連載・読み物

憲法学の散歩道
第34回 例外事態について決定する者

 カール・シュミットは『政治神学』の冒頭で、「主権者とは、例外事態(Ausnahmezustand)について決定する者である」と断言する。Ausnahmezustandは、非常事態と訳されることもある。  引き続いてシュミットは、主権概念は限界概念(Grenzbegriff)であるとする。限界概念とは、比喩的に言えば、遠近法の消失点である。われわれが暮らす、この世界だけが実在する世界だと思われている日常的な世界と、そんなものが存在するとは思ってもみなかった、尋常ではない外側の世界とを連絡する概念である。……

夢をかなえるための『アントレプレナーシップ』入門
㉔アントレプレナーの資金調達(5)

直接金融の中でも新株発行による資金調達には、それに伴う落とし穴があります。それは発行済み株式の希薄化(dilution)です。今回は実話をもとに「希薄化」の実際に迫ります。

掌の美術論
第6回 時代の眼と美術史家の手
――美術史家における触覚の系譜(後編)

前回の記事ではハインリヒ・ヴェルフリンの『美術史の基礎概念』(1915年)を取り上げながら、触覚的な価値に基づくイメージ分析について紹介した。実のところそうした方法論自体は、バーナード・ベレンソンやアロイス・リーグルといった美術史家たちが19世紀末から20世紀初頭にかけて書いたものに見られたものだった。ではこうした傾向は、どのような思想的系譜のうえに位置づけられるだろうか。

By |2023-10-22T15:40:16+09:002023/6/29|連載・読み物, 掌の美術論|

憲法学の散歩道
第33回 わたしは考える?

「憲法学の散歩道」書籍化第2弾『歴史と理性と憲法と』が2023年5月1日に発売となりました。第32回までの連載分に書き下ろし2章分が加わり、長谷部さんならでは散歩道を進むと意外かつ奥深い世界が開けてきます。そして、お待たせしました。第3シーズン、はじまります。[編集部] 第33回 わたしは考える?  ルネ・デカルトは1596年3月31日、トゥレーヌ地方のラ・エ(La Haye)で生まれた。この町は現在ではデカルトと呼ばれる。父親のヨアヒムは高等法院付きの法律家で、親類の多くは法律家か医師であった。……

掌の美術論
第5回 時代の眼と美術史家の手
――美術史家における触覚の系譜(前編)

2020年春から、コロナ禍で国内外の多くの展覧会が開催を見合わせたり延期したりした。代わりに多く見かけるようになったのが「ヴァーチャル・ミュージアム」と呼ばれる企画だ。インターネットに繋いだパソコンやタブレットさえあれば、家にいながらにして幾つかの海外の企画展の展示室風景を3Dの再現で見ることができた。そうした特設サイトでは、気に入った作品をクリックすればその詳細画像とキャプションを読むことができる工夫もなされていた。自粛期間が続くあいだ、美術館のこうした取り組みは重要な気晴らしの時間を提供してくれた。

By |2023-08-28T19:25:34+09:002023/5/30|連載・読み物, 掌の美術論|
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