松井裕美

About 松井裕美

まつい・ひろみ  東京大学大学院総合文化研究科准教授。博士(美術史)。専攻は、フランスを中心とする近現代美術。著書に『キュビスム芸術史:20世紀西洋美術と新しい<現実>』(名古屋大学出版会、2019年)、翻訳にデイヴィッド・コッティントン『現代アート入門』(名古屋大学出版会、2020年)など。

掌の美術論
第2回 自己言及的な手 

ルーヴル美術館に、興味深い一枚の素描がある。1775年にフランス王室によって購入された時、この作品はミケランジェロの「手」によるものだとされた。実際に描いたのはミケランジェロではなくてバルトロメオ・パッサロッティであったとする説、あるいはアンニバーレ・カラッチであったとする説もある。いずれにせよこの素描の「手」が誰のものなのかを最終的に決定づける見解は示されていない。

By |2023-08-28T19:37:13+09:002023/2/22|連載・読み物, 掌の美術論|

掌の美術論
第1回 緒言

この連載のタイトルには二つの意図が込められている。その一つは、各々の記事を、掌編小説のように手軽に読める、短く完結した美術論として書いてみよう、というものだ。じっくり時間をかけて火にかけている煮込み料理がくつくつと音を立てているのを聞きながら、山の中腹のバス停でバスが来るのを待ちながら、あるいは出勤電車の中で、ふと気づいたときにタブレットや携帯を取り出し読むことができる、そのような文章を書いてみたいと思った。……

By |2023-01-27T12:18:37+09:002023/1/27|連載・読み物, 掌の美術論|
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