テクサス大学のゲイリー・ジェイコブソン教授が提示した概念に、戦う立憲主義(militant constitutionalism)と従順な立憲主義(acquiescent constitutionalism)の区別がある。戦う立憲主義は、従前の社会のあり方、政治のあり方を変革し、新たな政治社会を樹立しようとする。従順な立憲主義は、それまでの社会秩序、政治体制をそのまま受け入れ、それを成文化する。ある国の憲法典をとり上げたとき、それが100%戦う憲法であることは稀であろうし、逆に100%従順であることもまず考えられない。とはいえ、おおよその傾向を区別することはできる。
日本国憲法は、相当程度、戦う憲法である。……
《ジェンダー対話シリーズ》第8回は、阿部ふく子さん、大島梨沙さん、宮﨑裕助さんをお迎えして新潟大学で開催された『愛・性・家族の哲学』(ナカニシヤ出版)出版関連イベントでのお話の続きをお送りします。ホストはこれまで同様、宮野真生子さんと藤田尚志さん。今回のテーマは「家族」。婚姻関係と親子関係から構成されていると考えられる家族ですが、何があれば家族といえるのでしょうか。友人や知り合いと家族を区別するものはなんでしょうか。血や遺伝子の繋がり、同じ氏、婚姻契約それとも愛、一体感……? 自明のようでいて自明ではない家族について、哲学的、法学的な角度から議論します。