザクセン王国の首相等を務めている。ゲルバーはドイツ近代公法学の父と目されている。……

掌の美術論・最終回
働く手(後編)――とある「仕事」の区切り

前回の記事の最後の部分にちょっとだけ立ち戻り、解説映像『ロバート・モリス 心/身問題』(1995年)でロザリンド・クラウスとロバート・モリスが昔語りをする老人たちを演じていたことを思い出してみよう。それがわざとらしい演出を伴っていたのは、老人の眼差しが本来クラウスにとって、批評家に相応しからぬものだったからである。遠くの過去ばかりを見ようとする老人の眼差しは、美術史家にこそおあつらえ向きだと、彼女は考えていた。クラウスは著書『視覚的無意識』において、影響源を探り当てようとする美術史家の関心を「出典探しのゲーム(game of sources)」と皮肉をこめて呼んだ。

By |2025-03-21T13:01:39+09:002025/3/25|連載・読み物, 掌の美術論|

コヨーテ歩き撮り#222

映画館の看板に自分の名前が表示されたのは最初で最後でした。朗読劇『銀河鉄道の夜』を追ったドキュメンタリー映画『ほんとうのうた』(河合宏樹監督)の上映、ケンタッキー州レキシントンの老舗映画館ケンタッキー・シアター(1922年開場)にて。ぼくは舞台挨拶をした。 This is the first and only appearance so far of my name on the marquee of an American movie theater! In 2015, we screened the documentary film “True Song” (dir. Kawai Hiroki) that follows the travel of our reading play “Night on the Milky Way Train.” The theater is the historical Kentucky Theater in Lexington that opened in 1922. Thank you Doug Slaymaker (U of Kentucky) for arranging this event!

掌の美術論 第23回
働く手(中編)――芸術の「自律性」を宙吊りにする

前回の記事で論じたように、ロバート・モリスもロザリンド・クラウスも、特殊な遊び場としての解説映像『ロバート・モリス 心/身問題』(1995年)で既存の現実に対し批評的な距離を取ることを試みた。モリスが距離を取ろうとしたのは、既存の芸術と既存の産業の双方が別々に築き上げてきた価値体系であった。とりわけこの解説映像で度々取り上げられるパフォーマンス《サイト》(1964年)は、階層化された既存の芸術とも、労働者を労働から疎外する既存の産業とも切り離されながら、芸術と産業の労働が交差するような実践の場にほかならなかった。……

By |2025-02-07T13:16:26+09:002025/2/25|連載・読み物, 掌の美術論|

憲法学の散歩道
第43回 内的か外的か、そしてそれは問題なのか

 憲法学、もう少し広くとって法律学の世界では、内的か外的かが、いろいろな局面で問われる。H.L.A.ハートは、規範一般について、内的視点と外的視点とを区別した。  規範に則した行動には、内的側面と外的側面とがある。  毎週末に、新宿のデパートに出かける習慣のある人がいるとしよう。……

コヨーテ歩き撮り#219

笑顔のとなかいです。ところで、ぼくがとなかいをとなかいと平仮名で記すのはなぜ? 答えは小島敬太との共著『サーミランドの宮沢賢治』(白水社)をごらんください! You know the reason why I always write tonakai in hiragana? Seek the answer in the book Miyazawa Kenji in Saamiland, co-written with my friend Kojima Keita!

掌の美術論 第22回
働く手(前編)――仕事中を演じる

あ、この人こんなふうに笑うんだ、と、ミニマリズムの彫刻家ロバート・モリス(第11回・第12回記事参照)についての1995年の解説映像『ロバート・モリス 心/身問題』に登場する、美術批評家ロザリンド・クラウスを見て思った。クラウスはこの映像の中で始終かしこまって教壇から解説するのだが、威圧的な教授たらんと装う最中、映像を投影するスクリーンとして使用していた、教壇に貼り付けられたボール紙が剥がれ落ちて、ふふっと笑ってしまう。……

By |2025-01-26T22:59:11+09:002025/1/29|連載・読み物, 掌の美術論|

コヨーテ歩き撮り#218

ハワイ島の南端はカ・ラエ、ハワイ語でただ「岬」を意味する。タヒチから移住してきたポリネシア人の最初の上陸地点か。ここに立ってアオテアロア(ニュージーランド)の方向を眺めるのが好き。 The southern tip of Big Island is called ka lae, which simply means "the cape" in Hawaiian. Probably the first landing point for Polynesian immigrants from Tahiti. I love to stand here and look across the Pacific to the direction of Aotearoa.

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