卵と生クリームなしのマーブル戦争ケーキ。停電で溶けだした冷凍庫の肉で銃弾に怯えながら催すバーベキュー大会……。第一次大戦、第二次大戦、ユーゴスラビア内戦、コソボ紛争と戦争の絶えないバルカン半島のセルビアに長年にわたって暮らす山崎佳代子さんが、お友達から戦下のレシピを聞きとり、『パンと野いちご』(→書誌情報)にまとめました。
じつはページの関係から泣く泣く収録を諦めたレシピもあります。そこで刊行を記念し、本には入りきらなかったレシピ、新たに書き下ろしていただいたレシピをこちらでご紹介していきます。素朴で味わい深いセルビア料理の世界へようこそ!【編集部】
ビーツのサラダ
Салата од цвекле/ Slata od cvekle
ビーツ 500g
植物油 大さじ1杯から2杯
酢 大さじ1杯から2杯
塩・コショウ 少々
クーミン 小さじ1杯
月桂樹の葉 1枚
【つくり方】
★ビーツを洗い鍋に入れ、ひたひたの水を入れて柔らかくなるまで煮る。沸騰するまでは強火、そのあとは弱火で30分から40分ほど。楊枝がすっと通れば茹であがり。
★ざるにあげて粗熱を取る。ヘタを取り、皮を剥き、薄めの輪切りにすると、ルビーのような色が鮮やかだ。
★ボールに入れて、植物油(大さじ1杯から2杯)を和え、酢(大さじ1杯から2杯)、塩少々で味を調える。好みで、クーミンを小さじ1杯ほど散らす。
ガラスの容器で1週間くらい保存できる。月桂樹の葉を1~2枚、加えると美味しい。油を使わず、砂糖を少々加えて、甘酢で和えてもよい。リンゴ酢、またはレモンの汁を使えば香り高い。
煮るかわりに、蓋つきの耐熱ガラスの容器に入れて、180度のオーブンで40分くらい蒸し焼きにしてもよい。焼きすぎに注意すること。30分たったら、楊枝で刺し、硬さを確かめる。ただし甘味が強くなる。電子レンジを利用してもよい。
本書のゴルダナ・ボギーチェビッチのお話にも登場するビーツのサラダは、スーパーマーケットなどでも瓶詰で買うことができる。瓶詰のサラダは、食用油を使わず、酢で味付けしている。保存がきくので、給食などで用いられる。難民センターには、援助物資として届けられていた。
なお、茹でずに生のままサラダにすることもできる。ビーツ1個の皮を剥き、グレーダーなどで荒くおろし、ボールに入れて、植物油、酢、塩で和える。少量の砂糖を加えてもよい。荒くおろした人参1本とリンゴ1個を加えると美味しい。ビーツによっては苦味があるので、気をつけること。
『パンと野いちご』111ページより
保育園の食事は、家庭料理に似ていたわ。スープ、ピラフ、パプリカッシュ、グーラッシュ、マカロニ、豆スープ、肉団子のトマトソース煮、グリンピース、生チーズとスパゲッティー、ジャガイモのムサカ。サラダはね、ビーツ、キャベツ、ピクルスなどだった。おやつは、プリンとか、お米の砂糖煮、クロフネという甘い揚げパン、チーズ・パイなんかが出た。
セルビアレシピ◎1はこちら 》》》ヒランダル修道院の豆スープ
セルビアレシピ◎2はこちら 》》》キャベツのサラダ(クプス・サラータ)
セルビアレシピ◎3はこちら 》》》肉とキャベツの煮込み(クプス サ メーソム)
セルビアレシピ◎5はこちら 》》》復活大祭の卵を染める イースターエッグ
★『パンと野いちご』のたちよみはこちら 》》》「はじめに」
山崎佳代子× 阿部日奈子(詩人)×ぱくきょんみ(詩人)
2018年8月7日(火)19時開始、東京・品川のセルビア共和国大使館にて。
入場無料(要予約)、詳細は【こちら】へ
→終了しました。たくさんの方のご来場ありがとうございました。
戦時下で、難民状況の中で、人びとは何を食べていたのか。セルビアに住む著者が友から聞きとった食べ物と戦争の記憶。レシピつき。
山崎佳代子 著
『パンと野いちご 戦下のセルビア、食物の記憶』
2018年5月発売
四六判・336ページ
本体3,200円+税
ISBN:978-4-326-85194-2 →書誌情報
山崎佳代子(やまさき・かよこ)
1956生まれ、静岡市育ち。詩人・翻訳家。北海道大学露文科卒業後、サラエボ大学文学部、リュブリャナ民謡研究所留学を経て、1981年、ベオグラードに移り住む。ベオグラード大学文学部にて博士号取得(アバンギャルド詩、比較文学)。詩集に『みをはやみ』(書肆山田)など、翻訳書にダニロ・キシュ『若き日の哀しみ』(世界文学全集、河出書房新社)、エッセイ集に『ベオグラード日誌』(読売文学書受賞、書肆山田)など。