Posts in category

憲法学の散歩道

0 0
憲法学の散歩道 3月 23日, 2021 長谷部恭男

憲法学の散歩道
第18回 シュトラウスの見たハイデガー

 レオ・シュトラウスは、クルト・リーツラーの思想に関する記念講演で、マルティン・ハイデガーについて次のように語っている。
 [ハイデガーと]同じ程度にドイツの、いやヨーロッパの思想に影響を与えた哲学教授を見出そうとすれば、ヘーゲルまで遡る必要がある。それでもヘーゲルの同時代には、ヘーゲルと並ぶ、少なくとも明白な愚かしさに陥ることなく、彼と比較し得る哲学者がいた。……

続きを読む
1 0
憲法学の散歩道 2月 25日, 2021 長谷部恭男

憲法学の散歩道
第17回 アレクサンドル・コジェーヴ──承認を目指す闘争の終着点

 1932年にパリで出会って以降、レオ・シュトラウスとアレクサンドル・コジェーヴは、生涯にわたって対話を続けた。
 アレクサンドル・コジェーヴは、1902年5月11日、モスクワの裕福なブルジョワの家庭に生まれた。彼は1920年、革命の勃発したロシアを逃れ、カール・ヤスパースの下で博士論文を執筆する。
 1926年末、彼はパリに移って研究を続け、1933年から39年まで、高等研究院でヘーゲルの『精神現象学』に関する講義を行った。この講義には、レイモン・アロン、ジョルジュ・バタイユ、アンドレ・ブルトン、モーリス・メルロー・ポンティ、ジャック・ラカン等が出席した。……

続きを読む
0 0
憲法学の散歩道 1月 26日, 2021 長谷部恭男

憲法学の散歩道
第16回 レオ・シュトラウスの歴史主義批判

 レオ・シュトラウスは1899年に、プロイセンのヘッセン州キルヒハインで、穀物商を営むユダヤ人の子として生まれ、マールブルク大学とハンブルク大学で学んだ。ハンブルク大学では、エルンスト・カッシーラーの指導の下で博士論文を執筆している。
 1922年、シュトラウスはフライブルク大学で、エトムント・フッサールの下でポス・ドクの研究活動を続け、フッサールの助手であったマルティン・ハイデガーの講義にも出席している。当地でシュトラウスは、ハンス-ゲオルグ・ガダマー、カール・レーヴィット、ハンナ・アレント等と知己となった。……

続きを読む
1 0
憲法学の散歩道 12月 22日, 2020 長谷部恭男

憲法学の散歩道
第15回 神の存在の証明と措定

 神の存在に関する議論は、古来多い。スピノザの『エチカ』の冒頭部分に、神の存在証明がある。
 スピノザによれば、神は「絶対的に無限のもの、つまり無数の属性によって構成される実体であり、その各属性が永遠にして無限の本質をあらわすもの」として定義される(1def6)。実体として定義された神には、存在することが本質として帰属する。いかなる実体といえども、他のものから産出されることはない(1p6c)。存在が他のものに依存することは実体の本質に反する(1def3)。存在することは、実体の本質である*2。存在することが神の本質であるとすると、存在することは神の属性でもある。属性とは、知性が実体につき、その本質を構成するものとして理解するものだからである(1def4)。……

続きを読む
0 0
憲法学の散歩道 11月 25日, 2020 長谷部恭男

憲法学の散歩道
第14回 価値多元論の行方

 政治思想史家のアイザィア・バーリンは、価値多元論者として知られる。価値多元論(value pluralism)は、価値一元論(value monism)と対置される。
 価値一元論は、いくつかの主張によって構成される。第一に、あらゆる道徳問題には、唯一の正解がある。第二に、正解へ行き着く途は発見可能である。第三に、すべての正解は相互に両立可能であり、ジグソーパズルのように、全体として整合する。……

続きを読む