仲野麻紀

仲野麻紀

なかの・まき  サックス奏者。2002年渡仏。自然発生的な即興、エリック・サティの楽曲を取り入れた演奏からなるユニットKy[キィ]での活動の傍ら、2009年から音楽レーベル、コンサートの企画・招聘を行うopenmusicを主宰。フランスにてアソシエーションArt et Cultures Symbiose(芸術・文化の共生)を設立。モロッコ、ブルキナファソなどの伝統音楽家たちとの演奏を綴った「旅する音楽」(せりか書房2016年)にて第4回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞。さまざまな場所で演奏行脚中。ふらんす俳句会友。好きな食べ物は発酵食品。

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ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた――人生の欠片、音と食のレシピ〈19皿め〉

ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた ー人生の欠片、音と食のレシピー 9月 29日. 2023

パリ生活15年目くらいだったか、ようやくアパート暮らしからの脱出となりモントルイユというパリ郊外の街で、大家さんの離れの小さな一軒家を借りることになった。
引っ越しが終わった翌朝、ものすごい音で目が覚めれば中庭挟んだ大家さんの、豪奢ではないが19世紀特有の丈夫な家半分が崩れた。家自体の問題ではなく、隣接した建設中マンションの地下駐車場の掘削作業のためだ。
それから何ヶ月も立ち入り禁止となったからにはノマッド人生再開である。

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ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた――人生の欠片、音と食のレシピ〈18皿め〉

ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた ー人生の欠片、音と食のレシピー 3月 13日. 2021

フランスへ発った年の4月。当時付き合っていたボーイフレンドの誕生日、そして最後のデートとなった場所は神楽坂。今でこそ賑やかな雰囲気だが、当時はまだひっそりとした空気感が漂っていた。
 
東京メトロ南北線が出来たばかりで、自宅から一本で行ける場所。水面を照らす春光まぶしいお堀沿いのカフェ。以前は東京日仏学院という名称だった、現アンスティチュ・フランセには渡仏前に何度も訪ね、併設した本屋Rive Gaucheでは仏和辞典を買った。よく通った思い出の場所だ。神楽坂上には赤城神社がある。ボーイフレンドの故郷の山を祀るこの地域の氏神。その後、赤城神社の境内にある神楽殿、地下ホールで何度か演奏をすることになったのも何かの縁だろうか。

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ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた――人生の欠片、音と食のレシピ〈17皿め〉

ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた ー人生の欠片、音と食のレシピー 9月 25日. 2020

シリア内戦10年目。現在約1100万人以上の人々が国内外で難民になっている。内戦前の人口の半分以上の数だ。途方にくれる数字を前に、何を想像できるだろうか。ニュースで流れる映像に、物語は語られない。
 
連載6皿目に登場したシリア難民のヤシール。アラビア語歌詞の発音を教えてもらった彼との出会いはフランス西部に位置する半島、ブルターニュ。800人が住む村に難民として迎えられた彼とその家族。

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ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた――人生の欠片、音と食のレシピ〈16皿め〉

ごはんをつくる場所には音楽が鳴っていた ー人生の欠片、音と食のレシピー 8月 19日. 2020

カリブ海の歴史の影とは、かつてのヨーロッパ列強による奴隷制植民地社会だ。

友人が住むサン=バルテレミー島、この島で演奏をしないかと誘ってくれた。
小アンチル諸島・リーワード諸島北部に位置する、サン・マルタン島のオランダ領からフランス領へ移動する。
一つの島が二つの国の領土として二分されている摩訶不思議な事実を前に、大西洋を横断するもここがEU圏であることの意味を探す。

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