燃えよ本[第6回]エイハブの執念が滅ぼしたものとは? 白鯨と捕鯨の近代史

19世紀、アメリカ及び世界文学の金字塔であるハーマン・メルヴィル『白鯨(モビー・ディック)』。  アメリカといえばグリーンピースはじめ鯨やイルカなどの海洋哺乳類の保護活動に熱心な「反捕鯨国」なのだが、実は20世紀初頭まで世界一の捕鯨王国だった。世界中の海でクジラを獲って獲って獲りまくった前近代の捕鯨黄金期の記憶が刻まれたのがメルヴィルの『白鯨』なのである。現代の倫理観から見るとあまりにも血生臭く、差別的。かつ文学の枠組みを大きく逸脱した怪作を僕なりに読み解いてみよう。