山崎佳代子『パンと野いちご』刊行記念
セルビアレシピ◎2

About the Author: 勁草書房編集部

哲学・思想、社会学、法学、経済学、美学・芸術学、医療・福祉等、人文科学・社会科学分野を中心とした出版活動を行っています。
Published On: 2018/5/7

 

戦時下で、難民状況の中で、人びとは何を食べ、何を考えていたのでしょうか。
卵と生クリームなしのマーブル戦争ケーキ。停電で溶けだした冷凍庫の肉で銃弾に怯えながら催すバーベキュー大会……。第一次大戦、第二次大戦、ユーゴスラビア内戦、コソボ紛争と戦争の絶えないバルカン半島のセルビアに長年にわたって暮らす山崎佳代子さんが、お友達から戦下のレシピを聞きとり、『パンと野いちご』(2018年5月15日発売予定)にまとめました。
じつはページの関係から泣く泣く収録を諦めたレシピもあります。そこで刊行を記念し、本には入りきらなかったレシピ、新たに書き下ろしていただいたレシピをこちらでご紹介していきます。素朴で味わい深いセルビア料理の世界へようこそ!【編集部】

 
 
キャベツのサラダ(クプス・サラータ)
купус салата; kupus salata

 

キャベツサラダ

 

【材料 5人分】
キャベツ 中半個
酢 適量
塩 少々
食用油(オリーブオイル、コーンオイルなど) 適量
 
【つくり方】
★キャベツを千切りにして、よく洗い水を切る。
★ボールにキャベツを入れ、塩を少々ふり、手で軽くもむ。
★食用油をふりかけ、よくなじませる。
★最後に酢をふりかけ、よく混ぜ合わせる。冷蔵庫でしばらく冷やす。

 
ゴルダナの語りには、最後にトマトのみじん切りを合わせるとあった。イタリアン・パセリのみじん切りを散らす人もいる。
 
私の子供時代に、母が作った「酢油キャベツ」と似ているが、ほんの少し、やり方が違う。しゃきしゃきとした歯触ではなく、味がキャベツに染みこんでしんなりした感じが当地の味である。
 

『パンと野いちご』228ページより
 ドレジニツァ村での滞在中、私たちは、三度、仲間たちと昼食を共にした。二度は、「ドレジニツァ郷土会」の主催で、村の集会室の二階。三度目は、町のセルビア正教会が小学校の集会所で用意してくれた昼食。
 「ドレジニツァ郷土会」の昼食は、土地の伝統料理であった。一度目は、鹿肉のグーラッシュ。土地の男の人が森でしとめた鹿の肉で、野草の香りが高く、肉は舌の先でとろけていく。サラダは、キャベツ。キャベツを千切りにして酢と油で和えただけだが、このサラダで料理人の腕がわかる。歯ごたえといい、味付けといい、見事だった。

 
セルビアレシピ◎1はこちら 》》》ヒランダル修道院の豆スープ
セルビアレシピ◎3はこちら 》》》肉とキャベツの煮込み(クプス サ メーソム)
セルビアレシピ◎4はこちら 》》》ビーツのサラダ
セルビアレシピ◎5はこちら 》》》復活大祭の卵を染める イースターエッグ
★『パンと野いちご』のたちよみはこちら 》》》「はじめに」
 

『パンと野いちご』刊行記念イベント開催!
山崎佳代子×ドリアン助川「食べ物とは思い出のこと、料理とは甦りのこと」

2018年5月10日(木)20時より、東京・下北沢の本屋B&Bにて。
詳細は【こちら】
【本イベントは終了しました。たくさんの方のご来場ありがとうございました】
戦時下で、難民状況の中で、人びとは何を食べていたのか。セルビアに住む著者が友から聞きとった食べ物と戦争の記憶。レシピつき。
山崎佳代子 著
『パンと野いちご 戦下のセルビア、食物の記憶』
2018年5月刊
四六判・336ページ
本体3,200円+税
ISBN:978-4-326-85194-2 →書誌情報

 
山崎佳代子(やまさき・かよこ)
1956生まれ、静岡市育ち。詩人・翻訳家。北海道大学露文科卒業後、サラエボ大学文学部、リュブリャナ民謡研究所留学を経て、1981年、ベオグラードに移り住む。ベオグラード大学文学部にて博士号取得(アバンギャルド詩、比較文学)。詩集に『みをはやみ』(書肆山田)など、翻訳書にダニロ・キシュ『若き日の哀しみ』(世界文学全集、河出書房新社)、エッセイ集に『ベオグラード日誌』(読売文学書受賞、書肆山田)など。

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