長谷部恭男

長谷部恭男

はせべ・やすお  早稲田大学法学学術院教授。1956年、広島生まれ。東京大学法学部卒業、東京大学教授等を経て、2014年より現職。専門は憲法学。主な著作に『権力への懐疑』(日本評論社、1991年)、『憲法学のフロンティア 岩波人文書セレクション』(岩波書店、2013年)、『憲法と平和を問いなおす』(ちくま新書、2004年)、『Interactive 憲法』(有斐閣、2006年)、『比較不能な価値の迷路 増補新装版』(東京大学出版会、2018年)、『憲法 第8版』(新世社、2022年)、『法とは何か 増補新版』(河出書房新社、2015年)、『憲法学の虫眼鏡』(羽鳥書店、2019年)ほか、共著編著多数。

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憲法学の散歩道
第23回 思想の力──ルイス・ネイミア

憲法学の散歩道 12月 14日. 2021

 『神と自然と憲法と』第18章で紹介したように、ジョン・メイナード・ケインズは、世界を支配するのは思想であるとし、それに比べて既得権益の影響は誇張されているとする。これと対蹠的な観点に立つのが、歴史家のルイス・ネイミアである。ネイミアによると、思想や原理と言われるものはすべて、人間の真の動機を覆い隠すためのイデオロギーにすぎない。歴史を動かすものは、別にある。……

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憲法学の散歩道
第22回 未来に立ち向かう──フランク・ラムジーの哲学

憲法学の散歩道 11月 16日. 2021

 フランク・ラムジーは1903年2月22日に生まれ、1930年1月19日、26歳で死去した。死因はレプトスピラ菌(leptospire)の感染による多臓器不全であると推測されている。父親のアーサー・ラムジーは、ケンブリッジ大学モードリン・コレッジで数学を教え、副学寮長(President)も務めた。フランクの弟マイケルは、1961年に第100代のカンタベリー大司教となった。妹のマーガレットは、オクスフォード大学で経済学を教えた。……

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憲法学の散歩道
第20回 『法の概念』が生まれるまで

憲法学の散歩道 5月 25日. 2021

 法史学者のブライアン・シンプソン(Alfred William Brian Simpson)は、1931年にイギリス国教会の牧師の末っ子として生まれた。1951年、オクスフォードのクィーンズ・コレッジに入り、法学を学んだ。1955年から73年まで、リンカーン・コレッジのフェロウを務める。その後、ケント大学教授、ミシガン大学教授等を歴任する。逝去したのは、2011年である。
 シンプソンの没後に刊行された著書に『『法の概念』に関する考察』がある。……

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憲法学の散歩道
第19回 共和国の諸法律により承認された基本原理

憲法学の散歩道 4月 27日. 2021

フランスの違憲審査機関である憲法院(Conseil constitutionnel)の1958年の創設から1986年にいたるまでの主要な決定の評議の記録が本としてまとめられている*1。どの決定の評議録もすこぶる面白い(憲法学者でない方がお読みになって面白いかどうかは別の話である)。たとえば1971年7月16日の評議と決定は、憲法院の機能自体を根本的に変革したと言われる。……

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